表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/690

補助魔法使い、仕事をする

 「チヨリさん、魔力水はこっちでいいですよね?」

 「うむー。そっちに置いといてくれー」


 かれこれチヨリさんにポーションなどの作り方を教わりつつ仕事をし始めて一か月くらい経ち、あの大きなお家での生活も少しずつ慣れ始めた気がします。 

 

 「それにしても寒くなりましたね」

 「そうだなー。あと一か月もすれば雪が降るかもなー」

 「こっちは雪が降るのですね」

 「少しだけどなー。けど、あの山は毎年真っ白になるぞー」

 「楽しみですね」

 

 山の景色を見るのは一つの楽しみになりました。

 僕たちがついた頃、山は赤と緑に彩られていました。

 それが、もうすぐ葉が枯れ始め茶色になり、葉が全て散るころに雪が降り始めて真っ白になるみたいです。

 そして、寒い時期が終われば緑に戻り、暑くなってきたら深緑になっていくみたいです。

 

 「けど、寒いのは苦手です」

 「狐族なのにだらしないなー」

 「育った環境だと思いますよ」


 僕の住んでいた村では滅多に雪は降りませんでした。降っても積もる事はなかったですね。

 寒さもそうです。今でも結構冷えてきたと思うのですが、この場所はもっと冷え込むみたいです。

 そのせいで最近は朝が少し辛く感じます。

 シアさんのお陰でお布団の中は温かいのですが、なかなかそこから離れられない日が多くなってきました。


 「ユアン」

 

 っと、噂をすればシアさんがお店の前を通りかかりました。


 「お仕事は順調ですか?」

 「うん。平和そのもの」

 「ですよね。何もないのが一番ですよ」

 「そうだけど、退屈」

 「ならリンシアも怪しい所を探せばいいと思うけど」

 「それはラディの仕事」

 「そういう所は姉妹そっくり」


 そして、お店の前で立ち止まったシアさんの肩にはラディくんが乗っています。

 シアさんはアリア様の紹介でアラン様を尋ねました。

 その時に紹介されたのがこの仕事です。


 「シアさん達が街の警邏をしてくれているのでみんな安心できると思いますよ」

 「うん。ユアンがそう言ってくれるなら頑張る」

 「主に頑張ってるのは僕だけどね」

 「違う。ラディの配下」

 「まぁ、そうだけど」


 シアさんに与えられた仕事は街の警邏です。

 魔物が何処からか侵入したり、盗賊とかが忍び込んだ時などに討伐したり掴まえたりするお仕事を任されています。

 そして、その手助けとしてキアラちゃんからラディくんを借りている感じですね。

 仲が良いのか悪いのかはわかりませんが、街の中でよく言い争いをしているのを見かける事がありますけどね。

 それでも上手くやっているようですけど。

 

 「けど、ラディくんの配下のお陰で何かあっても直ぐに解決できると思いますよ」

 「数だけは多いからね」

 

 ラディくんの配下は街の至る所にいます。

 最初は街の人に討伐されそうになりましたが、スノーさんとキアラちゃんが説明をしたお陰で今では普通に歩いていても誰も気にしなくなりましたね。

 むしろ、虫に食われた野菜などをあげている人もいるくらいなので可愛がられている節もあるくらいです。

 ラディくんの配下は普通の魔鼠と違って人懐っこくて、真っ白で綺麗な子が多いですしね。

 そんな雑談をしていると、上空から一匹の大きな鳥が降りてきました。


 「リンシア様、北の森に魔物が現れた模様です」

 「わかった。直ぐ行く……ユアン、仕事が出来た。また後で」

 「はい。気をつけてくださいね? 何かあったら呼んでください」


 シアさんに保険のために防御魔法を張ってあげるとシアさんは北の森に向かって走っていってしまいました。

 

