激闘!!大黒狼!!!
リルを形状変化をさせてすぐに、大黒狼と俺、来島隼人の戦いが始まった。
先に仕掛けてきたのは大黒狼だった。
大黒狼の周りに魔力が集まったかと思うと、周りに黒弾を出していた。
数は10個。
大黒狼は10個の黒弾を俺目がけて飛ばしてきた。
「シフトD6!!」
俺はリルに指示をだす。
「各個守護!!」
6枚の盾はそれぞれで障壁を発生させ、黒弾を防ぐ。
これが、六花の盾の能力の1つ目、「花びらの守護」である。
1枚1枚の盾が障壁をだし、各個で攻撃を防ぐ。
細かい多数の魔法を相手にする時に非常に便利な能力なのだ。
それをみた大黒狼は、次の行動に移る。
2m50cmを超える巨体が、高速スピードで突っ込んできた。
その行動を見て俺は、冷静にリルに次の指示を出す。
「シフトD4!!残りの2枚は待機だ!!」
(了解です。シフトD4を適応するです。)
俺が銃を構えているうちに、6枚の内4枚の盾が俺の前に並ぶ。
残りの2枚は俺の周りを浮遊している。
「集結!!」
4枚の盾が集結して、4枚の花びらで作られた、花のような盾ができる。
「シールド展開!!」
命令をだした瞬間、花のような盾の前に魔力が集まり、大きな障壁ができた。
大黒狼は障壁を恐れてスピードを落とすことなく、突進してくる。
しかし、障壁は揺らぐどころか大黒狼を吹き飛ばした。
六花の盾の能力2つ目の、「花の盾」である。
各盾を1ヶ所に集結させることで、花の形をした大きな1つの盾として機能させる。
盾の数次第でその防御力は変わり、最大枚数である6枚の集結を行えばそう簡単に破られない、最高峰の盾となるのである。
俺は吹き飛ばした大黒狼に狙いを定めて、左右2発ずつ撃った。
綺麗に奴の体に命中する。
大黒狼は地面に数回体を打ち付けて、最後は壁にぶつかった。
あの巨体がすごい勢いで転がってぶつかっても、壁はビクともしていなかった。
このクロイス区には、頻発して魔獣関連の事件が起こるための措置として、各建物や公共施設、道路などには結界を張るようにという条例が存在するのである。
その結界のお陰である程度の戦闘行動を行っても、街が壊れたりすることがないのである。
さて、すごい勢いで吹き飛んで行った大黒狼だったがなんということはなく立ち上がる。
「すげぇ盾だな。確かにあの嬢ちゃんはおまえにとっての切り札のようだな。しかし、いかに素晴らしい盾を持っていても攻撃力不足だとジリ貧になるぜ。」
どうやら、普通に光弾当てても奴には大したダメージにならないらしい。
「大丈夫だ。お前が俺の攻撃力が不足してると思えるのは今のうちだけだよ。」
「大口叩いてると後悔するぞ。」
大黒狼の周りに再び魔力が集まり、黒弾を出す。
今度の数も10個。
10個が奴がだせる黒弾の最大数なのかもしれない。
(リル、出来れば4枚であれ全てに対応してほしいんだが?)
(バーストを使うですか。難しいです。先ほどの攻撃を見ると狼さんの黒弾は完全な同時射出はできないようです。しかし、誤差も僅かなものです。せめて、5枚は欲しいのです。)
リルは悩んでいるようだった。
(俺も回避行動は取れる。それで何とかならないか?)
(ギリギリですが、分かったです。私も全力を尽くすです。)
俺たちの行動は決まった。
すぐに右の銃を奴に向ける。
右の銃の銃口を2枚の盾が回り始める。
2枚の盾から魔力を銃に流れていく。
銃が魔力を取りこんで徐々に輝きがます。
その間に大黒狼は、黒弾を打ち出してきた。
4枚の盾がそれぞれ黒弾を防ぐ。
しかし、2発ほどは盾を抜けてこちらに飛んでくる。
だが、そこはさすがリルというべきだろう。
リルは俺が避けやすそうな黒弾を残してくれていた。
おかげで俺は、左、右と一回ずつ飛ぶだけで黒弾を避けることができた。
その間に銃の光はさらに増していた。
(充電完了です。バーストいけるです。)
銃を大黒狼の方に向ける。
「喰らいやがれ!!」
今までの光弾とは違い、光のレーザーが飛んで行った。
これが、俺の攻撃の要となる「バーストショット」である。
この銃は俺からの魔力を一定量までしか溜めることができないようになっている。
しかし、盾つまりリルを通すことで銃は魔力をさらに溜めることができるようになっているのだ。
何故かは分からないがとりあえずメンドクサイ攻撃方法である。
光のレーザーは一直線に大黒狼の方に飛んでいき、命中した。
「ぐぁぁぁぁ!!」
間髪いれず、光弾を撃ち続けた。
ドォン、ドォンと光弾が炸裂する音とともに土煙りが起こる。
