私がどれほど美しいかということを、信じたい
私がどれほど美しいかということを、信じたい。
首を掻きむしるほどに、息をしたい。
私の背中に翼が生えてきて、いつか空をとぶ。だからその時は、私があなたのところに迎えにいくね。
毎日でも祈るよ。
私には見えないけれど、あなたはずっと輝いているんでしょう。私も同じぐらい輝くって約束するよ。
どんな言葉だって、あなたには足りない。だから私が言葉をつくるよ、最も美しい場所に一緒に行こう。
そして私がその場所に行けたら、きっとキスするから。
だから、だから信じてほしい
#### 手紙だらけの星
さて、郵便屋さんは星を巡る旅に出るみたい。何を届けるんだろう?
「何を届けるかって? そうだな、届けるものがなかった。……自分でラブレターを書こうかな。うーん、まず1文字目を何にするかですね……。ああ、こうしてる間に他の郵便屋に抜かされてしまう。向かいながらラブレターを書こうかな」
まず最初の星は、手紙で溢れた星かぁ。郵便屋さん、これらの手紙も一緒に届けたらいいんじゃないの?
「こんなにいっぱいの手紙を一気に届けられませんよ。私には許容量オーバー。それに、中身を見てください」
なになに? 愛してるよ、好きだ、君しか見えない……、どれもありきたりだ!
「そうなんです、届けられなかった手紙たちですよ。きっと、もっと愛が必要なんです、愛がね」
愛、かぁ。郵便屋さんの手紙はどんな手紙になるんだろう、ワクワクするね!
「ふふ、楽しみですか? そうだな、まず最初はこんなのはいかがでしょう?」
『私がどれほど美しいかということを、信じたい』? なにこれ、自意識過剰?
「あはは、そう、自意識過剰じゃないとやってられないんですよ、君もいつかわかりますよ。それに、まずは自分を信じなければ、相手も私を信じてくれません」
そういうもんなの?
「そういうものなのです、さあ、次の星に行きましょう!」
#### 酸素不足の星
よし、2つ目の星! ……なにここ、なんか息苦しい? すごく辛いかも!
「そうですねぇ。仕方がありません、こんな星もありましょう」
なんでそんな冷静なの!? 早く、ここから出ないと!
「待ってください、ラブレターの続きを書きましょう」
そんなの今じゃなくたってできるでしょう!? 急がなきゃ!
「一つ一つの星が私たちの軌跡になるんですよ、ここでも書かなきゃね、うん、こんな感じ」
『首を掻きむしるほどに、息をしたい』? どういうこと? 郵便屋さん、本当にラブレター書こうとしてるの?
「してますよ、失礼な。あなたと一緒なら、息ができる、という熱いメッセージです」
へえ、僕にはまだわかんないや。
「そうでしょう、きっといいラブレターになりますよ、さあ、次の星に行きましょう」
#### 大きな星
3つ目の星に来たね! サクサクだなぁ。
「やめてください、そういうの、フラグっていうんですよ」
フラグ……? よくわかんないけど、とりあえずここの星はどんな星なんだろう?
「うーん、すごく、重力がありますね」
本当だ、おもい。うう、体がちぎれそうだよぅ。星の移動はこんなにも大変なの?
「たくさんの星がありますから。一歩一歩が大変ですね、ここは長い旅になりそうだ」
郵便屋さん、どうして諦めないの? 僕はもう心が折れそうだよ。
「さあ? どうしてでしょう、信じてるからかな」
何を?
「私自身を。そして相手を。さあ書きましょう、やれやれ、筆をもつにも一苦労だ」
『私の背中に翼が生えてきて、いつか空をとぶ。だからその時は、私があなたのところに迎えにいくね』……。こんな背中が重い場所で、よく翼が生える想像ができるよね……。僕、郵便屋さんのこと尊敬しちゃう。
「あはは、君は本当に純粋でいいね。まあ、今まさに翼が折れかかってると言えるよね」
心折れそうになってるじゃん、ラブレターもかけたし、急いで、次の星に行こう。
#### 鐘だらけの星
次の星は、鐘がいっぱいの星だ。なんだろ、いっぱい鳴らしていいのかな?
「はは、どうでしょう、確かに、いっぱい鳴らしたら鳴らすだけ、彼女に聞こえるかもしれません」
そうでしょう、そうでしょう。試しに1つ鳴らしてみよう!
「鳴らすのも私だっていうのに、無邪気ですねぇ、よいしょっと」
おおー、ゴーンってなったよ! すごいすごい、楽しいねぇ!
「君は何を祈りますか?」
祈る?
「鐘を鳴らすんです、何か祈らないと」
じゃあ、旅が無事終わりますように、かな!
「旅が終わったら、きっと君も、幸せになれますよ」
どういうこと? 郵便屋さんといる今もずっと幸せだよ?
