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誤って殺されたのだから、第二の人生を歩ませて下さい……  作者: 今野常春
第二の人生はエラーが発生していた。
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第三話 カナタと小さなおっさん

 大浴場で綺麗さっぱりとしたカナタは、彼の両親ヴィレスタとアルメナの待つ食堂へ移動すると、二人以外にもこの屋敷で働き手の離せる者全てが集まっていた。数にして三十名ほど、カナタ一人を待っていたのである。予め食堂の扉は開けられており、カナタの姿が見えてくると一人の老紳士が一歩前に躍り出る。


「カナタ様、ご回復おめでとうございます」

『おめでとうございます!!』


 アーバカスト侯爵家当主ヴィレスタの執事オイレン・アースゲルドの音頭で全員が姿勢を正して声と共にお辞儀を行った。その息の合ったお辞儀はカナタの心を鷲掴みにする。


(凄い、これは中々出会える光景ではないぞ…… 俺はこの世界では受ける立場なんだな


 カナタは彼らの態度を受けて頭の中で考えていた。すると、後ろに控えているテレサが耳打ちを行い、事前にレクチャーを受けていた通りの返答を行う。すでに彼等は頭を上げて、カナタの反応を待っている状況だった。


「みんな、有難う!」


 集まっている使用人は、カナタの照れの籠った言葉と態度に笑みを浮かべ、彼の返答を受け取った。

 これは、その家の子供が病から快復した場合、総出で祝いの言葉を送るのが慣例だった。それを確認した父ヴィレスタは手を二度叩き、全員に言葉を掛ける。


「さあ、カナタ、此方で食事にしよう!! みな、御苦労であった」

「そうね。皆もこの為に集まって貰って悪かったわね。解散よ」


 二人の労いの言葉を受けてオイレンはこの場に残らなければいけないもの以外に解散を告げた。彼等は遅滞なくこの場から捌け、テレサがカナタに入室するよう言葉を掛ける。


「さあ、カナタ様参りましょう」

「うん」


 テレサに手を引かれ、カナタは両親の側へと移動する。すると、アルメナが自らの隣へ座らせるように指示を出す。


「テレサ、カナタを此処へ座らせて」

「承知致しました、奥様」


 命じられたまま、テレサはカナタを彼女の隣へと誘い、もう一人の侍女エレナが椅子を引いて待機していた。カナタはそのまま腰を下ろす。すると、目の前には金属製のカバーが使用人らによって次々と取り払われていく。その(たび)に腹の虫を震わせる見た目と匂いがカナタを襲った。

 その光景は前世でもまずあり得ない、豪華と形容する事も値しない素晴らしい料理の数々であった。


「うわぁ……」

(凄いな。それに何だよ、この量の食べ物は!?)

「カナタ、遠慮はいらないから好きな物を食べなさい。但し、食べ過ぎてしまうのもいけないから、注意するのですよ」

「はい、母上!」

「まて、その前に乾杯だ……カナタの快復に!!」


 ヴィレスタの音頭でグラスを掲げて乾杯を行い、食事が始まる。

 しかし、二人は自ら目の前に盛られている料理手を付けようとはしない。カナタはそれを不思議に思い、自らも動こうとはしなかった。この点、彼の前世に於ける慎重な人柄が表れた部分である。


「カナタ様、何をお取り致しますか?」


 そうしていると、テレサが横から尋ねて来る。それで、漸く二人の態度に納得する。


「うーん…… あのお肉をお願い!」

「承知致しました」


 カナタは数ある料理から選択した物は肉料理だった。見た目と香りによって体全体が欲している様な感覚に襲われたからだった。

 すると、テレサは慣れた手付きでテーブルに盛られた肉料理から食べ易い大きさに取り分け、小皿に盛り付ける。この際、彼女に与えられた裁量権で必要な野菜なども附属されてカナタの前に置かれる。

