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我楽多  作者: 市太郎
17/22

聖剣、ダダを捏ねる

 

 

 

 モイッ! オラ、聖剣。いやぁ、この間はひどい目にあったよ。五十年ほど岩に突き刺さって寝てたらイケメンに引っこ抜かれたまではいいけどさぁ、デップリとした脂ぎった化け物が襲ってきて、イケメンがそいつを俺で斬ろうとすんのよ。

 信じられる? 普通、刃物になったりする経験ないだろうけど、いや俺も今まで経験したことないけどね? 初体験ですけどね? 誰が好き好んでオイリーな肌に触りたいと思う? 脂性でこまっちゃうぅ。なんて甘いもんじゃないんだぞ? タールまみれのヘドロ被ったような肌っすよ? ありえねぇ。チョーありえねぇ。

 俺は断固として鞘から出ることを拒んでやった。意地でも出ない。そんな頑なな俺に痺れを切らしたイケメンはあろうことか、鞘で化け物を叩きつけようとしやがるのよ。マジでありえねぇ。鞘だって大事な俺の体っすよ? 鼻がひん曲がりそうな臭い脂の匂いなんて絶対に触りたかないだろ? 臭いわかんないけどね! もうね、金切り声 を上げて叫んじゃったよ。

 そしたら、俺すげぇの。ピッカー! って光っちゃってさ。俺の神々しさに恐れをなしたのか、化け物がとたんにへっぴり腰になっちゃってね。そこをイケメンに付き添ってた女の人がバシッと……あれ、なんだろうね。魔法? よく分かんないけど、女魔法使いでいっか。それっぽいもんでやっつけちゃったわけ。女魔法使い、すげー。一番すげーのは俺ですがー。

 そんなわけで、俺の体はまだ清らかなまんまなのよ。でもって、今はイケメンの腰にぶら下がってます。イケメンのブツと……いやいや、それを言うといろいろと切なくなるから止めておこう。どうせぶら下がるなら、女魔法使いの胸の谷間が良かったなぁ。でも、個人的にはもう少し立派な谷間が好みだけどさ。そう、一緒にくっついてきてる女剣士っくらい? なんだけど、鎧着てんだよね。無粋だよ、無粋。危なくなったらさっ、俺が軽くピッカー! してやっから、もう少し薄い布になってくれねぇかな? だめ?

 ちなみに、男魔法使いと男剣士とイケメンを合わせて全部で五名のパーティーな。華が足りんわー。色気ねぇわー。むっさいわー。俺、聖剣になってからキャラ変わったわー。投げやりな気分ていうの? まぁ、投げやりにもなりたくなるよな。なんせ、俺ってば聖剣さまじゃん? 国宝? 世界の宝? 唯一無二な存在ってぇの? 取り合えず大事なのは分かるけどさ? 盗まれたら大変だからってイケメンが問答無用で同衾させるわ、トイレや温泉まで一緒とかないわー。四六時中一緒にいるから、友好深める前に男が嫌いになりそうなんですけど。友達。大切だよね。でも、男嫌いになりそうなのボク。しかもこいつら、風呂入るとき隠さねぇんだぜ? 自慢? ねぇ、自慢してんの? 男はサイズじゃないのよ? わかる? 経験ありませんけどね! だって、ブラック……いや、それは言い訳だな。潔くあるべきだ。


 …………。


 このイケメンってさ、行く先々でキャーキャーされるから女が苦手だってのはまぁ同情しますけどね? でも! 俺は女の子にちやほやされたいの! 分かる?

「あれが噂の聖剣? なんて素敵なんでしょ。見るからに神々しいわっ」

 なんて、女の子やお姉さま方が遠くから囁いているのが聞こえるのにっ! 思う存分触って欲しいのにっ! なんで俺はイケメンの股に挟まれて添い寝してやらねばならぬのだっ!

 もーっ! いやっ! 帰してっ! 岩に戻してーっ! 家に帰せーっ!!

 

 

 

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