「ふふふ、嬉しいこといってくれますね、でも、もっと幸せになるんです」
もっと幸せかぁ。どれだけの愛を貰えるんだろう!
「そりゃ、もっと、もっとですよ、あぁ、いけない、ラブレターを書かなければ。忘れるところだった」
この星ではなんて書くの? あ、予想する! 「鐘は聞こえた?」かな。
「それもいいですね、でも残念でした。私は、『毎日でも祈るよ』と書きました」
おお、郵便屋さんは、何を祈ったの? 何を祈るか書かないの?
「彼女も祈っているんです。だから書かなくても大丈夫」
うーん? 郵便屋さんはなかなか言うことが難しいよね。僕には理解できないことばかり。
「今はそれでいいんです、未来はとっても長いですから、ひとつずつでいいんですよ」
#### 眩しい星
今度の星は……、うわぁ、すごく眩しいよ。目を開けていられないぐらい。どうやって進んでいくの?
「本当ですね。暗すぎても何も見えないけれど、明るいすぎるのも何も見えなくなる。私たちがもともといた星は、居心地が良すぎたんでしょうね」
うう、どうして、僕たちは大変な旅をしてるんだっけ?
「幸せになるためでしょう? 忘れないでください、生まれるために一生懸命になっていることを。忘れないでください、生きる素晴らしさを」
どういうこと? 郵便屋さんが言っている意味が、僕にはわからないよ。
「今はそれでいいんですよ。さて、ラブレターを書かなければ」
こんな星じゃあ、自分がかいた文字すら読めないでしょ? どうやって書くの?
「いいんですよ。読みづらくたって。不恰好だろうが、ラブレターはきっと美しい」
不恰好が美しい? そんなわけないけどな。今度はなんて書いたの?
「『私には見えないけれど、あなたはずっと輝いているんでしょう。私も同じぐらい輝くって約束するよ』そう書きました。きっと、私も輝いているから」
……僕も?
「君は、最も輝くでしょうね」
#### 空っぽの星
ああ、眩しかった。今度の星は、眩しくなくっていいね。……なんもないけど。
「そうですねぇ。こんな星もありましょう。こんな星だからこそ、書ける文があるはずです」
例えばどんな?
「そうですねぇ。『どんな言葉だって、あなたには足りない。だから私が言葉をつくるよ、最も美しい場所に一緒に行こう』こうしますか」
言葉が足りないって、どういうこと? 言葉はいっぱいあるのに。
「言葉は、いっぱいだと思いますか? どんな言葉だって、きっと足りないですよ。どんな表現だって、ちっぽけに感じるものです。この大きな感情の前ではね」
……どんな言葉を郵便屋さんはつくるの?
「ふふふ、知りたいですか? そうですねぇ、あなたの名前、なんて新しく考えるのはどうでしょう」
わぁ、僕の名前? 教えて、教えて!
「それは、手紙を届けてから、ですよ。お楽しみは取っておきましょう」
ええ? 早く知りたいのに。
#### たくさんの郵便屋さんが倒れてる星
え……、たくさんの郵便屋さんが倒れているよ…….。どうして? 助けなきゃ……。
「君はとっても優しいですね。でも、もう助けられないんです。生きるということは、死ぬということ。僕も、君もね」
そんな辛いこと言わないで。だったら生きたくない。
「そんな悲しいことを言わないでください。生きるということは、奇跡なのですから。僕も、君も、奇跡なんです。彼女もね。そうして、奇跡を味わって死にましょう」
それって、苦しくないの?
「苦しいですよ。でもきっとそれ以上の暖かさを見つけられるから」
本当に?
「本当です。さて、ラブレターを書きましょう」
『そして私がその場所に行けたら、きっとキスするから』か。郵便屋さんは、残酷だね。
「残酷と美しさは、きっと近いんでしょうね」
#### 地球
たくさんの人がいる。たくさんの人生がある。たくさんの苦しさと、幸せを、抱えてる星だね。
「そう、そんな星にきっと生まれることができますよ。奇跡が起きるのは、きっと当たり前だから」
ラブレターは?
「『だから、だから信じてほしい』と。祈りを込めて。あなたに会いに行きます」
そうして、僕は生まれることができる?
「ええ、たくさんの愛を持って」
#### 卵子の星
「ようやく会いにきてくれた」
「ああ、君のためにラブレターを書いたんだ。読んでくれる?」
ようやく、ようやく会えた。お母さん。僕は、これから生まれることができるんだね。
ああ、ようやく僕は、僕になれる。僕の名前は?
「生まれた時に、わかりますよ。それまで、待ってて」
待ってるよ、また会える日まで、ずっと待ってる! お父さんを、信じてくれて、ありがとう、お母さん!
そうして、2人と、星々は、全て僕になった。