 それを皮切りに、二人も執事と侍女が料理を取り分ける。


 ナイフとフォークの使い方はこの世界のカナタが既に学んでいた事と、彼方もテーブルマナーを何故か学ぶ機会があり、指摘されない程度の食べ方であった。

 小皿に盛られた肉料理をさらに人口分に切り分けたカナタは、フォークにさして口へと運び自然と料理の感想を漏らす。


「おいしい!!」

「デインス料理長に伝えれば喜ばれますよ、カナタ様」

「そうなんだ。テレサ、次はあれを取って」

「ふふ、料理は逃げませんよ。先ずは取り分けた料理をお召し上がり下さい」

「うん、わかった」


 カナタは素直に小皿に残る肉料理を食べ終えると、テレサがすぐに希望した料理をカナタの前に置いた。この辺り、気配りに優れた彼女の特徴が現れていた。


「流石はテレサだな」

「本当ね」

「有難う御座います、ご主人さま、奥様」


 その手際の良さを二人は褒め称える。彼女の良さは誰もが認めるところであり、その点に於いてカナタに付けた事は教育上好ましいと考えられている。貴族社会に於いて気配りは必要不可欠の必須スキルであり、これを持たない者や怠った者は須く取り残される結末を迎えるのだ。


 こうして、カナタは家族と美味しい料理に舌鼓を打っていると、ヴィレスタの下に一人の女中が近付き、一言告げている姿があった。すると、彼は考える素振りを見せず直ぐに答える。


「そうか、ではここへお連れしろ。くれぐれも失礼の無いように」

「承知致しました、御当主様」


 彼女は深々と一礼を行うと、部屋を後にする。


「あなた、彼女が目を覚ましましたの?」

「ああ。話によると歩けるそうだから此処に招く事にした」

「それは良い事ですね。カナタも感謝していますから、一緒にお食事を摂れれば喜ぶわね。ねっ、カナタ?」


 アルメナがカナタに話を振れば、そこには一心不乱に食事を摂る彼が居た。


「ふぁ…… はい。母上の言う通りです」


 口へ一杯に詰め込んだ料理を飲み込むと、カナタは嬉しそうに返事を行う。それから暫くして、女中を先頭に、件の女性レイシェル・マダレールが姿を現した。

 待ち受ける、カナタ達はそれぞれに彼女に対し感謝の念を抱いている。だが、面と向って感謝の意を述べる事が出来ない為、まずは料理で彼女に報いようということだった。

 だが、レイシェルが姿を見せ食堂に足を踏み入れた瞬間、彼女はとんでもない行動に出る。


「えっ、跳んだ……?」


 カナタの唖然とした口調はレイシェルの様を物の見事に言い当てている。

 室内へ踏み入れた彼女がした事は、女中の頭を跳び越え空中で一回転するとヴィレスタの目の前に着地して綺麗なファームで土下座を行った。


「お、おおおお待たせしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!!」


 着地した瞬間の音を残し、彼女の声以外何一つ物音が立たず、余計に余韻を残す結果となる。


「あ、ああ気にする事はないぞ、マダレール。君はカナタに回復魔法を掛けてくれたのだ。私達は君が目を覚ますまで待つ予定だったのだ」


 突拍子の無いレイシェルの行動に食堂に居る者全てが唖然とする中、謝罪の言葉を掛けられたヴィレスタは戸惑いながらも彼女を宥め、理由を話す。

 だが、それで収まるのかと言えばそうではなかった。


「い、いいえ。聞けば一時間も皆様をお待たせ致してしまいました!! 大貴族と名高いアーバカスト侯爵様をお待たせさせるなど、万死に値します!!」


 レイシェルはヴィレスタ言葉を受けると、余計に卑屈となり、床に当てていた額をより力を込めて押し当てた。これには彼も困惑の色を隠せない。

 そして、アルメナが彼に変わり言葉を掛けてもその態度は変わらず、如何するべきか困ってしまう。

 その様な中、カナタは席を立ち彼女の隣に移動する。子供の起こす行動に一同興味深々と声を出さずに見守る。


「ねえ、まずは顔を上げて、これでも食べようよ。美味しいよ」


 レイシェルが土下座を敢行している中、カナタはテレサにお肉料理をもう一皿用意するよう命じていた。彼女も彼の意図を汲み取り、何も言わず少し多めに小皿へと盛り付ける。彼はその料理を持って席を離れ彼女の真正面に立ったのだ。

