表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/690

宰相VS第二皇女

 「ま、そういう訳で僕は今日をもって皇子としての役目を終わらせてもらうからよろしくね」

 「ですから、まだ終わっては困ると言っているではありませんか! 宰相も黙っていないで、説得をお願いします! お兄様がルード帝国を離れたら宰相も困りますよね?」

 「いや? 宰相も一緒に僕とルードを離れるから関係ないよ?」

 「なっ! ど、どう言う事ですか!?」


 そして、新たな事実が発覚しました!

 なんと、シノさんに続き、宰相のアカネさんもルード帝国から出ていくいみたいです!


 「これが、シノ様と私の願いでしたから」

 「もしかして、その事を父上は……」

 「うん。勿論知っている。そして、了承は得られているからね」

 「どうして、ですか? 宰相という立場は普通の人ではなれません……なのに、何故その立場を捨てるのですか……?」


 宰相の立場であれば、人を自由に動かす事も出来るでしょうし、きっと貰えるお金もいいですよね。

 その立場を捨てるアカネさんの行動をエメリア様には理解できないみたいです。


 「エメリア様、貴女は10歳の時、何をしていましたか?」


 シノさんがエレン様にしたような質問を、今度はアカネさんがエメリア様にしました。

 そして、アカネさんがぎゅっと拳を握り、微かに震えているのがわかります。

 

 「王族と貴族のみが通える、帝都の学舎へと通っていました」

 

 帝都には様々な事を学ぶための学舎があるみたいで、エメリア様はそこに通っていたみたいですね。


 「12歳の時は?」

 「まだ、学舎で様々な事を学んでいました」

 「その際の専攻は?」

 「植物学と芸術学です」

 「何故、帝王学や経済学を専攻なさらなかったのですか?」

 「王族たるもの、花や芸術品などを愛で、気品溢れる者となる事が一つの役目でもあると思ったからです」


 それはそれで必要なのかもしれませんね。

 ですが、一番大事なのは違う気がします。

 冒険者で例えるとどうでしょうか?

 冒険者が一番稼げる手段は魔物を討伐し、その素材を売る事です。

 他にも盗賊などの討伐も稼げますが、結局の所、魔物や盗賊に関する知識があっても、討伐する実力がなければ話になりません。

 きっと、王族であっても同じだと思います。

 エメリア様は国を回す立場であるのですから、植物や芸術などの学があっても、国を回す方法を知らなければ意味がないと思います。


 「エメリア様、私も昔はエメリア様の通っていた学舎に居た頃があります。私とシノ様はその時に出会いました」


 当時の年齢はアカネさんが11歳、シノさんが学舎に入れる年齢となった8歳の時みたいです。


 「私は11歳でありながら、学舎の首席でした」

 「その若さで宰相となっただけはありますね。凄い才能だと思います」

 「違います。私に才能はありません。ただ、ひたすら学ばなければいけなかっただけです。努力の賜物です」

 「そ、そうなんですね」


 アカネさんの気迫に押され、エメリア様がたじろいでいます。

 ですが、アカネさんは尚も続けます。


 「エメリア様がまだ必要のない事を学んでいる頃、私は首席という立場を買われ、シノ様の教育係を任せられる事にもなりました」

 

 それが二人の出会いなんですね!

 馴れ初めって聞いているとちょっとワクワクしますよね!

 真剣な話をしている二人に対して少し不謹慎かもしれないですけどね。


 「それが、どういう事かわかりますか?」

 「凄く、大変な事、だとは思います」

 「はい、大変でしたよ? 昼間は自身の学を高めるために学び、学舎が終わればシノ様に勉強を教え、夜は昼に学んだ事の復習とシノ様の勉強を教える為に問題の作成や資料の作成」


 酷い時には朝方までその作業をする日があったみたいです。


 「エメリア様、学舎が終わりましたら何をなさっていましたか?」

 「友人と、親交を深めていました……私が大人となった時、手助けして頂けるような間柄になるために……」

 「お茶やお菓子を食べ、おしゃべりをしていただけですよね? ちなみに、その友人との交友は未だにございますか?」

 「ありません……」


 相手は貴族の子だったみたいで、馴れ馴れしく皇女様と付き合える訳もなく、自然と距離が開き、疎遠となっていたようです。

 それに対して、無駄な時間を過ごしていただけだとアカネさんは言いたいみたいですね。

 僕はそれが全てが無駄だったとは思いませんが、アカネさんほど勉強していれば、今のエメリア様は立派になっていたかもしれないですよね……あっ、今でもエメリア様は僕よりも立派な人だと思いますけどね!


 「ちなみに僕が12歳のときは既に派閥が出来始めていたよ? エメリアが派閥が出来始めたのはいつだっけ?」

 「私がルード領の視察を始めた時なので……15歳の時です」


 エレン様がエメリア様の騎士隊長になったのもその時期でしたね。


 「ちなみに最初の派閥は?」

 「そこにいる、ローゼです」

 「確かに私だったね」


 それで、エメリア様の派閥の重鎮だったのですね!

