表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

013

朝、庭に出ると犬を連れた子どもたちがすでに集まり、自分の選んだ犬を自慢しあっていた。

大きさも種類も様々だ。

その中に一際大きいシルエットが2つあった。


「ちょっと!?なんでそっちにいるのよ!」


「えっへへ〜、どう?」


昨日見た時からかっこいいと思ってたんだよね。と、子どもさながらに自慢げな姿を見てトニアは苦笑する。

子どもたちの輪に中に混ざっていたのは、ロッコとあの足長の猟犬のような犬だった。


遅れてやってきたレオが途端に不機嫌になる。


「あ?そいつ昨日俺を噛んだやつじゃねぇか。戻してこいよ。」


その瞬間、庭に子どもたちの笑い声が響く。


「それはルカ兄ちゃんのセリフだよ〜。」


リーダー格のジャンが、レオにツッコむ。


「レオ‥ようやく私の気持ちが分かりましたか?」


ルカの声が感動で、心なしか震えている。


(そっか、皆そうやってここに来たんだったね。)





パンパンと手を叩いて、トニアが皆の意識を自分に戻す。


「じゃあ、犬を連れて出かけようか。」


トニアは、素早く一緒に出かける子を呼び集めた。


「君と君と‥あとそこ全員。それからロッコもついて来て。」


そう言って、屋敷の門を出て行くトニアの後に犬を連れた子どもたちが続いていく。


「‥つか、こんなに犬連れてどこ行くんだよ?」


横を歩くレオが理解できないと言った様子で聞いてくる。


「去勢しに。獣医のとこだよ。」


「「はぁ?」」


レオと同時に少し離れたところにいたロッコも大きな声で反応した。

すかさずトニアの側に移動してくる。


「え?待って、俺聞いてないよ?アルロのアルロを取っちゃうってこと!?」


大袈裟なくらい反応するロッコのそばで、レオは黙って青い顔をしている。


「もう犬に名前つけたの?早いね。」


アルロ(男らしくて強い)だなんて、ロッコの単純さに笑いが込み上げる。


「話そらさないでよ!なんでそんなことすんの!?」

「別に、わざわざやる必要ねぇだろ。」


なぜか、男として犬と妙な連帯感を感じている二人。


「雌もいるんだから、どんどん増えたらボスの金銭的負担が増えちゃうでしょう?」


「いや、思ってないだろ。」


「まぁね。」


レオのツッコミに悪びれもせずに答える。


「真面目な話、去勢すると大人しくなるから、扱いやすくなるよ?」


「でもさ!こんなに男らしいのに、玉無しなんてカッコつかないじゃん。

勝手に連れてきて、一番大事なもの(金玉)を差し出せってコイツにも申しわけないよ。

絶対アルロの子どもも強くてかっこいいいのに!」


まだ存在してもないアルロの子どものことにまで思いを馳せて、ロッコがついに泣き出した。

いくら何でも感情移入しすぎだ。


子どもねぇ…アルロはエースになる素質は十分にあるだろうけど。

でも、そこまで今考えるのは時期尚早すぎやしないだろうか。


ロッコがめそめそと泣いて、トニアがうんうん悩んでいる間に、獣医の家に到着した。


アルロを抱きしめたまま建物の入り口で座り込みをするロッコの横に、トニアもしゃがむ。


「アルロは闘争心が強くて、大きくてかっこいいけど、それ怖がる人もいると思うの。町では気性が荒いって有名だしね。」


「俺は噛まれたぞ。」


レオが口を挟む。


「興奮してるアルロを声ひとつで従わせられる?もし、約束できるならアルロのアルロはそのままにしておこっか?」


トニアは小さな子供に言い聞かせるように話しかける。

ロッコはパッと顔を上げ、涙でぐちゃぐちゃの顔でコクコクと頷いた。


「汚ねぇな。」

「あの人なんのために一緒に行動してるんですかね。」


レオのため息とルカのため息が重なった。


犬たちを預けて外で待っていると、中からきゅんきゅん鳴く声がひっきりなしに聞こえて来る。


『ぷっ。』


一時間後、戻って来た犬たちは顔周りに筒が付いて、なんだか間抜けに見えた。


「ねぇ、今笑ったよね?俺たちの勝手で取ったのに失礼じゃない?」


ロッコが珍しく真剣な顔をしている。


(あ、これはやばいやつだ。)


「ごめん。その‥かわいくって、つい‥。」


今日はお肉食べさせてあげよう?とロッコをフォローする。

帰り道、豚肉を犬たちの分も含めてたっぷり購入した。


「この豚肉も去勢されてるから柔らかいんだよね〜。」


ハッとするが後の祭りで、レオとロッコの冷たい視線を体中に浴びながら戻った。


「おい、トニア!犬飼うだけじゃないんだろ?何をすればいいか教えてくれよ!」


屋敷に戻るとジャンが待ちきれない、といった様子で尋ねてきた。


「走ってもらうだけだよ。」


ジャンだけじゃなく、その場にいる全員に聞こえるように大きい声を出す。


「ここにいる全員がライバルよ!犬同士で競争するの!」


状況を飲み込めない子どもたちは、お互いに顔を見合わせている。

そこにトニアが、問いかける。


「この中で足が一番速いのは誰?」


「俺だよ。」


ジャンが自信満々に手を挙げて名乗り出る。

じゃあ、これ!と、ジャンの腰にロープを巻きつける。

地面まで垂れ下がったロープの先には大きめのタッセル。


「おい、あれって‥。」

「ダイニングのカーテン留めですね。」


トニアさんに請求しておきます。と、ルカは怖い顔をする。

後からルカに怒られることを知らないトニアは、手術しなかった犬の中から3頭を選んで、庭の端に移動する。


「ジャンは庭の真ん中くらいで待ってて。私の合図で反対側の端まで全速力ね!」


ジャンが位置に着くまでの間、トニアは残りの子どもたちを集めて、わざとヒソヒソと話し始めた。


「どの犬が一番になると思う?当たったら、夜のお肉を二倍にしてあげるわよ。」


全員をしっかり見回したところで、パチンとウインクをする。

皆が予想を口にし終えると、あなたたちはお肉二倍のチャンスを棒に振るの?とレオたちを煽る。


「別に、肉くらいいくらでも‥「俺は真ん中っ!」

「私は右です。」


「…んじゃ、ひだり「走れー!!!」


動くタッセル目がけて犬がどんどん走っていく。


「っあああ!」


悔しそうなジャンの声が庭に響く。

途中で右の犬にタッセルにかじりつかれ、綱引き状態となって終了した。


「これが新しい仕事よ。」


わぁわぁと盛り上がる子どもたちの耳には届いていない。


「おい、聞け。」


大きな声ではなかったが、レオの一声で子どもたちが落ち着きを取り戻す。


「保存食づくりと同じように給料も払うよ。もちろん、うさぎ組にもね。お願いできる?」


「「「できるーーー!」」」




(これでノヴェッリの金はこっちに集まってくる。)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