プロローグ
カンカンカン……。
「僕」は何かをつかもうとするが、かなわない。手がぬめぬめしたもので覆われていて、つかもうとしても滑るからだ。それに、なんだか手に力が入らない。おかしいな。身体はこんなに軽いのに、支えられない……。
それにしても、どういうことだろう。世界が赤い。明るい。朝? そうだ、学校に行かないと……。
と思ったら、「僕」はそのまま落下した。
「僕」? これは、「僕」なのか?
カンカンカン……。
どさりと、落ちた。頬にごつごつした、石? のようなものの感触。鉄の棒が敷かれているのか、そこに脇腹を強くぶつけた気もするが、痛くないので気のせいかもしれない。
さっきからひどい違和感を覚える。世界が、薄い、靄に包まれたような感覚だ。
それとも、違和感の正体は、この軽すぎる身体か? 体中から血液が失われていく、この感覚? どっちにしろ、「僕」はもう元には戻れないってことが、分かった。
カンカンカン……。
「ひっ」
声がして、がしゃんと何かが倒れる音がした。カラカラカラ……。どこかで聞いたことがある。これは、自転車の車輪が、空回りする音だ。
その音は、どこまでも虚しく鳴り続ける。カラカラという音に合わせて、目の前の景色が点滅を繰り返した。
その時僕は、目の前のものに気づいた。スマホだ。僕のだろうか。さっきまでやっていたゲームの画面が表示されている。
『GAME OVER』
いつの間にかゲームオーバーになっていたらしい。画面は、演出として赤く点滅を繰り返す。アイテムはもう手に入らないだろう。もったいないな……。
「僕」は赤く点滅する画面に手を伸ばした。わけは、自分でもよく分からなかった。
裏設定
カケルのやっているソシャゲの元ネタは、作者もやっているゲーム(限りなくどうでもよい)。