 けど、どうしてエメリア様の派閥に入ったのでしょうか?

 僕はそんな疑問を持ちましたが、その疑問もすぐに明らかとなりました。


 「陛下に僕が提案したんだよ。派閥に興味のないローゼなら頼めば協力してくれるだろうって」

 「えっ! ほ、本当ですか?」

 「陛下の頼みは流石に断れないからね」


 自分の力ではなかったとわかったエメリア様が肩を落とします。


 「で、エメリア様がご友人たちとお茶をして楽しんでいる頃、私は既に学舎を卒業し、次は更に上の学習院へと進みました。自慢ではありませんが、12歳で学習院へと進んだのは過去でも今でも私しかおりません」

 「とても、凄い事だと思います」

 

 しかも、引き続きシノさんに勉強を教えつつらしいですね。


 「そして、15歳の時……エメリア様が視察と称して各地を観光している頃、私は学習院を卒業し、大臣見習いとして、学舎を卒業したシノ様の元で働くことになりました」

 「あの頃は大変だったね。僕の元に人が集まり始め、僕の権力に媚びを売ってくる人ばかりだったから」

 「そうでしたね。昼は大臣としての仕事、それが終われば終わりのない勉強とシノ様をサポートするための情報収集にシノ様のスケジュール管理……」


 アカネさんは寝る暇がないくらい……いえ、寝る暇を惜しむほど働いていたみたいです。


 「ですが、そのお陰もあり今の立場を手に入れた……のですよね? そこに何の不満が……」

 「不満ですか? シノ様が成人され、私が18歳の時には正式な大臣へとなり、シノ様が18歳の時には私は宰相となり、日々学ぶことを繰り返し、情報を集め、纏め、捌いてまいりました。その引き換えとして、お金は貯まりましたよ? ですが、失われた時は戻りません。友人との付き合い、家族との時間、自分の趣味。一番楽しいと思える時期を潰してしまったのです」

 「それは……自分で選んだ道ですので……」

 「そうです。この日の為に選んだ道です。シノ様が成人となられた日、私はシノ様より本当の正体を明かされました。そして、シノ様の目的もです。そして、シノ様は私に言ってくださったのです。「僕の目的が終わったら、共にルードを出よう」と。だからこの日の為に私は歩んできたのです。なので、自分で選んだ道ですので、エメリア様に止められる筋合いはないという事です」

 「アカネと共にルードを出る為にね。それが僕たちの願い、僕たちの野望だったのさ。他には何もいらない、アカネと過ごす時間が欲しかった」 

 「その時間を取り戻すために、私達はルード帝国を離れさせて頂きます」


 えっと、今のって……。


 「もしかして、お兄様と、宰相の仲というのは……」

 「そうだよ? 僕はアカネを愛している。ルードを出たら結婚するつもりさ」


 ですよね!

 やっぱりプロポーズですよね!

 でなければ、一緒に育った国を出ようなんていいませんよね。

 

 「ユアンと似てる」

 「え、僕と誰がですか?」

 「皇子」


 今のやり取りを見ていたシアさんが僕の方を見て呟きました。


 「うーん。確かに、似ているかもね」

 「そうだね。ユアンさんとシノさんが兄妹って良くわかります」


 僕とシアさんの話を聞いていたスノーさんとキアラちゃんまでそんな事を言い始めます。

 僕とシノさんが似ている?

 そんな事ないと思います。

 だって、シノさんはいい人かと思ったら酷い事を平気で言ったりしますし、僕とは全然違うと思います!

 

 「何ていうか……行動する理由がね?」

 「アカネさんの為に頑張っていた、人の為に頑張るユアンさんと似ていると思います」

 「全然違うと思いますよ?」


 だって、僕は困っている人がいたら助けますけど、基本的には僕は僕のために頑張っていましたからね。

 僕の目的であるー……。


 「だから、何処かに家を建てて、アカネと一緒にのんびりと暮らすために、これ以上は邪魔しないでくれるかい?」


 何処かに家を建てて、のんびりと暮らすために……あれ?


 「「「ほら」」」


 シアさん達が僕の方を一斉に見ました。


 「目的が一緒」

 「やっぱり兄妹だね」

 「間違いないです」


 なんで、そこで兄妹だと納得するのですか!

 そこで、判断されても困ります。

 誰だって、平和でのんびりと暮らす生活は憧れると思いますよ?

次回で終わらせるつもりが、また長くなってしまいました。

恐らく、明後日更新分+αでこの章は終わると思います。


ついに、総合ポイントが1000PTに到達致しました。

素人丸出しの自分の作品がここまでこれるとは正直思いもしませんでした。

相変わらず、誤字脱字があるにも関わらず、お付き合い頂き本当にありがとうございます。


今の所、あと6章くらいは最低続くと思いますので、そこまでお付き合いいただければ幸いです。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