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補助魔法使い、起きたらシアさんと

 「ん~……暑いです」

 

 それに、何故か体が動きません。

 重い瞼をゆっくりと開けると、すぐ近くにシアさんの顔がありました。

 動けないと思ったら、シアさんに抱えられているようです。


 「ふえ?」


 シアさんはすーすーと寝息をたてて眠っています。僕が起きた事に気付かないくらい、ぐっすりです。

 どうして、こんな事になっているのでしょうか?僕は昨晩の事を思い返します。


 むむむ、薄っすらと思い出してきましたよ。

 途切れ途切れの記憶ですが、何となく状況がわかってきました。



 「こっち、ひんやりしてます」


 僕は体温が高いようで、布団の冷たい所を求めてゴロゴロしていました。決して、寝相が悪い訳ではありませんよ?

 暫くたつと、また温かくなってきたので別の場所に移動する。

 それを繰り返す事、数回……。

 

 「ふにゃ!?」

 

 僕は、ベッドから落ちました。


 「ユアン……?」

 

 落ちた時の音でシアさんは目を覚ましてしまったようです。


 「大丈夫です、ベッドから落ちただけなので」

 「……うん」


 シアさんはベッドから起き上がると、床に転がっている僕の所まで来てくれます。

 ベッドから落ちた事が恥ずかしいですね。


 「大丈夫。私も落ちた事ある。ユアンは初めてベッド使ったのなら仕方ない」


 そういって、僕の事を抱きかかえると、ベッドに戻してくれました。

 シアさん優しいですね。

 ですが、シアさんも何故か僕のベッドに潜り込んできます。


 「シアさん?」

 「こうしていれば、もう落ちない」


 シアさんは僕の体を抱くようにして隣に横になります。

 

 「シアさん、暑いですよー」

 「大丈夫」

 

 シアさんの体もホカホカして温かいです。もしかしたら獣人は体温が高いのでしょうか?

 あぁ……でもシアさんの匂い、安心しますね。

 シアさんはすぐに眠ってしまいました。

 僕も暑かったけど、それが気にならないほど、心地よく僕は再び眠りについたのでした。


 

 「うん、思いだしました」

 

 シアさんの寝顔を眺めつつ、昨晩の出来事を思い出した僕は布団からベッドから起き上がろうと試みましたが、シアさんの力が強く、脱出できません。

 

 「仕方ありませんね……」


 おやすみなさい。

 暫く、シアさんの寝顔を観察したあと、僕は再度眠る事にしました。

 朝の2度寝は最高ですね。

 

 


 「ん~…?」

 「起きた?」


 目を開けると、シアさんと目が合い、少し残念そうな顔をしています。もう少し寝ていたかったのでしょうか?

 

 「おはよーございます……」

 「おはよう」

 

 それにしても、一緒に寝ていた事もあり、近いです。暗くて眠かったのであの時は気にしませんでしたが、今考えると、かなり照れ臭い。


 「ユアン、寝顔可愛かった」

 「む……寝顔を見るのはダメですよ」


 僕も見てたのでおあいこですけどね。僕は内緒にしておきますけど。


 「んーー!」

 ベッドから身を起こし、伸びー。

 少し眠気が覚めました。

 ついでに、尻尾をフリフリして、耳もピコピコして体操をしておきます。また、ローブに隠し、窮屈な思いをさせてしまいますからね。

 純粋な獣人とわかっても、それを説明して理解して貰えるとは思いませんから、隠さない訳にはいきませんので。

 少なくとも、国境を超えるまでは我慢です。


 「洗浄魔法クリーンウォッシュ!」

 

 部屋に水場がない為、本当は顔を洗いたい所ですが、魔法で我慢します。


 服を脱ぎ、下着の上からローブを着る。何時でも外に出られる準備が整った頃、部屋がノックされました。


 「はーい」

 「おはようございます。朝食の準備が整いましたが、如何なさいますか?」


 どうやら、タキさんが朝食を用意してくれたようです。


 「はい、頂きます」

 「畏まりました。直ぐにお持ちしますのでお待ちください」


 サービスがいいですね。

 タキさんが運んでくれた朝食はパンとトウモロコシで作ったスープに牛乳でした。


 「それと、宜しければそちらもお召し上がりください」

 

 どうやら昨日言っていたサービスを追加してくれたようです。

 

 「そちらはチェリーと言いまして、爽やかな甘酢っぱさが特徴の果物です。皮ごと食べられますのでそのままお召しがり下さい」

 「ありがとうございます」

 「いえいえ、こちらこそ。では、ごゆっくり」


 籠いっぱい置いて行ってくれましたが、全部は食べきれないと思います。でも、それだけタキさんは気持ちを込めてくれていると思うと心遣いが嬉しいですね。


 「ユアン、食べる」

 「そうですね!」

 「お腹すいた」


 昨日結構食べたと思うのですが、シアさんは大分お腹が空いているようです。僕は、正直果物だけでも十分なくらいです。


 「シアさん、僕のも食べてくれていいですからね」

 「うん、だけどユアンもしっかり食べなきゃだめ。食べられる時に食べるのが冒険者」

 「はい、大丈夫ですよ」


 パンも結構あったと思いますが、僕は一つだけ頂き、後はシアさんに食べてもらいました。

 次々に消えていくのには驚きましたね。朝から凄いです。

 その代わりに、僕は果物を多く頂きました。


 「朝なら、僕はこれくらいが丁度いいです」

 

 甘酸っぱくて、しつこくないのでどんどんと口に運んでしまいます。

 朝からパンとか食べるとちょっと辛い時があるのでちょうど良く思えます。節約の為に朝ご飯を食べなかったのが原因かもしれませんね。

 しかし、満足するほど食べてもチェリーは食べきれませんでした。勿体ないので収納にしまいます。暫くは、これを朝食にさせて貰いますけど大丈夫でしょうか?

 後で、タキさんに確認をとってみようと思います。


 「お腹いっぱいです」

 「うん。それなりにお腹いっぱい」


 シアさんはまだまだ食べられるようです。細い体のどこに詰まっているのでしょうか?胃袋に収納でもあるのかもしれませんね。


 「この後は、買い物ですか?」

 「先にギルドに行きたい。その後に買い物……だめ?」

 「……だめじゃないですよ」


 どうやら、シアさんはパーティー名の登録を先にしたいみたいです。どちらも逃げるものではないので僕はどちらが先でも構いません。

 決して、シアさんの「だめ?」に負けた訳ではありませんからね。

 

 「部屋の鍵をお願いします」

 「畏まりました。お気をつけて」

 「はい、それとあの果物ですが余った分は頂いてもいいですか? お金は別にお支払いしますので」

 「いいえ、サービスなので気にしないでください。この時期が旬なもので、実は結構な数がありますから」

 

 どうやら、貰ってもいいみたいです。

 タキさんにお礼を告げ、僕たちはギルドに向かいました。

いつも、お読みいただきありがとうございます。

説明回は個人的には苦手です。

堅苦しいですからね。


もう少しで冒険に出ますので、それまでユアンとシアの仲良い所をお楽しみください。

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