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誤って殺されたのだから、第二の人生を歩ませて下さい……  作者: 今野常春
第二の人生はエラーが発生していた。
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第零話 死して第二の人生へ

 全施設で五月蠅いほどにサイレン音が鳴り響いている。その音に合わせ、赤色灯が忙しなく動き、さらに人も合わせて動き回っている。

『緊急警報、繰り返す緊急警報、システムに異常発生。繰り返す……』

 機械音で何が起こったのかを告げるが、そこには危機感が込められていない。だが、人々は何が起こったのか直ぐに察知し、只事ならざる事態だと認識していた。


「急げ! 大至急地球で働く者へ『即時執行停止』の通達だ!!」

 オペレーターが多数集まる管制室に於いて、この事態に対する危機感は最高潮を迎えている。その一人、責任者と目される男が全オペレーターに指示を与えていた。

「しかし、執行停止は評議会の許可を得なければなりません!!」

 その時一人の女性オペレーターが指令に対し反論を行う。何しろ、この命令は違法行為であり、全員が連帯して責を負うと定められていたからだ。


「時間が惜しいのだ! 全責任は俺が取る。だからお前たちは執行者へ直ちに命令を実行せよ!! 犠牲者を増やしてはならない!!」

 男の剣幕に押され、今の会話がしっかりと記録され、証拠となっていることを確認した全オペレーターは彼の指令を実行に移す。

 到る所で執行者と呼ばれる者とコンタクトを取り、即時停止を命じていた。

 それを見た命令を出した責任者の男は溜まっていた空気を吐き出し、崩れるように椅子に腰かける。


「ふぅ、これで一安心だ。なんとか犠牲者を少なく出来るだろう……」

 その後、何とか事態は収拾する。犠牲者は彼の予測した通り、出たものの数からいえば最少と判断される。そして、彼に対する責任だが、これは不問とされた。その理由は前出の通り、犠牲者を最小限度に抑えたからである。それ以上にこれを功績として称え、緊急時の模範として認定される。


 と、無事に危機回避が行われていたその時、不幸にも犠牲者となった者が存在する。

「ふんふんふーん!」

 男は歳柄にもなく鼻歌を歌い、街中を歩いている。周囲の人々はその様子に対し意見が分かれていた。一方は機嫌が良いのだな、とする者たち。そしてもう一方はこいつ大丈夫か、といったものだ。

 だが彼が耳にしているイヤホンを見て、『ああ、音楽を聴いているのだな』と結論付けるのである。


 だが、それは誤りであった。彼は単に話し掛けられたくはないとデバイスに差し込んではいないイヤホンを装着していただけだった。

 ではなぜ、上機嫌に鼻歌を歌っていたのか、それはつい先ほど卒論を提出し、解放された気分を味わっていたからだ。そして、社会人としての新たな生活に胸をときめかせた結果、思わず鼻歌を歌ってしまう状態になったのだ。


 あー、これで俺は卒業を待つばかりだな。卒業旅行などと言う高等イベントなどボッチの俺には関係がない! さて、取り敢えず飯でも食うか!!

 口に出すと可笑しな人と思われるため、脳内で考えつつ、言葉を浮かべるのが俺のスタイルだ。

 そして、俺はファストフード店へ足を向けた。


 その後、腹を満たした俺は家路に着く際、ふと大きな公園に足を向けた。僅かに曇り、寒さが身にしみた為、缶コーヒーを手にベンチに腰掛ける。

「ふぅ、年末も年末だな……」

 あと二日でクリスマスを迎える。そうするとあっという間に大みそかだな。

 俺はそう考えると一口飲み込む。体が温まり、口から吐き出された息が白く見える。

「一度実家に帰らないとなー」

 俺はそう呟くと何時降るか、と予想しなければならないほど暗くなる空を見上げた。


「見つけたわ。あの人間ね?」

 男がベンチに座り、思い詰めた様に缶を握りしめているわ。間違い無い、あの人が……

「見えーるくん、あの人間で間違いない?」

 私はブローチ型に(しつら)えたデバイスに声をかける。すると、人間味のある声で返事が返ってくる。

「ヤマモトカナタ、二十二歳男性。間違いありません。残り、十分と五秒です」

 私は全幅の信頼を寄せている執行者携帯必須の『ごっそり見えーるくん』から情報を得て確信する。


 よし、これで十人よ。ようやくレベルが上がり、正式な執行者へ一歩近づくわ!