 「それにしてもユアン達は便利だなー」

 「そうですか?」

 「うむー。特にあの召喚獣がいい仕事してると思うぞー」

 「確かに、昼夜構わずに監視してくれますからね」


 ちなみにですが、先ほど上空から降りてきた大きな鳥はキティさんです。

 街の中をラディくんの配下が見て回っているように、キティさんの配下も北の森と街の上空から監視をしてくれています。

 そして、何かあればラディくんとキティさんを通じて直ぐにシアさんへと連絡が行く事になっています。

 ラディくんの配下は何処からでも家に侵入できますので、怪しい人が何処かに潜んでいても発見できるのは便利ですね。

 もちろん街の人の生活は覗いたりはしませんよ。あくまで怪しい人だけですからね。


 「さて、わっち達も仕事するぞー」

 「わかりました。僕はいつも通り店番していますね」


 これは最近の流れですね。

 お店の準備をしているとシアさんが訪れ、その後にお店を開く感じです。


 「それじゃー、わっちは裏に居るから困ったら呼んでなー」

 「わかりました」


 そして、チヨリさんはポーションなどの薬の制作に専念し、僕がそれを交換するというのが役割となりました。

 といっても、薬自体は中々売れませんけどね。

 けど、僕たちとしてはその方が嬉しいです。

 薬が必要という事は、それだけ怪我をしていたり、病気などで薬が必要な人がいるという事になります。

 儲けという点では使う人がいるのは助かりますが、皆が健康で元気でいてくれるのが一番だと思います。

 収入だけで考えれば、トレンティアに売れますし問題ないですしね。

 そんな訳で、薬の売れ行き……まぁ、物々交換なのですが、正直あまり良くはありません。

 なので、店番をしている僕は暇な事が多い……と言いたい所ですが、実は忙しいです。


 「ユアンちゃん、また腰をやってしまってのぉ……」

 「重いものを持つときは気をつけてくださいね? リカバー!」

 「ありがとうな。これ、みんなでお食べ」

 「いつもありがとうございます」

 「ユアンちゃん、ちょっとナイフで手を切っちゃから治してくれるかい?」

 「わかりました。慣れているとはいえ、そういう事はありますからね……リカバー!」

 「ありがとうよ! これ、良かった今日の朝とれた鹿肉だ、良かったら食べてくれな!」

 「はい、いつも助かります」

 「ユアンちゃん…………」


 とこんな感じで、次々に怪我をした人が訪れるのです。

 中には転んで擦りむいたとくる人までいます。

 そして、その対価として食べ物や絹などを置いて行ってくれます。

 

 「疲れました……」

 

 そんな感じで朝から街の人を色々と治したりするので疲れます。

 いえ、回復魔法を使う事はあまり疲れないのですが、人が次々に入れ替わり、毎日一言二言喋るのが意外と大変なのですよね。


 「仕方ないなー。ユアンは人気あるからなー」

 「そんな事ないと思いますよ」

 「そんな事あるぞー。みんなユアンと少しでも話したいからなー」


 チヨリさんはそんな事を言って茶化してきますが、まさか僕と話すためにわざわざ怪我をしてくるなんてないと思いますけどね。


 「お陰で繁盛してるから、ユアンを雇って正解だったなー」

 「お役に立てているのなら良かったです」

 「うむー。食料とかも前に比べて充実してるし、トレンティアからの収入も安定しそうだからなー」

 「そういえば、ローゼさんと色々と話あっていましたね」

 

 一度、転移魔法陣を使いローゼさんを案内した事があります。

 僕が住む場所をみるついでに、定期的に購入するポーションを造っているチヨリさんと顔合わせがしたいとの事でした。

 どっちかというと、僕が住んでいる場所がオマケだと思うのですけどね。

 そんな感じで僕たちの一日は過ぎていきます。

 ですが、今日はいつもと違った事が起きました。

 それは、僕とチヨリさんが昼食を食べ終え、食後のお茶を啜っている時の事でした。


 『ユアン!』

 『はい、どうしましたか?』


 突然何の前触れもなく、シアさんから念話が届いたのです。

 しかも、珍しく少し慌てている様子でです。


 『森の中に倒れている人がいる。』

 『わかりました。人数は?』

 『二人』

 『意識はありますか?』

 『ない』


 そうなると運ぶ必要がありそうですね。

 ですが、シアさんだけでは運ぶのが大変ですし、意識がないとすると頭を打ったりしている可能性もありますね。

 