 そして、一緒に料理を食べようと提案する。

 これが大人であれば、レイシェルは我慢出来ただろう。しかし、四歳児の身長でお皿が彼女の頭付近に存在しているから、さあ大変。


『グゥゥゥー』


 静まり返った食堂内で盛大な空腹音が鳴り響いた。その音と共にレイシェルは恥ずかしさの余り、体が震え始める。周囲の者たちは敢えて何も反応を示さず情けを掛けていた。


「ほら、お腹空いているから音が出るんだよ。だから僕たちと一緒に食べよう」

「し、しかしですね。私は……」


 カナタの言葉でも納得しない彼女だが、顔を上げた瞬間肉料理が視覚に訴え掛ける。すでに嗅覚は魅了され、その為腹の虫が大きな音を奏でたのだ。


「でも体は正直だよ」

「へっ!?」


 カナタの際どい台詞にレイシェルは唖然とする。しかし、カナタを見上げていたはずの目線が上下入れ替わっていた。つまり、肉料理を目の前にして彼女は素直に立ち上がっていたのだ。彼女は自らの欲望に負けた事を恥、カナタの言葉に素直に従う。


「まあ、席に座りなさい」

「そうね、それならカナタの隣が良いでしょう」


 ヴィレスタは微妙な空気になり始めたところで言葉を投げ入れ、アルメナも配慮してレイシェルはカナタの隣へ座らせる様に指示を出す。その言葉を受けて女中たちが速やかに行動に移し、主人の意向に沿う。


「す、凄い……」

(何よ、この凄まじいまでの料理の数々は!? まさか、これを彼らだけで? これが侯爵家の料理なの……)


 改めて着席したレイシェルは、目の前に鎮座する豪勢な料理の数々に圧倒される。室内に入った時は待たせてしまったという危機感から料理には一切見向きもしなかったが、落ち着きを取り戻した事で料理の評価が行われたのだ。


「マダレール様、何をお取り致しましょう?」

「へっ!? えっと…… ああ、先ずはカナタ様より頂いた此方を食べる事にするわ。有難う御座います……」


 まさか内心で悪態を吐いていた等と噯にも出さない彼女は、対応したエレナへ笑みを浮かべて返答を行った。それを額面で受け取ったエレナは素直に従い、後ろへと下がった。


(ふぅ、危なかったわね。まさか、考えている最中に声を掛けられるだなんて。まあ、まずはこの子から渡された料理を食べましょう)


 レイシェルはナイフとフォークを器用に使い、一口大に切り分け口へと運んだ。その瞬間、彼女の目を見開き、体が硬直する。


「ん、んぅぅー!!」

(お、美味しいじゃない!!)


 絶品だった。

 今まで食べてきた物を取り敢えず腹が満たされれば良い物とするなら、これこそが真のグルメであった。一口、口へと放り込めば体に電流が伝わるかのような痺れが脳より発せられた。

 その反応を見て、ヴィレスタ達は安堵の空気を漏らした。


「気に入ったようだな、マダレール」

「は、はい。この様に大変美味しい料理は生まれて初めてでございます!! 本当に美味しいです!!」


 ヴィレスタの言葉に即座に感想を述べると、ここからは彼女のターンだった。

 一口料理を口に入れればあっという間に料理が無くなる。


「あっ、メイドさん、次はあれをお願いねー。すみませーん、この飲み物お代わりくださーい!」


 今までのレイシェルからは想像出来ない態度に、ヴィレスタとアルメナは元より執事や侍女に女中たちは揃って唖然としていた。

 しかし、その乗りにしっかりと合わせられたのは意外な事にカナタであった。


「お姉さん、これも美味しいよ!」

「本当!? 一口頂戴ね!」


 マナー違反とされる人から食べさせられる行為も平然と行う。その乗りと行為は一同を唖然とさせ、言い出せる雰囲気ではなくなってしまう。


「うーん、本当に美味しいわね! カナタ様のチョイスは流石ね!!」

「でしょ。僕これでもグルメなんだよ!!」

「グルメの意味が分からないけど、カナタ様が進める料理はどれも外れないのが良い所ね」


 すでに無礼講と化している二人の関係に、誰もが口を挿めず黙々と両親は料理を食し、使用人たちも只管自らの職務を全うする。


 それからも二人の独壇場と化した食堂は、凄まじい勢いでテーブルに並べられた料理の数々が姿を消している。主にレイシェルが食べ尽し、カナタが次々に料理を指定していく。傍から見れば接待役として完璧な役割を果たしているといえるだろう。