 私は気合を入れて、暗そうなボッチに引導を渡すべく武器を異空間より引っ張り出す。

「ええっと、狙いは…… よし」

 スコープで狙いを付け、しっかりと弾が心臓を捉えるように微調整を行う。

「今日が無風で助かったわ。見えーるくん、時間カウントよろしく」

「承知しました。寿命カウント一分前…… 三十秒前……」

 私はじっとカウントダウンを聞き入りながら対象の心臓一点に狙いを合わせ続ける。


 引き金に架かる指が僅かに震えるのを感じる。これは私の緊張から来る癖なのだそうだ。

「十秒前……」

 胸元からようやくカウントダウンを開始する声が聞こえてくる。

「五」

 ドクンッと鼓動が聞こえてくる。

「四」

 スコープをもう一度確認する様にまじまじと覗く。

「三、二」

 心を落ち着け、ゼロを待つ。

「一…… 零」

 そして、私は引き金を引いた。


 無音で弾が飛び出し、それは寸分の狂いなく男の心臓へと吸い込まれた。そして、箱と魂の分離を確認する。

「よしっ!」

 私は無事、心臓に吸い込まれた弾丸を見て思わず声を上げた。これで、私はレベルが……

「あれっ? 見えーるくん、どうしてレベルが上がっていないのかしら?」

 おかしい、本来レベルが上がれば音声が聞こえてくるはずなのに……


「エラー、対象エラーです」

「えっ?」

 私はその言葉を聞いて頭が真っ白になる。エラーとは非対称に弾丸を撃ち込んだ事、すなわち誤射を意味する。それは執行者になる者としてレッドカードと同様の言葉であった。

「ウソでしょ……」

 目の前では男がベンチの背にぐったりと体を預け、一切動くことはない。だが、その男よりも今自らが犯した事実に体が寒さを覚える。






「遅かったわ……」

 私が現地へと駆け付けた時、既に間違った情報の基に対象者としてあの子が執行を行っていた。すでに非対象者として情報が戻されている以上、あの子は重罰に処せられてしまう。

