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我楽多  作者: 市太郎
19/22

彼女が異世界へトリップしたその時

 

 

 

 皆さん、トイレに入ったら何します? 個室の方です。そう、人間生きていく上で必要な用を足しますよね。扉を閉めて、ズボンならばボタンを外してファスナーをさげて、下着をおろして座る。スカートの場合は裾をたくし上げてストッキングを穿いていればもろとも下着をおろして座る。この下着をおろすとき、直立不動でおろす人ってそういませんよね。だいたいの人が前へ傾斜し、お尻を後ろに突き出しながら下着をおろしてという淀みない流れで座ると思うんです。私はそうです。


 午後の仕事へ入る前に用を足そうと個室に入ったんですよ。いつものとおり、流れるごとく便座に腰をおろすはずでした。――はずだったんですが、前に頭を傾けて下着を膝までおろした瞬間、意識が遠のいてしまいまして、強かに個室の扉へ頭をぶつけたことまでは覚えてるんです。

 意識が朦朧とした間際、醜態をさらす、これはヤバイ、まずい、と脳裏に一瞬よぎったんですが、幸か不幸か同僚に醜態をさらすはめには陥りませんでした。

 幸いだったのは、職場で醜態をさらさずに済んだというその一言につきます。既に、下着もおろしていましたからね。人様に回ってお見せするようなほどではありませんので、第三者にあられもない姿を見せずに済んだのは本当に幸いだと思います。

 不幸なのは、意識を取り戻した場所が職場のトイレではなく、どこかの森の中だったってことでしょうか。

 後になってつらつらと思い返してみますと、意識を失った瞬間、私は職場からなんらかしらの影響を受けて森の中へと移動していたようです。

 というのも、その時、むき出しであったお尻が冷たかったから。いえ、粗相したわけではありませんよ? 長時間、肌を露出していたために冷たくなっていただけですから。

 つまり、誰も起こしてくれない、様子を伺ってくれる人がいなかったため、私は恥部をむき出しにしたまま長時間過ごしたというわけです。まぁ、誰に見られたわけでもなかったので一安心でしたが、目覚めたらどことも知れぬ森の中ですよ。慌ててパンツを引き上げて焦りました。二十数年という人生の中で、あれほど焦ったことはありません。むしろ、冷静沈着でいられる人がいるのであればお目にかかりたいものです。ちなみに、用を足してなかったことを思い出したので、やむを得ず原始的な方法で用を足しました。……えぇ、未知の栄養を施してやりましたよ。


 その後、現地人と遭遇し、面倒を見てもらっているようで世話をしたり、全てを任せろというので任せてみれば危険な目にあったり、肉体的疲労に気苦労と休む暇もないままに今日まで過ごしてまいりました結果、ここはどうやら日本でも地球でもない異世界ではなかろうかと。

 いえ、ファーストコンタクトの現地人と遭遇した辺りから、薄々そうでないかと思っていたんですが、こういうのも現実逃避と言うのでしょうか。まだまだ未知なことが多いので、情報を収集しながら日本へ帰る手立てを模索したいと思っております。




 しかし、こんな目にあうのであれば、同僚に恥部をさらしていたほうがマシだったという思いが募る今日この頃であります。

 

 

 

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