 その事で、一度テレサがカナタを窘める一幕があったが、それも何故か失敗に終わる。

 しかし、これには理由があった。

 二人が最初に口にした肉料理、この下味の段階で度数の高いアルコールが大量に使用されていたのだ。


 本来この料理は出てくる予定ではなかった。しかし、カナタが美味しい料理を望んでいると、デインス料理長が耳にしてしまい気合いを入れ過ぎた結果であった。

 そして、不運は重なる。料理長は常に厨房で料理を作り、部下に指示を飛ばしている為食堂へは姿を現さない。その為、誰が料理を取り分けているのか知らなかった事だ。


 彼は事前に数名の女中に肉料理は後で食べる様にと注意喚起を行っていたのだが、その詳しい理由を述べていなかった。そして最後、注意喚起がなされていたのは女中の間であり、カナタの専属侍女へは伝わっていなかったのだ。


 その結果、酒に耐性の無い二人が物の見事に酔っぱらってしまったのだ。

 後に料理長はその事を全使用人を束ねる執事のオイレンに叱責を受けるも、カナタは美味しい料理を作れる人だと認識しているためクビになる事はなかった。






 暫く飲み食いが続き、少し安定した空気に変わった頃、食堂内の雰囲気が一変する。突如物音一つ聞こえない、時間の停止した時を迎えたのだ。それに気付いたのはカナタだけであり、同じくして声が聞こえてくる。


「ふむ、だいぶこの世界のカナタはんと融合してらっしゃいますな!」


 関西風のイントネーションで話す声が突如カナタの耳に届いた。その発生源を探るべく、彼は周囲を見渡す。しかし、その主は見つからない。おまけに全員の動作が止まっている事に気付かされた。


「だ、誰!?」

「あー、あーそげな仰山と辺りを見渡さんでもワテはここにいてまっせ!」

「どこだ!?」

「ここや、ここ。ほれ、カナタはんの真下やでー」


 その声を手掛かりにカナタは視線を床に向ける。そこには怪しげな商売を営みそうな小さなおっさんが手を振っていた。

 おっさんは器用に椅子を上り、テーブルへと到達すると、近くにあった肉料理を食べながら話し始める。


「いやー、待ちましたわ! カナタはん、ああ此方の小僧ですが、大層粘られましてな、漸く彼方はんとの融合を完了させられそうなんですわ!」


 軽快な口調でカナタに話すも、反応が見られずおっさんは首を傾げる。そして、しばらく思案すると一つの答えを導き出す。


「ああ、すんまへん。ワテ自己紹介まだでしたわ。ミョーロと申します、以後よしなに頼んますわ」

「は、はぁ……」


 しかし、カナタの理解はまだ追いつかない。彼がこの世界の住人でない事は何となく理解出来ても、それが何の関係なのか見当つかなかった。


「そうでした、彼方はん。ワテが執行者だと言えば理解出来ますか?」

「執行者…… あっ!?」


 その瞬間、彼方はあの二人の顔を思い出す。


「その顔は思い出したってことやな。カエナ・オーベットの申請により、山本彼方を転生させる。これが正式に受理されましてな、ワテが監督を任されたんですわ」

「監督、ですか?」


 カナタの言葉に彼は大きく頷いた。


「そうです。まあ、この世界で彼方はんが無事に馴染めるよう見張るっちゅうのが主な役割ですわ」

「つまり、俺のサポートの様なものか?」

「サポートでっか…… 彼方はんが想像してはるもんとはちゃいますわ。監督とはいえ、基本放任主義を採ってます。つまり、彼方はんがどうなろうと知ったこっちゃない、と言う事ですわ」