 私は男に構わず、あの子の下へと移動する。


「サヤ!」

 私が後ろから声を掛けると涙を流し、顔面蒼白になっていた。

「カエナ!! 私、私!!」

 そのあとの言葉が続かない彼女を私は抱きしめる。体は震え、してしまったことの重大さを理解しているだろう。全く以て可哀そうでならない。

「喋らなくていいわ。今は大人しく、心を落ち着かせなさい」

「でもっ!」

 私は声を上げて抗議しようとするサヤをさらに強く抱き締めた。


 こうして言葉と態度で彼女を落ち着かせた私は、もう一つやらなければならない仕事があった。

「サヤ、すまないけど私はあの男の所へと行くわ」

「えっ!? あっ、そうよね。放置してはいられないわね……」

 その際、若干顔色を悪くするサヤだが、私にも時間が迫っている。彼女もそれを理解し、私は人集りが出来てしまった場所へと移動する。


 その場は騒然とし、到る所で人間がスマホや携帯で映像や画像に納めていく。その中で警察や消防に連絡を行う者も見受けられた。

 私はその人混みを縫うことなく(・・・・・・)、直進して対象者への接近を行った。

「ええっと、どこに…… ああ、居たわね」

 若干体が薄くなって狼狽する男を私は発見する。


「あれ、何で、何でみんな声が? それに物に触れられない!?」

 やはり、狼狽(うろた)えているわね。仕方がないことだけれど。私はすぐに男に声を掛けて近付いた。

「ねぇ、ちょっと! そこで困っている人間の男!!」

 私が声を張り上げると男は私に気付き、ホッとした表情でやってくる。面白いわね、状況が理解出来ていないから人を避けているわ。


「よかった。あのー」

 私の下へやってきた男は心底安心したように息を吐き出した。ごめんね、これから真実を告げなければならないのよ…… 私は男が何かを話そうとするのを遮り、話し始める。

「申し訳ないけど、今すぐ私の後に続いて!」

 私は有無を言わさず、男の左腕を掴む。その事に今まで触れなかったという事態を思い出したのか、男は体を強張らせる。


 だが私はその事を気にせず、急ぎサヤの待つ場所へと移動する。

「えっ!? えええー?」

「黙って、今は私と一緒に移動することだけを意識しなさい!」

 その一括に男は一言返事を行うと口を噤んだ。何よ、私はそこまで怖くないわよ!!

 などと、私たちは異なった思いを抱いたままサヤが待つ場所へと戻った。


「あっ!?」

 私たちが到着すると、彼女の第一声は非常に小さく弱々しいものだった。仕方がない、私の後ろには息が切れるはずのない、自らが引導を渡した男が立っていたからだ。

「ほら、貴女も執行者を目指すのならば一度のミスを引き摺らない! 立ちなさい!!」

 私は彼女を一喝した。何しろここからが本番なのだ。絶対にサヤを立派な執行者にする使命が私にはある。


 私の言葉を受けて、力なく彼女は立ち上がる。

「さて、それでは邪魔が入らないうちに場所を変えるわ」

 私はそれだけ述べると二人の手を取り頭にその場所を思い浮かべた。その場所真っ白い空間であった。


「えっ、ここは!?」

 やはり驚くわよね、なにしろこの男は人間なのだから……

「あなた、ヤマモトカナタよね?」

「えっ!? は、はい…… どうしてその名前を?」

「それはね、私たちが執行者だからよ」

 今度はキョトンとして首を傾げたわ。


 そして私は簡単に説明する。

「一度しか言わないわ。私たち執行者という者たちは寿命に至った、あらゆる生物の魂を抜き取り、然るべき場所へと移送する事を生業としているの。それでね、ここからが重要な話になるわ!」

 私が話を区切ると男は喉を鳴らした。死んだって理解出来ていないのが良い証拠ね。

「ヤマモトカナタ、貴方はあの時点で死んだのよ。このサヤの銃弾によってね」

「はっ!? いやいや、何を言っているんだ? だ、第一俺はこうしてあんたたちと話をしているじゃないか!!」


 はぁ、やっぱり理解出来ないわよね。本来なら死ぬ筈ではないのだから……

「なら聞くけど、どうしてあそこにいた人間は貴方を無視したのかしら?」

「そ、それは…… 俺にコミュニケーション力がなくて……」

 弱い、あまりにも情けない言い訳ね。

「それだけで無視される? あの場でぐったりした貴方と同じ人が話し掛けたら普通驚くでしょ?」

「ぐっ、それはそうだけど……」

 あら、ようやく理解できたのかしら?


