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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第7章 龍人族のダンジョン編
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弓月の刻、予知夢を聞く

 「夢ですか?」

 「うん、そうだよ。前に言っていたね~」


 予知夢。

 リコさんは不思議な力を持っています。

 

 「その夢で何を見たのですか?」

 「ユアンちゃん達が洞窟に入って行くのを見たよ。雪の降り積もる中を進んでね」

 

 雪が積もる中をですか……となると、もう間もなくという事になりそうですね。


 「正確な日にちとかはわかるのですか?」

 「そこまではわからないかなぁ」

 「それじゃ、どうやって僕たちはその日を知れば良いのですか?」

 「う~ん。成り行きじゃないかな? ユアンちゃん達が意地でも行かないってならない限りは自然とその場所に赴く事になると思うよ」


 予知夢を避ける方法はあるみたいですね。

 ですが、それは運命を変える事になるみたいです。

 例えばですが、僕が死ぬ未来があるとします。

 それは元々決まっている事なのですが、それを避ける事は可能です。

 単純に僕がその場所に行かなければ、その未来は訪れる事はありません。

 ただ、その場所に行かなければいけない理由が存在し、それに抗えるかどうかが鍵となるみたいです。

 

 「けど、それだけ聞くと避けるのは簡単そうですよね」

 「まぁね。だけど、もしそこでリンシアさんが助けを求めていたらどうする? ユアンちゃんが助けに行かなかったら、確実に死んじゃうような状況でさ」

 「え、それは勿論助けに行きますよ」

 「自分が死ぬ未来が待っているのに?」

 

 極端な話がそういう事になるみたいです。

 僕が死ぬ場所にどうしても行かなければならない理由があるので、避けるのは難しいと言います。

 これはもしもの話ですよ?

 今の話は、僕たちがリコさんが見た夢の場所……リコさんの村の近くにあった龍人族の街にあるダンジョンみたいな場所に自然と向かう用事が出来るって話です。

 

 「つまりは、何もしなくても自然とそこに行く用事が出来るって事ですね」

 「そゆことだね。だから、それまでに準備をしておきなさいって忠告なんじゃないかな?」

 

 何も知らないで行くのと、ある程度準備をしていくのでは全然違いますからね。


 「どんな敵がいた?」

 「ごめんね~。私が見たのはユアンさん達が洞窟に入って行くとこだけなんだよね」

 「となると、どんな魔物が居るとかはわからないのですね」

 「うん。役立たずでごめんよ~」

 「そんな事ありませんよ。先に知れただけですごく助かります」

 「ホントにね。アカネさんに相談する時間があるのは本当に助かる」

 「いきなりダンジョンに挑むって言ったら凄く怒られそうだよね……」


 二人の心配はそこなのですね。

 まぁ、領主の仕事を放り出してダンジョンに行ってくるから後はよろしく……なんて、とてもではありませんが言えませんよね。


 「どちらにしても、計画は立てないといけませんね」

 「うん。どんな魔物が出るかは不明。中の広さもわからない。休める場所があるとも限らない。準備は大事」


 うわぁ……そんな大変な場所の可能性があるのですね。


 「私達の方は……」

 「アカネさんだよね」


 こっちはこっちで暗い顔をしていますね。

 それほど、休みを頂く事になる事が厳しいみたいですね。


 「仕方ない。攻略にどれくらいかかるかわからない」

 「そんなに深いのですか?」

 「噂だけど、昔攻略されたダンジョンでは三十階層はあったと聞いた事がある」

 

 そんなにですか……。


 「けど、広くなかったら直ぐに奥までたどり着けそうですよね?」

 「階層による。場所によっては迷路。一日かかる場所もあったらしい」

 「一日ですか……長期戦になるかもしれませんね」

 「もし、同じような場所だったら下手すると一か月以上かかるかもしれないね」

 「それに奥へ進めば進むほど強力な魔物が潜んでいるって聞いた事があるよ」

 「そうなのですか?」

 「うん。奥にはダンジョンを維持するコアがある。そこを守る守護者は強敵らしい」


 むむむ……どうやら一筋縄ではいかないみたいですよ。

 どんな魔物が出てきても平気なように準備は念入りにする必要がありそうですね。


 「けど、どうしてそんな場所に僕たちが行かなければならないのでしょうか?」

 

 だって、ずっと放置されていた場所ですよ?