 その発言に彼方は内心でむかっ腹が立つが、表面には出さない精神力は備わっている。

 しかし、それを刺激する様にミョーロが話し掛ける。


「おお、凄い殺気ですわ。彼方はん、まずはその殺気を収めワテの話に耳を傾けてはくれへんやろか?」

「こうさせたのはあんただろ?」


 子供の声で凄もうとも大した迫力はなく、どこから出したのか日の丸が描かれた扇子を取り出し、頭を一度叩いて「一本取られました」と発言し余計に彼を苛立たせる。


「まあ、そうなんですけどな、まあええですわ。そのまま聞いて下さい。現在、申請者カエナは規定違反で拘束されてます」

「拘束? いや、そもそも俺にはその事は全く分からないから」

「そうですね。まあ、そこから先が彼方はんに関係しますから、よう聞きや」


 そこでミョーロは話を止める。


「カエナはんのカナタはんへの申請自体は問題なかったんや。しかしな、サヤ・マーキャロット元執行者を伴っての転生が大問題なんや。まあ、それは此方の話で済むことなんやけど、その煽りをカナタはんが受けてしまうっちゅう訳や」

「よく分からないが、具体的に俺はどうなるんだ?」

「そうやな、簡単に言うと命を狙われる、ってことやな」


 ミョーロは重要な事柄を然も当たり前にある様に話した。それに対し、カナタはどうにもその話に実感が伴っていない。


「命を狙われる。それはつまり、この世界で俺は死に易いという事か?」

「うーん、そもそもこの世界の命は非常に軽いんでっせ。病気になればあっという間にポックリ逝ってまう。怪我をして稼ぎが無くなれば死を選ぶしかなくなる。戦争も各地で…… まあ、これらはあんさんの前世でも行われてきましたな」


 ミョーロは説明しつつ、食事に手を付ける。その折、味について感想を述べるなど緊張感の欠片もない。

 その態度にカナタは再び苛立つ。


「ああ、怒らんといてぇーな、カナタはん。ワテも詳しい話ができひん事に心を痛めてんのやで」

「具体的には言えないけど、俺は生きていく上で危険が常に付き纏う、と言う事で良いんだな?」


 カナタの問い掛けにミョーロは大きく頷いた。


「それで間違いあらへん、まあこれはあんさんの頑張り次第や。ワテは加勢できひんけど、しっかり監督させて貰います。説明になってへんとツッコまんといて下さいね。さて、何か質問は?」

「当面、俺はどうすればいい?」

「好きなように生なはれ。この世界は魔法が在りますさかい、それを極めるもよし。この家は貴族家でも由緒正しい、それを活かすもよし。あんさんの選択一つでどうとでもなる世界、それが第二の人生や」


 ミョーロが話し終わると突然アラーム音が鳴り響く。その音を聞いて彼は額に手を当てる。


「あちゃー、話のええところでタイムアップや…… カナタはん、残念やけどワテはこれでドロンさせて貰いますわ」

「ドロン……?」


 人差し指を重ねて示した仕草にカナタは首を傾げる。


「そこに喰い付かんといて! ワテから言える事は、後悔の無い人生を送りなはれ。カエナはんが態々与えてくれた第二の人生を無駄にすることなく、満足して死になはれ」

「わかった。それと、忠告有難う」

「気にせんといて、これはワテの仕事やさかい。ああそうや、肝心な話や、サヤ・マーキャロットを探しなはれ、名前はサヤのまま。あとこれや」


 ミョーロが手をカナタに翳すと、淡い光がカナタを包み込み瞬く間に消える。


「この世界の魔法は精霊が関係する。今授けたんは精霊と出会い易いようにする物や。猫にマタタビとでも言えばええんかな。まあ、話は以上や、ほな!!」


 小さなおっさん、ミョーロが片手を上げて別れの言葉を述べた瞬間、ガラスが砕け散る様に空間が四散する。すると、皆で食事を摂る時間軸へと戻ってきていた。


 ご一読頂き有難う御座いました。

 方言がおかしいとのツッコミはお許しください……

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