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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第7章 龍人族のダンジョン編
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補助魔法使いと従者、鍵を探す

 「ここにもないみたいですね」

 「仕方ない。次を探す」


 僕たちのお家と凄く似た造りになっているので、部屋の探索は割とスムーズに進められるのですが、目的の鍵は未だに見つけられません。


 「探知魔法が使えれば、楽に見つかりそうなのですがね」


 魔の森にある龍人族の街と同じように、この屋敷の中では探知魔法は使えませんでした。

 まぁ、探知魔法で鍵を見つけられるかと聞かれると難しいですけどね。

 ですが、魔物は出ないと声の人は言っていましたが、その保証はありません。

 なので、部屋に入る度に一応警戒をしながら部屋に入るようにしています。


 「けど、何が目的なんでしょうかね?」

 「わからない。そもそも目的がないのかもしれない」

 「それもそうですね」


 ですが、わざわざ分断させられる必要があったのでしょうか?

 戦力の分断と考えれば有効かもしれませんけど、魔物がでないのであれば戦力は関係ありませんよね?


 「ここも外れ」

 「なかなか見つからないものですね」


 一階の探索が終わりましたが、目的の鍵は見つかりませんでした。

 もちろん、部屋の中にあるタンスの中や壺の中もしっかり探しましたよ。

 シアさんは絵画の裏とかも確認してくれていましたし、見落とした場所は少ないと思います。

 もし、枕の中やカーペットの下に隠されていたら探しなおしですけどね。


 「それじゃ、二階を探す」

 「一応、気をつけてくださいね」


 シアさんが僕の手を引き、少しだけ前を歩いてくれます。

 

 「微妙に家の構造が違いますね」

 「うん。逆に全く一緒だったら不気味」


 僕たちは玄関ホールの右側を探索していますが、二階の一番端の部屋は書庫になっていた筈です。

 ですが、この屋敷は客室になっているのです。


 「まぁ、書庫だったら面倒でしたので、僕たちとしては助かりますね」

 「うん。本の間とかを探すのは大変」


 という訳で、他の部屋と同じように色んな場所を探索ですね。

 

 「シアさん、何かありましたか?」

 「何もない」


 カタッ。


 まぁ、仕方ないですよね。

 そんな簡単に見つかる場所に置いたりはしないと思いますからね。


 カタカタッ。


 「シアさん、動かしたものは元に戻してくださいね? 見たかどうかわからなくなりますので」

 「うん? 気をつける」


 壺が落ちそうになっていました。

 さっと中を覗いて適当に戻して、不安定になっていて割ってしまったら大変ですからね。


 カタカタカタッ。


 「シアさん、あんまり乱暴に扱ってはダメですよ?」

 「扱ってない」

 「でも、さっきから壺とかの音が酷いですよ?」

 「それ、私じゃない。私はこっちを探してる」

 「え?」


 シアさんの方を見ると、絵画の裏を探している所でした。

 さっきから音がなっている所とは別の所です。


 「えっと、それじゃあの音は一体?」

 「私はユアンだと思ってた」

 「いえ、僕はタンスを調べていましたよ?」

 

 二人とも壺には触っていません。

 あっ、一回だけ落ちそうになっていたので直しましたが、それ以外は触っていません。

 なのに、また壺の位置が少しだけ動いていました。

 また、落ちそうになっているのです。


 カタッ。


 「ふぇ?」

 「動いた」


 僕とシアさんが壺を不思議そうに見ていると、僕たちが見ている前で壺が動きました。


 カタカタカタカタカタカタッ。


 「し、シアさん、壺が勝手に動いてますよ!」

 「うん。落ちそう。魔法道具マジックアイテム?」

 「違いますよ! あの壺から魔力は少しも感じませんので!」


 なのに、壺が勝手に動いているのです!

 まるで、生き物のように左右に小刻みに揺れて……。

 

 パリーンッ!


 「ひっ!」

 「割れた」


 ど、どうしてそんなに冷静に見てられるのですか!

 僕は勝手に動く壺が怖くて、急いでシアさんの元に駆け寄りました。

 そして、壺が割れた瞬間でした……。


 ガタガタガタガタッ!


 まるで、壺が割れたのをきっかけになったかのように、部屋に飾られている物が一斉に揺れ始めました。


 「地震」

 「ち、違いますよ! 僕たちは揺れてません!」


 地面は揺れていません。

 それなのに、タンス、絵画、ベッドなどあらゆるものが振動しているのです!


 「し、シアさんここから出ましょう!」

 「まだ、絵画の裏を探し終えてない」

 「そんな事は後でいいです!」

 「わかった」


 シアさんの手を引き、僕たち……僕は慌てて部屋の外にでます。


 「きゃーーーー!」

 「びっくり」


 ですが、扉の前に人が居ました。

 半透明な白い服を着た、髪はすごく長い女性です!

 長い髪で目元が隠れた女性は、僕たちの姿をみると、にたーと笑い、そして目の前で消えました。


 「はわわわわっ!」

 「ユアン、落ち着く」


 む、無理。

 いきなりあんなのが部屋の前に居たら怖いに決まってる。

 逆になんでシアはそんなに冷静でいられるのか聞きたいくらい。


 「いい子いい子」

 「もっと撫でて」

 「うん」


 シアが私の頭を撫でる。

 お陰で、少しだけ落ち着いた気がします。


 「うー……さっきのは何なんですか?」

 「幽霊」

 「あれが、ゴーストですか?」

 「違う。幽霊」

 「一緒ですよね?」

 「違う。ゴーストは魔物。幽霊は…………よくわからない」

 「よくわからないのに、幽霊ってわかるのですか?」

 「うん。よくわからないから幽霊」


 シアさんの説明がよくわかりません!