 『では、直ぐに向かいますのでシアさんはその人たちの安全を護ってください』

 『任せる!』


 シアさんとの念話はそこで終わりました。


 「チヨリさん、森の方に重傷者がいるみたいなので、少し行ってきてもいいですか?」

 「うむー。気をつけてな?」

 「ありがとうございます」

 「領主様には一応連絡しとくなー」

 「お願いします。では、行ってきますね」


 場合によってはスノーさん達にも連絡する必要がありますね。

 もしかしたら、魔物がシアさんが発見した二人を襲った可能性があります。

 この街から北にいる魔物は低ランクの魔物ばかりですが、人を襲い重傷者を出すほどの被害が出た可能性があるのならば、対策を練る必要があります。


 『ユアン、こっち』

 『影狼の後を追えばいいのですね』

 『うん』


 チヨリさんの家を出ると、家の前に真っ黒の狼が僕を出迎えるようにおすわりをして待っていました。

 目と口もない影で造られた狼なのでぱっと見怖いですが、きちんとお座りしているので可愛くも見えますね。


 「っと、そうじゃないですね。案内お願いします」

 『わかった』


 あ、返事はシアさんがしてくれるのですね。

 シアさんの返事に合わせて影狼も頷いていますけどね。

 そして、僕は影狼に続いて走り出します。

 農業区域を走っていると街の人に驚かれましたが、今は気にしていられません。

 それに、新しい区域に入ってしまえば、人が少ないので気にもなりませんし、そこを抜ければ直ぐに森に着くことも出来ます。


 『二人の様子はどうですか?』

 『専門知識はないからわからない』

 『出血はありますか?』

 『ない』

 『出血がないの良かったです』


 少しでも重傷者の容態を知っておくために念話を送ります。

 これが走りながらの会話でしたら大変ですけど、念話なので息が切れずに済むのは便利ですよね。

 

 『どんな魔物に襲われたのかはわかりますか?』

 『わからない。発見した時には魔物の姿はなかった』

 

 襲うだけ襲ったという事ですかね?

 まぁ、魔物は意味のない行動をとったりしますので可能性はありますので何とも言えませんね。

 

 『こっち』

 『そっちですね……』

 「みえました!」


 森の中でシアさんが手をあげているのを発見しました。

 そしてその傍らには丸まって横たわる人影が2つ並んでいるのもわかります。

 

 「辺りに魔物はいますか?」

 「いない」

 「わかりました。では、ここで容態を確認してしまいますね」


 チヨリさんは薬草だけではなく、人の身体に関する知識も豊富で、僕はそれについても色々教えて頂きました。

 そのお陰か、人を治すイメージが強くなり、回復魔法の腕が少し上達した気がします。

 そして、それは診察する人の容態がわかれば尚効果があがります。

 なので、まずは容態の確認ですね。

 二人を救うために診察開始ですよ!

 まずは、丸まって眠る二人の頭が揺れないようにゆっくりと仰向けになるように寝かし治します。

 そして、僕は改めて二人の姿を見ると少し驚きました。

 二人は僕とあまり年の離れていないくらいの女の子だったのです。

新キャラの登場です。

結構、自分の中で大切な二人になるかもしれない人達です!

その理由は次回更新にて。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。


~没シーン~


僕は影狼と並走し、シアさんが待つ森へと走ります。

しかし、やはり僕の足では少し距離のある森に辿り着くのは時間が掛かりそうです。


「遅い、乗れ!」


そんな僕を見かねたのか影狼が僕を横目で見ながら乗るようにーーー……


没理由。


も〇〇け姫 のシーンにしか見えなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