 今更そこに行った所で何かが変わるとは思えません。


 「それは、龍神様のお導きじゃないかな?」

 「龍神様のですか?」

 「そうそう。私達の村の言い伝えで、こんな話があるんだよね」


 龍神様の眠る祠に導かれし者よ

 己の力を示せ

 さすれば塞がれた道は開かれるであろう

 全てが交わる場所へ


 「どういう意味ですか?」

 「言い伝えだからね。私にもわからないよ」


 こういうのって、しっかり伝承して欲しいと思うのは僕だけでしょうか?

 もっとわかりやすくしてくれれば、そこに向かう目的がはっきりすると思います。


 「まぁ、導かれし者って言っているくらいだし、誰でもいいって訳ではないんじゃないかな?」

 「それはそうですけど……」

 

 導くって事は来て欲しいって事ですよね?

 それなのに人を選ぶってよくわかりません。


 「私は理解できますよ。私の村も外部の人はあまり中に入れません。ユアンさん達だったらいいけど、魔族の人を招き入れて、悪さをされたら困りますから……」

 「そういう問題もあるのですね」


 忘れていましたが、ダンジョンには龍人族が残したという貴重なアイテムが眠っている場所でもあるのですね。

 そして、龍人族の残したアイテムは古代魔法道具アーティファクトと呼ばれ、街で売られている魔法道具マジックアイテムとは格が違います。

 それを求めてダンジョンを荒らされたり、その古代魔法道具アーティファクトを使って悪さをされたら困りますしね。

 それこそ、トレンティアを襲った魔族に渡ったりしたら酷い事になるかもしれません。

 どんなアイテムが眠っているのかはわかりませんが、阻止する必要がありそうです。


 「どちらにしても、僕たちが導かれたのなら行くしかなさそうですね」

 「そうだね。というよりも、行くことになるってのが正しいかな」

 「その時がくればわかるって事ですね」


 避けては通れない道である事は間違いなさそうです。


 「でも、どうして僕達何でしょうか?」

 

 たまたまかもしれませんが、ダンジョンに挑むのであれば、僕たちではなく、他の人……それこそ、ナナシキの街に拠点を構えてくれたユージンさん達でも良さそうですけどね。

 ユージンさん達は進んで人助けをしたり、悪い事をするような人には見えません。

 何よりも僕たちよりも冒険者ランクの高い凄腕の人達が集まっているのです。


 「いや~、多分だけど龍神様にとって冒険者ランクは関係ないし、別の理由なんじゃないかな?」

 「別の理由……強さが関係ないとなると他に思い浮かびませんね」

 「そこはやっぱりユアンちゃんじゃない? 何せ、黒天狐様と白天狐様は龍人族の人とも関りが深かったみたいだし、その娘とあれば最適なのかもね~」

 「それならシノさんでも良さそうですけどね。けど、シノさんは夢に出てきていないのですよね?」

 「そだねぇ」


 ますますわかりませんね。

 これは、たまたま僕たちだったと考えておくくらいが良さそうです。

 変に僕たちである理由を模索して、思いついた結果に捉われるのも良くないですしね。

 

 「では、今後の方針ですが……」

 「うん、それとなく……様子を伺いながら、アカネさんに相談してみるよ」

 「上手くいかなかったら、ごめんなさい」

 「どうにかする。ダンジョンには私達四人で挑む事になってる」

 「そうですね。そこはどうにかお願いします」


 ダンジョンに挑むうえで一番の難敵がアカネさんになるとは思いもよりませんでした。

 ですが、案外話してみたらすんなりと許可を卸してくれる可能性もありますよね?

