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箱物語

白い箱(箱物語8)

作者: keikato
掲載日:2016/10/08

 週に二度の塾からの帰り。

 九時過ぎに、わたしはこの公園を通り抜ける。

 この夜。

 真冬の、しかもうす暗い公園。葉を散らした木の枝がいっそう寂しく見えた。

 公園の中ほどにさしかかったとき、子守歌を歌う声が聞こえてきた。

――今日もいるんだわ。

 わたしは街灯の下のベンチを見やった。

 若い女の人がいつものようにベンチに座り、おくるみに包まれた赤ちゃんをあやしている。

 この、ひと月。

 ここを通るたびに見かけていた。

 今夜のように赤ちゃんを抱いて、女の人は子守歌を歌っている。

――夜泣き、ひどいんだろうな。

 そんなことを考えながら、わたしは赤ちゃんの顔を思い出していた。


 はじめて見たのは秋が始まるころ。

 やはり、あの街灯の下のベンチだった。

――たしか女の子だったな。

 あれから三カ月たつので、ずいぶん大きくなっているはずだ。

――かわいらしくなってるだろうな。

 赤ちゃんの顔が見たくなった。

「こんばんは。赤ちゃん、見せてもらえますか?」

 声をかけ、わたしはベンチの女性に歩み寄った。

「どうぞ、見てやって」

 女の人がニッコリほほえむ。

 さらに気をきかせ、おくるみをはいで開いてくれた。

「ねっ、かわいいでしょ」

 街灯の明かりが、おくるみの中を照らし出す。

――えっ?

 わたしはおもわず息が止まった。

 見えたのが赤ちゃんではなく、白い布で包まれた真四角の箱だったからだ。

――どういうこと?

 とまどっていると……。

「寒いわ、もう帰りましょうね」

 女の人はベンチを立ち、ふたたび子守歌を歌い始めたのだった。

 小さな白い箱に向かって……。

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― 新着の感想 ―
[一言] え! どういう事? 狂人? 意味が分からなくて何度も読み返すと、女性の悲しみが何となく伝わって来るような思えました。
[一言] 子どもを亡くして白い箱を子どもに見立てているのか? それとも本当に白い箱を産んだのか? 謎ですね……。怖いです。
[良い点] 趣があり面白い作品だと思いました。 女の人は狂人なのでしょうか。 白い箱と赤ちゃんが妙な共通性があるような気がして、納得のいく読後感です。 不思議なお話もお得意ですね。
2017/12/15 07:11 退会済み
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