撃つのをやめて土煙りが晴れるのを待つ。
(あれだけの攻撃を受けて無事なはずはない。)
徐々に、土煙が晴れていく。
しかし、そこには大黒狼が普通に立っていた。
「どうした。これが限界か。今のは確かに効いたが、俺はまだ余裕があるぞ。」
大黒狼の体を見てみると、ダメージは与えられているようだが、致命傷には至らないようだった。
(クソ。柔らかそうな体してるくせに、結構堅いな。)
確かに余裕がまだ見える。
「てめぇのその技は溜めがいるみたいだな。さらにその間盾の数が減る。これはなかなか戦いにくいんじゃないか。もうてめぇに溜める時間もやらんぞ。」
「まだまだ手はあるさ。」
しかし、確かにこちらの手が限られてきている。
この状況は少し苦しい。
だが、まだ手はある。
奴の、いやどんな生物でも必ず柔らかい場所はあるのだ。
そこを狙って戦えばいいのだ。
「そっちが止まっているならこちらから行かせてもらおう。」
大黒狼が再びこちらに向かってくる。
「シフトD6だ!!」
「わかったです。」
こちらも、大黒狼に向かって駆け出す。
残り3メートルぐらいまで接近したところで、大黒狼は腕を振り下ろしてきた。
それを、右に飛んで避けると、避ける位置を予測していたのであろう、俺に黒弾が飛んできていた。
盾が1枚俺と黒弾の間に入り込んで防御してくれた。
盾と黒弾がぶつかりあい、衝撃を生んだ。
その余波で俺は僅かに体勢を崩した。
そこを見逃す大黒狼ではなかった。
すぐに、先ほどと逆の腕を振りかざしてくる。
俺もすぐに反応して、腕に向けて光弾を撃った。
その反動で俺の体が動いたこともあり、腕は俺のやや横の地面を勢いよく叩いた。
その隙に俺は大黒狼の正面に位置取り、大黒狼の顔面に向かって光弾を撃つ。
大黒狼は咄嗟に顔を反らして、光弾を避ける。
避けた光弾は大黒狼の肩に命中する。
俺は継続して大黒狼の正面を取るようにする。
そして、また顔面に向かって光弾を撃つ。
大黒狼の攻撃は俺が回避行動を取り、黒弾が来た時はリルの盾を使う。
うまく役割を分担しながら、絶妙なポジションを取って攻撃を繰り返す。
「クソが!!」
大黒狼が突然口を開いた。
口から黒弾を出そうとしているのを見て、俺は待ってましたとばかりに、口の中に向けて光弾を撃った。
ドォオンと中で光弾と黒弾が混ざって爆発する音が聞こえた。
「ガァァァァ!!!」
悲鳴をあげた後、大黒狼は倒れた。
「どうよ!!」
いくら光弾を体に受けても平気な奴でも、内部にダメージを与えれば効く。
さらに、自分の黒弾と俺の光弾が混ざって内部で爆発したのだ。
さすがのこいつでもこれは大きな痛手だろう。
「さてと、これで最後だ。リルシフトA4だ。」
(はい。)
盾が4枚銃口の周りを飛ぶ。
「ふざけるなぁぁぁぁ!!黒狼共やれぇぇぇぇ!!」
(・・・はっ。黒狼が5体突然出てきたです。後ろから来てるです。)
振り返ると黒狼が5体こちらに襲いかかってきていた。
「俺の特殊能力を見誤ったな。俺は黒狼を召喚する能力も持ってるんだよ。」
黒狼たちが飛びかかってきて、その爪で俺を引き裂こうとしてきていた。
攻撃に回した盾を戻すには時間がかかる。
さらに、4枚でバーストを撃つ時、俺は行動が制限され満足な回避行動を取ることができない。
残り2枚の盾が俺を護るが、数が足りない。
「詰めが甘かったな。チェックメイトだ!!」
盾を抜けた黒狼の爪が俺めがけて振り下ろされた。
その距離1メートルほど。
1秒後には俺はあの爪に引き裂かれる。
万事休す。
そう思った。
しかし、その瞬間俺と黒狼の間に1人の少女が割って入った。
「炎舞壱ノ型!炎桜!!」
少女が刀を横に一閃。
炎の桜が舞い散った。
黒狼たちは炎の桜によって引き裂かれて、浄化されていく。
「なっ!!」
俺は驚きで声を上げる。
先ほど同じようなシチュエーションにあった彼女を俺が助けたのだ。
刀を持った少女詩織はこちらを見て笑いかける。
「言ったでしょ。危なくなったら私も乱入するって。」
詩織のやってやったというような顔を見て、俺は
「ありがとうよ。」
と返答した。
そして、戦いの幕引きも来たようだった。
「さて、俺にはあと1人相棒がいたようだ。俺も予想外だったんだ。怨むなよ。」
銃の光が増した。
(充電完了です。)
「あばよ。」
俺は引き金を引いた。
「クソがぁぁぁ!!」
大黒狼は捨て台詞と同時に光のレーザーに飲み込まれた。
光のレーザーは先ほど撃ったもの倍はあっただろう。
レーザーが消えた後には、大黒狼の跡は全く残っていなかった。
魔人との戦いは終わった。