銃と相棒
突如、両手に銃を持って現れた隼人君は右手に持った銃でワーウルフの爪を受け止めた。
銃は両方とも銀色の自動拳銃式である。
普通より大きく相手の攻撃を受けとめる際にも使えるようだ。
爪を受け止めている状態で隼人君は左手の銃を使いワーウルフを撃った。
その銃口から発射されたのは光弾だった。
ワーウルフは咄嗟に身を翻して光弾を避け、隼人君と距離を取った。
「大丈夫か?」
隼人君は振り向いて私を見てきた。
「う、うん。」
と、私は反射的に返事をした。
私はすごく驚いていた。
隼人君が私のピンチに駆けつけてくれたのだ。
それは、所謂白馬に乗った王子様といったところだろうか。
俺は詩織の体を見て、傷がないことを確かめると安心して一息つく。
「1人で魔人を相手にしようなんて危ないぜ。せめて、2人で相手にしないと。」
まだ状況を飲み込めていなさそうな詩織は、コクっとうなずいた。
「まぁ、よかったよ。」
そして、俺は振り向いてワーウルフを見据えた。
「なんだ、てめぇは?」
振り返ると、ワーウルフは俺を睨みつけてきていた。
「俺か?」
ワーウルフをにらみ返して怒りを込めてこういった。
「俺はこの子の幼馴染だよ!!」
そういって、俺は光弾を打ち出した。
光属性。火、水、雷、風、土、そして光と闇。7属性のなかでも最も希少な属性。
俺はその光属性の力を有していた。
ワーウルフは光弾を避けてさらに後ろに下がった。
「てめぇ。」
鋭い眼光が俺を見つめる。
「やれ。黒狼共!!。」
俺と詩織を囲っていた黒狼たちが一斉に飛びかかってくる。
しかし、焦ることはない。
ワーウルフに黒狼たちがついているように、俺にも頼りになる相棒がいる。
(3時、5時、9時、11時の方向の黒狼がタイミングをずらしてきてる黒狼が1匹ずついるです。)
「サンキュー。」
俺は相棒の指示を聞き、行動に移る。
まずは、時計周りに飛びかかってきている黒狼たちを一掃する。
狙いは外れることなく全員を撃ち落とした。
その後すぐに、タイミングをずらしてきていた黒狼たちの攻撃の避ける行動に移る。
(1時の方向にはワーウルフが待機してるです。)
「あいよ。」
すぐに詩織をいわゆるお姫様だっこで持ち上げる。
「えっ。ちょっと。」
恥ずかしそうに詩織は顔を赤面させる。
気にせず俺は、ワーウルフが待機しているのとは逆の7時の方向に抜けて詩織を降ろす。
その後4匹に一発ずつ撃ち込んだ。
さらに、指示の通り1時の方向に待機していたワーウルフを視認して、左右の銃を連射した。
ワーウルフは油断していたのだろう。
反応することができず、光弾を数発受けて地面を転がる。
「ぐぅ。感のいい奴だな。」
ワーウルフは立ちあがりながらそう言った。
「感じゃねぇよ。俺の頼りになる相棒のおかげだ。」
(頼りになるなんて照れるです。)
相棒は照れていた。
「それで、これで終わりか?」
ワーウルフを睨みつける。
「ふっ。てめぇみたいなガキにここまでいいようにされるとは思ってなかったよ。」
ワーウルフはいまわしそうに俺を見てくる。
「どうやらてめぇは一筋縄でいく相手ではないようだな。戦い慣れしてる感じだ。だが、てめぇは俺様の本気を相手にして後どのくらい保つかな?」
「お前が本気になったところでどうってことねぇよ。」
「言ってくれんじゃねぇか。てめぇのその自信叩き折ってやるよ。」
不敵な笑顔をした。
同時に、ワーウルフの周囲の魔力が濃くなっていくの感じる。
周りには黒いオーラが集まってきた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
ワーウルフは黒いオーラを纏い、徐々に大きくなっていく。
「限定解除!!」
黒いオーラが完全にワーウルフの体を包み込んだ。
そして、次の瞬間黒いオーラは爆発するように拡散した。
その衝撃で突風が吹き荒れる。
俺は突風に耐えながらも相手から目を離さない。
徐々にオーラが薄れていき、ワーウルフの姿が明らかになっていく。
そして黒いオーラの中から現れたのは、巨大な黒狼だった。
推定で体長2m50cm、黒狼と同じく鋭い爪と牙を有している。
先ほどよりも一層魔力を強く感じる。
