第三話 byめだまのおやじ
「あ、ごめん。それは困る。」
不思議でたまらなかった。なぜ高瀬はこれほどまでに冷静で落ち着いていられるのか。
「でも、こうでもしないと2人きりになれねーだろ?」
そして私は気づいた。意外にも、彼はロールキャベツ男子だ。
彼はいつも授業を真面目に受けている努力家だ。なのに発表はしない。休み時間はいつも本を読んでいるか勉強をしている。部活も、エースとまでは行かず縁の下の力持ちって感じで……とにかく前に出るタイプではない人。
なのにどうしてこうも人が変わったように接してくるのだろうか。
子猫ってなんだよ……。私はそう見られていたのか?
……ってそんな場合じゃない。
「おい、大丈夫か?」
って大丈夫なわけあるかー!!!!!
「えーっと、あ!そういや用事が……」
言いだすタイミング悪すぎか……。
「嘘ついてるのバレバレですけどー」
とバカにしてきた高瀬。
くそ、なんでこんなにも差があるんだ。こいつ、ナルシか?
……と思いつつ…
「嘘じゃないよ。」
と言いながら起き上ったとたん…私は頭が真っ白になった。
体に衝撃を感じて、気付けば背中には安心感があった。そして唇にあたる何か……温かいもの…んっ!?
ハッと我に返った。何かが起きてからどれくらい時間が経ったかはわからない。が、私はとっさに高瀬の体を押して部屋から飛び出した。
外はまだ雨だった。せっかく乾いた体が台無しになるくらい無我夢中で雨の中を駆けた。
寒くはなかった。
ただ自分は今何を考えているのか、頭の中は真っ白のままだった。
雨のせいで、泣いているのかもわからない。
革靴を泥まみれにしながら私は思った。
あんな展開になるなんて思ってもみなかった。
だからこそ混乱して、でも嬉しくて、でも……。とにかく考える時間が欲しかった。
それなのに彼は――
Written by めだまのおやじ