①カウントダウン
《7月24日》
自分でも、バカげたことを言ってる自覚は嫌というほどにあった。
「なぁ、何考えてる?」
「…世界の滅ぼし方」
「奇遇だね。同じこと考えてたわ」
虎山 康太郎、黒川 みく、そして僕(三池 空)。
《7月25日》
僕らはこの集まりを『屋上空想会』と呼んでいた。
「ミケ」
「ん?」
「トラ」
「どしたの?改まって」
「私たち、世界が終わってもこうやって一緒にいられるかな?」
「いやいや。世界が終わったら、生きてないでしょ」
寝転んで、夏の暑さにふわふわと流れる雲を見つめる。
《7月26日》
トラと呼んだ。クロと呼んだ。ミケと呼ばれた。
思えば、あの他愛の無い空想を拡げたいだけ拡げていた時間は、何よりも幸せに満ちていた気がする。
厨二病を中途半端に拗らせた挙句に、疎外感に付随する無限に近い思案ができる時間が与えられたおかげで、僕らの空想はどこまでも拡がっていった。
アニメや映画、フィクションの世界ではお決まりの、「気がついたら世界滅んでました」な状況を夢見る行為は、「ありえない」という暗黙の保証の上に成り立っていた。
「なんやかんや言って、俺たちは生きてるかもな」
僕たちが考える滅んだ後の世界は、あくまでも「僕たち以外」が滅んだ世界だった。
「そうね。でも、トラはすぐ死にそう」
「え?!俺だけ?!」
「ははっ」
他愛もないこの時間は、僕らの頭の中で創造される『崩壊していく世界』によって無限のきらめきを手に入れられる貴重な時間だった。
夢にそっくりだ。寝ている時に見る夢。
無責任に拡がっていく、綻びだらけの世界を、創造の糸と布地でつなぎ合わせて思い通りの形へ導く。
それを共有できるだけで満足だった。
《7月27日》
トラが死んだ。
自殺だった。
《2016年7月28日》
「ねぇ、ミケ。トラは幸せだったかな?」
「………」
僕は彼女の顔を見れなかった。
クロは泣いていた。
《7月29日》
雨が降った。
屋上には誰も来なかった。
僕は傘を閉じて空を見上げた。
夏の雨の冷たさを知った。
《7月30日》
僕は学校を休んだ。
漫画を読んで、ゲームをして、漫画を読んで。
ロールプレイングな1日はあっという間に過ぎ去った。
ケータイが何度か鳴っていた気がした。
クロからの不在着信があった。
かけ直す気にはなれなかった。
《7月31日》
一日中寝て過ごした。
ゲームだろうとアニメだろうとマンガだろうと映画だろうと、全てに親友の面影がいた。
それがたまらなく、痛かった。
クロから、電話はなかった。
《8月1日、午後21時31分、秒数進行中…》
世界が、終わった。
ケータイに残るの留守電に、耳を傾けた。
『ほら。やっぱり私たちは生きてたよ』
久しぶりに聴く親友の声は、目の前の光景を現実たらしめるのに十分だった。
そうか。これは夢ではない。
世界は今日、壊れたんだ。
ーつづくー
これは、誰かが望む世界の形です。
その始まりを言葉で紡いでみました。
世界を滅ぼす可能性は、誰の心にもある。
なんてバカみたいなことを言っている内に、滅んでるもんなんですよ。
自分一人の世界ほど脆くて醜いものは無いですから。
(ちなみに、作者は恋愛をしてこの世界が壊れました笑笑)