「いい、貴方は死んだ。死んだのよ。先ずはそれを受け入れなさい!」

 あら、愕然としてしまったわね。でもこれは彼がどうしても通らなければならない試練なのよ。本来この役目はあの糞ジジイだったはずなのに……

「そんな、何でだ! 何で、俺は死ななければならなかった!!」

 まあ、そう怒るのも無理はないわ。でもサヤには酷な時間ね。だけどこれも良い経験になる。


 その後も男の怒りが含まれた抗議の声が続いた。そして、頃合いを見て私が声を掛ける。

「結論だけ話すわ。本来なら貴方は死ぬ筈ではなかった」

 そう宣告したとき、サヤの体が強張る。それと同じくして男も固まったわね、そして目をつり上げる。

「ふざけるな! 死ぬ筈ではなかった!? 何を平然と言っているんだ!! 俺は死んだんだろ?」

「ええ、その通りよ。すべてはこの子、サヤ・マーキャロットの放った銃弾の責任」


「銃弾? そういえばそんな話をしていたな。 だが、俺は全く痛みを感じなかったぞ?」

 だけど体が覚えているのね、自然と手を胸元に置き擦り始めていた。

「当然よ。この銃弾はね、生き物の体、私たちは箱と呼んでいるわ。それと魂を分離させる為に銃弾が用いられるの。痛みがある方がおかしいのよ」

 それは死ぬ瞬間、事故などの影響による肉体的な痛みなのよ。

「人間のみならず、生き物には必ず寿命がある。それは小さな物から大きな物まで平等に訪れるわ。私たちはその瞬間に魂を抜き取るのよ」


 たとえば人間の目に見えないウイルスや微生物などから、星、惑星などもね……

「なるほど…… それで、俺はどうなる?」

 あら、大人しくなったわね。いや、随分と達観しているのかしら。動揺の色も見えない。どう言うことかしら?

「本来どのような事情であれ、死んでしまい魂になった生き物は私たちが移送しなければならない」

 そう話すと男は頷き、サヤは肩を落とす。

 そこで私は『でもね』と言葉を続けると、明らかにサヤに変化が見受けられた。


「今回はとてもイレギュラーな事態に見舞われ、結果として貴方が死んでしまった。その根本が、私たち執行者が持つこのデバイス『ごっそり見えーるくん』よ!」

 私もサヤ同様ブローチ型の物を採用し胸元に付けてある。それを見せ、性能を詳らかに説明する。こんなこと、魂でも貴方以外話はしないわよ。

「ネーミングセンスは残念だけど、確かにすごい代物だってことはわかった。でもさ、その説明だと俺はそこの人に殺されることはないだろ?」

 話はしっかり聞いて理解しているようね。


「そうね。しかし、見えーるくんの中央管制室のサーバーに異常が発生しなければ、の話よ。本来貴方は九十八歳まで生きる予定であった。それは正常に復旧した今なら分かる情報よ」

 私がそう述べるまでもなく、サヤが自らの見えーるくんで確認を取る。

「ヤマモトカナタ、二十二歳。九十八歳と二日で亡くなります。しかし、エラーにより情報は凍結。事後調査を求めます……」

「ああ、そんな……」

 しまった、今のサヤはちょっとしたことで崩れてしまう。


 でも今は彼女には構っていられないわ。

「今回わね、本当にこちら側、執行側の不手際。いいえ、それで片付けられる問題じゃない事は重々承知している。だからと言ってあの状況で蘇生させられない。一度(ひとたび)箱と魂が離れてしまえば二度と繋ぎ止める事が出来なくなるからよ」

 そこまで私が話すと彼は若干肩を落とす…… 事はしないわね。なんで?


「それじゃあ、何ですか。新たな人生でもご用意いたします、的な話ですか?」

「あら、よくわかったわね。なら話が早いわ!」

 よかった。これで一々まどろっこしい説明は省けるわね。私は一度咳払いを行い、場を改める。

「貴方が言った様に第二の人生を歩ませる用意が有るのは事実。但し、この世界ではないことを理解して貰いたいわ」

 我々の責任だが、二度と同じ人生同じ場所での生活は営めない。それが鉄則なのよ。


「ええ、俺もその方がありがたいです」

 えっ、今何て言ったのかしら? ありがたい……

「ちょっと待って、今の人生に未練はないの?」

 あの怒り様からは想像出来ない言葉と態度だった。いったい何が、彼を冷静にさせているのかしら。

「うーん、確かに未練を、と尋ねられれば僅かにありますよ。でもね、よく考えれば面白みのない人生だったなーってね。ならリセット出来るならそちらを選ぼうかなって」

 何その理由? たったそれだけの理由で納得しちゃうの? 


「少し軽過ぎる気もしないでもないけど…… まあ、本人が納得しているのならいいのかしらね」

 私は無理矢理納得しヤマモトカナタに第二の人生についての説明を行う。するとどうだろうか、次第に彼の目が輝き始めたではないか。

 そして、話せば話すほど、彼の気持ちが興奮し始めている事に気付く。

「ねえ、此方の勝手な都合で話を進めているけど、本当にそれでいいの?」

 今の生活水準に比べれば遙かに劣る世界よ。にも拘らず、どこに魅力を感じるのかしら?