 

 「シアさんは怖くないのですか?」

 「何が?」

 「その、幽霊がです」

 「害がないのなら平気。むしろ、怒ってる」

 「何でですか?」

 「ユアンを怖がらせたから」


 嬉しいですけど、嬉しくないですよね?

 幽霊が何かはわかりませんが、下手に刺激しないで欲しいです。

 幸いにもすぐに消えてくれましたが、次に現れた時にシアさんが刺激して僕たちに付きまとわれたら嫌ですからね。


 「わかった。放っておく」

 「はい、そうしてください」

 「うん、僕もそうする事をお勧めするよ」

 「わっ! って、また貴方ですか」


 いきなり会話に参加されるとびっくりするから辞めてもらいたいですよね。

 むしろ、許可なしに勝手に話に加わらないで貰いたいです。 

 まぁ、許可を求められても許可なんかしませんけどね!


 「それで、何の用ですか?」

 「用はないよ? ただ、鍵を探すのに手間取っているみたいだからヒントをね?」

 「くれるのですか?」

 「うん。優しいからね?」


 全然優しくないですよね。

 スノーさんとキアラちゃんと分断させられますし、幽霊なんかだして、僕を驚かしますし。勝手に話に参加をしてきますし、この人と関わって良い事なんて今の所一つもありません!


 「で、言いたい事だけ伝えて貰って帰って貰っていいですか?」

 「ちょっと、冷たすぎやしないかな?」

 「当然の扱いだと思いますよ。それよりも、何ですか?」

 「まぁ……いいけど。見つからないみたいだから鍵の在処を教えてあげようと思ってね?」

 「は?」

 「ユアン、怖い」


 むー……。仕方ないじゃないですか。

 鍵を探させておいて、幽霊に驚かされて、しまいには答えを教える何て言われたら、誰だって怒りたくなると思いますよ。


 「で?」

 「で? とは何かな?」

 「鍵の在処ですよ!」

 「あ、聞きたいんだね?」

 「別に知りたくないなんて言っていませんよ」

 

 僕が怒っているのとは別の話ですからね。

 スノーさん達と合流しなければいけませんし、さっさとこんな場所からは脱出したいと思います。


 「それじゃ、教えてあげるよ。鍵はね、僕が持ってるよ?」

 「…………何処にいるのですか?」

 「二階の奥、本館に続く通路の先、といえばわかるかな?」

 「そこへの鍵は閉まってましたよ」


 実は二階に上がった時、最初に確かめましたからね。


 「さっきまではね? だけど、ユアン達が驚いた事をきっかけにそこの通路の鍵は開く仕組みになっていたんだ」

 「へぇ……そうなのですね。わかりました、直ぐに向かいますね」

 「うん、待ってるよ」


 やりましたね。

 鍵を探す、手間が省けました。


 「ユアン?」

 「はい、どうしました?」

 「落ち着く」

 「落ち着いてますよ。だから、あの声の人…………を倒しにいきましょう」

 「うん。倒す。だけど、冷静さを欠いちゃダメ」

 「大丈夫ですよ、僕は冷静です」


 なので、早く行って、スタッフで殴ってあげたいと思います。


 「ユアン」

 「わっぷ! もぉ、シアさんこんな事してる場合じゃないですよ」

 「してる場合。ユアンが冷静じゃないと、みんなが困る。ユアンは私達パーティーの要」

 「シアさん……」


 急ごうとする僕をシアさんがギュっと強く抱きしめました。


 「仲いいね。早く来てくれないかな?」

 「行きますよ。ですが、もうちょっとシアさんと仲良くしてから行きますから、そこで眺めていてください」

 

 シアさんに捕まって動けませんからね。

 行きたくても行けません。

 無理をすればシアさんを振りほどく事もできますが、シアさんは僕を思ってこうやってくれているのがわかります。

 その気持ちを無駄には出来ませんね。


 「シアさんありがとうございます」

 「落ち着いた?」

 「はい、大丈夫だと思います」


 僕は冷静なつもりでしたので、元々落ち着いていたつもりでいます。

 なので、落ち着いたかどうかはわかりませんが、さっきより急ごうという気持ちは治まりました。


 「シアさん、通路を抜けた先に、声の主が居ます」

 「うん」

 「多分、僕一人では倒せない相手です」

 「うん」

 「ですが、僕が必ず隙を作りますから、シアさんが仕留めてください」

 「わかった」

 「ただし、殺さないようにしてくださいね?」

 「どうして?」

 「僕も一発殴らないと気が済みませんからね!」

 「わかった」


 それに……。

 いえ、今は余分な事を考えるのはよして、倒す事だけに集中しましょう。

 相手はきっと強敵……な筈ですからね・

 ですが、僕とシアさんならきっと相手が誰であろうと倒せる筈です。

 僕とシアさんは本館へと続く道を二人で進みました。

 声の主の目的を聞き出すためにも。

声の主の正体は一体!?

そして、その目的とは!?

まぁ、気になるのは目的だけですよね? 正体は、きっと……。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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