悪役が望むのは
目を覚ませば何とも言えない場所。なぜか知らんけどぶん森の中。たぶんと言うのは周辺の木々がなぎ倒されてる。マジ何これ。しかも身体痛いし頭が痛いし。意識が朦朧とする。すると遠くから声が聞こえる。
「……様?………様!!……りしてください!」
誰かの声。誰かの顔。しかしなぜか見たことがあるのは気のせいだのうか?だが、それはそうと
「怪我……人を……そんな……強く揺するな……よ……」
バタンキュー
なぜか助けられたと思った人にある意味トドメをさされ俺の意識はまたもやブラックアウトした。
★★★
次に目を覚ますと今度は真っ暗な世界。まさに僕のお先真っ暗………。いや、笑えないよ。
「自問自答してるのに悪いね。」
突如の声に僕は振り向く。底にあるのは黒髪青目の少年。またもやさっきの声を掛けてくれた人と同様の感覚。さて、いい加減この正体は何だろうか?と言うのを解き明かそうか。自分で言うのもあれだけど誰かに似てると言うことは絶対にない。知り合い何てあの子以外いないし。てことはそれ以外。他に顔をで見たことがあるとすると…………ゲームかラノベ。んで思い出そう。
1、2、3、4、5。あー。思い出した。『空の上の君に』って言うギャルゲーだった。シナリオを簡単に説明すると1人の青年が魔法学院に来ます。スペックは魔法以外完璧超人。んでヒロインがいてレッツ攻略。メインヒロインは確か王族の次に偉いはず。これが空の上の理由だな。自分よりはるか高見の存在。他は同級生、先輩、後輩などなど攻略出来たのは片手の範囲だったがキャラクターが多く可愛い。しかも色んな属性の子が出てきたはずだ。攻略対象じゃなかった子達は同人誌などなどで描かれたりして人気になった。無論その前にイフストーリーとしてまた出された。
さて。ゲームの設定語りは今はこれでいい。問題点は今ここに立っているのが主人公ではなくその逆である。つまり悪役と言うこと。これがどういうことかは……まあ、何となく分かるよ。
「状況分析は終わった?」
「うん。終わったよ。君が僕呼んだんだよね?」
「そうだよ。この僕、フェイル グランドールが君をこの世界。君が言う所のゲームの世界に呼んだ」
「何で僕にとってここがゲームの世界とわかった?」
「僕がさっきの世界で魔法を使って君をあそこに呼んだとき君の記憶が入ってきたと言えばいいかな?」
「悪役なのに天才かよ。それで良いのか?」
「わかってるのに聞くのか?越えるべき壁が天才だからこそ主人公に箔がつくものだろう?主人公と逆だからこそ悪役は間違っている。悪役は基本的にそうゆうものだとおもうよ。」
「はあ、やっぱり記憶だけでなく精神とか何やら。僕という存在そのものの記憶が流れたって事ね。」
「そうゆうこと。ようこそと呼ぶべきかな。」
「勝手に呼び出しといてどの口が言うのやら。」
「君という個人を特定して呼んだわけでないのだけどある意味記憶を見てこの人か。と言うのは納得したよ。」
「どういうことだ?」
「んじゃ、聞いてもらおうか。悪役の昔話を。
僕は昔から期待されその期待に答えた。何もかもをそつなくこなし天才と言われるほどにね。でも僕はそこに価値を見いだせなかった。確かに何も出来ないよりかはいい。そんな事になったら自分の立場が危うくなる。君の知っているとおり王に継ぐお偉いさんの長男が能なしじゃあね。
でも誰も僕を見てくれない。天才と良家の長男という色眼鏡を通してしか僕を見ない。誰もフェイル グランドールという人間を見ない。全くイヤになるよ。訳も分からん嫉妬、敵意、策略心。いろんな物を向けられた。大人から子どもにもね。
でもある人は違った。ある日パーティーに行くことがあった。基本的に僕はパーティー以外には外に出ないんだよ。危ないからって。いやいやって、少なくともそこの守衛よりは強いって言いたかったけどもう言うのも無駄だしね。だから言うのが無駄なら行動しよう。
そう考えて魔法使って抜け出してそこであったのが、僕と並ぶ位のリリア フラインドールと平民のカイン アススタルト。わかりやする言うとメインヒロインと主人公。言い方が悪いけど僕は平民だから下とみないよ。んで、僕が抜け出したパーティーにもリリアは参加していた。でも抜け出した。その途中に僕にあって連れて行った。やけに手慣れていると思って聞いたら常習犯みたいだった。その脱走先に出会ったのがカイン。カインとリリアは友達みたいでカインがこの人は?って言うのに共犯と答えるのはどうだと初対面なのにこいつはおかしいと思った。しかもカインがなら問題ないってどういう理論だ。こいつもおかしい。
でもおかしいからこんなにも周りの人とは違い何も感じ無いのか?とも思った。これが普通なのか?とも思った。でもある意味始めて自分を見てくれる存在が出来た。そう思ったんだ。でも出会わなければ良かったね。経営が傾いていたリリアの親はこれを気に家の援助を得ようとした。そのために僕とリリアを許嫁にしてもらった。後はほとんど君の知ってるとおり。リリアとカインの奴をいじめ抜いて正体露見、リリアとカイン結婚で処刑コース。処刑の結末は予想外だった。
後ほとんどって言うのも君なら分かると思うよ。でも、ヒントを上げよう。確実性に欠けるからね。蛇足とは思うけど。君が来たことに納得した理由。それは君自身。正確には君の最も大切な記憶。そこを思い出せばわかるよ。」
「本当に蛇足。すぐわかったよ。それで何を望の?」
「あら、やっぱり何か言いたいのわかっちゃう?もしかして内容もわかる?」
「まあね。要するに僕と君は似てるようだ。」
「それがわかってるなら大丈夫かな。」
彼は歩く。まるで交代とでもいうかように。
「君を助けた女の子によろしく言っといて」
「気が重いな」
「後は頼むよ」
「逃げたくせにどの口が。」
「でも気持ちはわかるよね。」
「そりゃわかる。」
言葉を交わすごとに距離が縮む。
「最後に確認をしよう。」
「確認?」
「そう、僕たちが望もの。」
「いいよ。」
これはある意味答え合わせ。
「僕達の望もの。」
手を挙げた
「それは」
振り抜きパンという音と共に重なる2つの声
「ハッピーエンド」