 かくして説明を終えた私は敢えて尋ねてみる事にする。

「ねえ、今の話のどこに魅力を感じるのかしら?」

「えっ、だって魔法が使えるのでしょ? それに貴族、王国? それってファンタジー世界じゃないか!!」

 うわっ、何突然声を上げて興奮しているのよ。

「ええ、確かにそうだけど。本当に良いの? 今の生活水準からしたら何世代も劣る世界なのよ?」

 私もこの地球を担当する執行者よ。だから格差が存在することも理解しているが、彼の生きる社会はその中でも物に溢れ、便利と呼べる場所だ。


「確かに今の生活を思えば不便に思うこともあるかもしれませんよ。でもね、唯それだけですよ」

 はっ、生活が豊かになることがそれだけ? 何こいつ、頭おかしいのかしら?

「いやいや、おかしいでしょ! 生活の水準を下げてまで目を輝かせること!?」

「まあ、人それぞれでしょ。食べるものに苦労しない、水も使いたい放題。衣食住で困ることはない。でもね……」


 ああ、なるほどね。物は豊かになっても心が伴わなかったってことか…… なんて贅沢な! だけど、それも仕方がないのかもね……

「貴方、どこかで納得していないのね」

「そうなのかも知れませんね」

 そう言うと男はポケットから何かを取り出す。これはスマホだったかしら? 何で物を取り出せるの?


「これで大抵の事が出来る。連絡を取り、情報を集めるなんてね。でもそれがあまりにも簡単過ぎてどこか苦しい思いを感じていたんですよね。だから、若しかしたら丁度良かったのかも知れません」

 彼が話している表情はどこかスッキリとしたものだった。そして私は彼にこれ以上何かを尋ねる事はしない。

「そう。じゃあ、話はこれで終了よ。それでね、サヤ」

「な、何かしら?」


「次は貴女よ。今回の件について、既に結論が出ているわ」

 私の言葉に彼女は体を強張らせる。次に出てくる宣告がある意味で死刑判決に等しいのだと予想しているのね。

「サヤ・マーキャロット候補に告ぐ、今回の事案について最高評議会は以下の決定を下した。一つ、中央管制室に於ける障害により、誤情報の基に執行した事は不問とする。以上よ」

 ふふ、呆けた表情を浮かべているわね。


「えっ、それじゃあ私は?」

「ええ、執行者としての権利を剥奪されることはないわ。でもね」

 これは信賞必罰が必要と話していたけれど、反対派の声を抑えるための処置よね、これは……

「サヤは彼に付いて人間として新たな人生を送ってもらうわ」

「へっ……?」


「彼は新たな人生を送る。そこには幾つかの特典が与えられ、その世界の人間に比べ幾分か上位に入る様に設定がなされるわ。これは先ほど説明したわね。それに加え、貴女が向かうことでより強化される事となる。これらを含めて彼への贖罪とするのよ。わかったわね?」

「わ、わかったわ……」

 彼女も不問とされてどこかシコリがあったのね。ホッとした様な表情を見せているわ。


「では、これより…… 二人を新世界へ送るわ!」

 私は与えられた権限を行使し、二人の魂を操作する。

「わっ!?」

「キャッ!?」

 二人は突然のことに驚くけれど、既に転送の儀式は開始されている。私は一切気にすることなく続ける。


 それから一分ほど、必要な手続きを行い無事承認が見えーるくんより発せられる。この時は中央管制室に繋がり、二人が転移する様にデータが書き換えられたのだ。

 二人を中心に地面に円が出来る。そしてカプセルの様に彼らを包み込む。

「これで完了よ。ヤマモトカナタ、今回の件本当に申し訳なかったわ。私たち執行者の不手際、最高評議会一同に代り改めて謝罪を申し上げる。そして、用意した第二の人生を謳歌してもらいたい。サヤ、貴女も人間として、頑張ってね……」


「分りました」

「わかったわ、ありがとうカエナ……」

 二人は一言述べると姿を消す。

「ふぅ、これで終わったわね……」

 私は全てをやり終えた事で溜まっていた空気を思い切り吐き出したのだった。


 ご一読頂き有難う御座いました。

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