その姿は黒狼にとても酷似しているので、大黒狼とでも言おう。
大黒狼は閉じていた目をゆっくりと開いた。
鋭い眼光が俺を見据える。
「潰す。」
大黒狼が構える。その動きを見て俺は詩織をみる。
「詩織下がっておけ。」
「えっ。いやよ、私も戦う。あんな奴に一人で立ち向かうなんて無理よ。」
詩織はそう答えた。
そう言われるとは思っていた。
しかしこの場合俺は、詩織には残酷なことを伝えるしかなかった。
「頼む下がっておいてくれ。お前をかばいながらアイツと戦うのは結構キツイんだ。」
真剣なまなざしで見つめる。
答えを貰うまでの時間がだいぶ長く感じる。
だめか、と思いかけたその時、詩織が口を開いた。
「わ、わかったわ。その代わり危なくなったら、勝手に乱入するからね。」
「ああ。ありがとう。」
「それじゃあ、無茶しないでね。」
そういうと、詩織は後ろの方に下がっていった。
「さて、待っていてくれてありがとよ。」
まずは、詩織との会話中ずっと動かなかった大黒狼に礼をいう。
「別に礼を言われる筋合いはない。ただ、てめぇのプライドを完膚無きままでにズタズタにして殺したいだけだ。」
大黒狼は本当の意味で俺を潰したいらしい。
下手なプライドがあるところが魔人らしい。
プライドも何もなくただ本能のままに人を襲うだけの魔獣や、人を殺すことだけに快楽を覚える魔人とは違う。
強さを誇示したうえで、相手を潰すタイプだ。
「そうかい。じゃあ、俺も全力を出すぜ。」
そう言って、俺は首飾りを持った。
「リル出てこい。」
すると、首飾りが光、次の瞬間とても人形サイズの可愛らしい女の子がでてきた。
黄色主体の着物を着ていて、羽衣を纏っている。
髪は腰ぐらいまであり、顔は幼い印象を受ける。
「久しぶりに外に出れましたです。うれしいです。」
外に出れたことで、とてもはしゃいでいる。
俺の相棒のリルである。
「そのちっちぇえ嬢ちゃんがてめぇの切り札か?」
「ああ。俺の相棒だ。俺の魔法具は特殊でセットになっているんだよ。それがこの両手銃とリルだ。まぁ、俺はリルを魔法具だとは思っていないんだけどな。リルは相手の探知とかが得意でな、俺の相棒として戦闘でのサポートをしてもらっている。」
リルを撫でてやる。とてもうれしそうな顔をするリルを見ていると、とても心が和む。
「まぁ今回はサポートだけじゃなく、防御もしてもらおうと思ってな。」
「そうです。リルは優秀な盾なんです。狼さんじゃあ、私の盾を破ることはできないです。」
えっへんとリルは両手を組む。
「どうでもいいから、早く準備しろ。どうせ、そのままじゃあ盾にもならんのだろう。俺はさっさとてめぇを潰したいんだ。」
大黒狼はそろそろしびれを切らしそうだった。
「あいよ。リル形態変化だ。」
「はいです。」
リルが光り始める。その姿が変わり、同じ形の6個の盾が俺の周囲を浮き始めた。
形は大きな六角形で堅そうである。しかし、盾の上部には天使の羽根のようなものがついていて可愛らしいデザインとなっている。
『六花の盾』。これが、リルの盾としての姿である。
ちなみに、この名前を付けるときにリルとは少しもめた。
それはリルが、ブローディアという花をとても好いているからである。
ブローディアの花言葉は守護。
花びらの数も6枚とリルの能力と重なるところが多いのである。
そこで、リルはブローディアの盾やら、ブローディアシールドやら、ブローディアの名前を入れた、盾の名前を提案してきたのである。
だが、幼かった俺は盾に花の名前を入れるのがダサいと思った。
もっとガーディアンシールドとか、ハイパーシールドとか、今思うとブローディアシールドの方がいいと思うような名前を考えていたのだ。
そこに、母さんが入ってきて、二人の意見を聞いた後、六花の盾という名前を提案してくれたのだった。
幼い俺は六花という響きにカッコよさを覚え、リルは花が盾についていたことから、妥協しあいこの名前がついたのである。
まぁそんな昔話はおいておき、この盾は花言葉どおりどんな時でも俺を護ってくれる鉄壁の花となった。
いまじゃ、大事な戦いではこの盾は不可欠ともいえる。
信頼をおける盾をみながら俺は、
「さてと、じゃあやりますか?」
と本当の戦いの火蓋を切った。