 そんな期待を込め、リコさんからの報告を受けた僕たちは解散をし、スノーさんは包み隠さずスノーさんがアカネさんに相談したようなのですが……。


 「めちゃくちゃ怒られた」

 「アカネさん……怖かったです」


 夕方に帰宅したスノーさんとキアラちゃんは物凄くへこんでいました。


 「どうにかならなさそうですか?」

 「んー……あの調子じゃ無理そうかな?」

 「これから忙しくなるのに、準備を怠った結果、移住者の管理が疎かになって困っても、知りませんからね……って笑顔で言われちゃった」


 あー……笑顔だからこそ怖い人って居ますよね。

 内心怒っているのに、ニコニコとしていたから安心していたら、実は物凄く怒っていたなんてよく聞く話です。


 「けど、スノーさん達が無理だとすると困りますね」

 

 ダンジョンの中に転移魔法陣を安全に設置する事が可能であれば、少しずつ攻略していく方法もあるとは思いますが、そればかりはダンジョンに入ってみたい限りはわかりませんからね。


 「シノに相談してみればいい」

 「あ、その手があったか!」

 「それならアカネさんも許してくれるかもしれないね!」

 「けど、誰がそれを相談するのですか?」


 シノさんに相談した結果、僕たちの味方になってくれたとしますよ?

 ですが、下手すればシノさんとアカネさんが喧嘩になる可能性もありますよね?

 そして、誰がシノさんに協力するように頼んだのかとなるはずです。

 そうなると、アカネさんの怒りの矛先はシノさんに相談した人になると思います。

 そんな役を一体誰が……。

 

 「そこはユアンしかないんじゃない?」

 「ユアンさんのお願いならシノさんは聞いてくれそうだね」

 「ユアン、頑張る」


 三人の目が僕を見ています。

 まるで、それが出来るのは僕しかいないって感じでジッと見ているのです!


 「嫌ですよ! シノさんにお願いするのも嫌ですし、アカネさんに怒られるのはもっと嫌です!」


 シノさんにお願いするのなら我慢できますが、アカネさんに怒られるのだけは絶対に嫌です!

 それはスノーさん達の日ごろを見ていればわかります。

 時々ですが、アカネさんに怒られたと言って、泣きそうな顔で帰って来ることがあるのですよ?

 そんな姿を見ているのです。

 アカネさんが実際に怒っている所を見た事はありませんが、わざわざ怖い思いをしたくはありません!

 ですが、こういう時って多数決で決まってしまうのが僕達です。

 普段は僕の判断に任せる事が多いのに、こういう時ばかり多数決になるのです!


 「うー……本当に僕がやるのですか?」

 「お願い! 怒られるのは後で一緒に怒られるから!」

 「その時は私も一緒に怒られるからね?」

 「なら、最初から一緒に行きませんか?」

 

 どうせ怒られるのなら、一緒に相談をしてその場で怒られればいいと思います。


 「いやー……心の準備がね?」

 「それに、さっき怒られたばかりだから……」


 まぁ、何度も怒られるのは嫌ですよね。

 

 「わかりました。その代わり、僕に任せて二人が余計に怒られる事になっても知りませんからね?」

 

 その場で済むことを後回しにした結果、余計にこじれて相手の怒りが増す事だってありますからね。


 「うん……その時は、甘んじて受け入れるよ」

 「だけど、今はお願いします」

 「二人がそこまで言うのならわかりました。けど、行くのは明日にしますからね。気が変わったら一緒にお願いしに行きましょうね」


 まぁ、スノーさん達がアカネさんと仕事をしている間にシノさんと話すつもりではいますけどね。

 という訳で、明日はシノさんに相談する事になりました。

 どうか、僕まで怒られませんように。

 そう思うのは都合が良すぎるかもしれませんが、そうなる事をただただ祈るばかりです。

ダンジョンに挑むのに準備は必要ですよね。

何よりも仕事……それに穴をあける事になるので大変だと思います。

用事があって会社を休む。何故か悪いことをしている訳ではないのに、後ろめたい気分になるのと同じ感じかもしれませんね。

それに加え、怒られる可能性があるとなると、余計に憂鬱ですよね?


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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