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第34章届かぬ救い

深夜、午前零時。 深い静寂の中、八つの影が素早く動く。 多くを語らずとも二手に分かれ、ボロ、ムルニ、ムルナ、そしてズルヴィアンは建物の屋上にある通気口へ。一方、エッセ、リアン、クレテク、ティック、タックは外周に散開し、夜の闇に溶け込んだ。


見張りの姿はない。 ボロはその機を逃さなかった。この場所の元収容者である彼にとって、隅々まで、あらゆる隙間が、脳裏に焼き付いた地図そのものだ。 建物の裏手へと先導するその動きにはほとんど音がなく、まるで棘の上で踊るかのように正確な足運びだった。その手際の良さが、ズルヴィアンの信頼を裏付けていた。


◇◇◇


その頃、とある独房の中で、ハンは目を覚ましていた。 体がまだズキズキと痛む。今着せられている赤と白の囚人服は、肌触りがゴワゴワして異質な感じがした。 他の囚人たちが寝静まる中、ハンは横になったまま、枝毛になった赤い髪の先を人差し指で弄んでいた。退屈しのぎの古い癖だったが、今はそれがいら立ちを紛らわせるためのものに近かった。


その単調な動きの最中、ふとジャミルの姿が脳裏をよぎる。 (あの子は今、どうしているだろうか。) 痛む体に鞭打ち、ベッドの端に腰掛ける。片手で腹を押さえ、突き刺すような痛みをなんとか和らげようとした。


(無事に生き延びて、外で新しい仲間を見つけられただろうか?)


その考えが、次々と別の不安を呼び起こす。ジャミルはまだ、過酷な外の世界に慣れていない。 悪い想像ばかりが降り注ぎ、独房の淀んだ空気が一層息苦しく感じられた。胃がムカムカする。


再び体を横たえようとした、まさにその時。廊下の奥から、かすかな物音が聞こえた。 看守たちのブーツが立てる足音とは違う、奇妙なざわめき。 好奇心が痛みに勝った。痣だらけの体を引きずり、様子を確かめようと鉄格子まで足を引きずった。


鉄格子にたどり着くと、音はより鮮明になった。 金属が切断される音、ひそひそ話、そして床に柔らかく着地する『タップ』という軽い足音。


ハンはただ黙って、冷たい鉄格子に額を押し当て、耳を澄ませた。 (何者だ? いったい、何をしにここへ?) 期待はしない。期待しすぎれば、裏切られた時の失望が大きくなるだけだ。 疲れを感じ、踵を返してベッドへと戻った。


◇◇◇


廊下では、ボロとズルヴィアンが音もなく着地していた。 上方ではムルニとムルナが見張りに立ち、エッセのチームからの合図を待っている。


ズルヴィアンとボロは、静まり返った独房の間を幽霊のように進む。 五十番房から順に、眠っている囚人たちの顔を一人一人確認していく。 だが、いない。ハンの姿は見当たらない。


「クソッ!」ズルヴィアンが、吐息のような低い声で悪態をついた。「思った以上に、ここの囚人は多いな。」


ボスが愚痴るのを、ボロは内心で小さく嘲笑った。 捜索は二十二番房まで続いたが、成果はまだない。ズルヴィアンは再び文句を漏らし、今度は痛む腰を押さえていた。持病の痛みが再発したらしい。


「少し休みますか?」ボロが囁いた。


「不要だ!」ズルヴィアンはきっぱりと返す。「こうして遅れをとり、現状に不平を漏らすだけでは、任務失敗も同然だ。」


(クソジジイめ。アンタが愚痴ってたんだろうが、なんで俺が巻き込まれなきゃならんのだ) ボロは心の中で毒づいた。


今度はズルヴィアンが先頭に立ち、ボロを後ろに従える。 十一番房の前で、ズルヴィアンの足が止まった。中には、ハンを痛めつけたあの屈強な男が熟睡している。 目当ての場所が近いと踏んだが、十番から八番房までも空振りだった。 苛立ちが募る。後ろを振り返ると、ボロがお手上げといった様子で肩をすくめただけだった。


その反応を見て、ズルヴィアンは下唇を噛み、眉間に深い皺を刻んだ。拳を強く握りしめ、指の関節が白くなる。 もう限界だった。疲れに屈し、廊下の壁に体を預けた。


それを見たボロは、黙っていられなかった。先ほどのボスの言葉をそのまま返す。 「ボス。諦めたり、現状に不平を漏らしたりしちゃいけないんじゃ? なのに、どうし──」


「うるさい!」ズルヴィアンが鋭く遮った。「まだ諦めてなどいない。少し壁に寄りかかりたいだけだ。」


ただの言い訳だとボロは分かっていた。ズルヴィアンが立ち上がるのを待たず、単独で捜索を再開する。 いくつか房を通り過ぎ、五番房の近くまで来た時、小さく呻く声が聞こえた。 足を速める。そして、二番房でついに見つけた。


ハンだ。 ベッドの上で痛みに顔を歪めている。腹部の激痛が、図らずもボロに居場所を知らせる合図となっていた。


だが、ボロが合図を送るよりも早く、背後からの素早い動きがそれを遮った。 ムルニが音もなくズルヴィアンに駆け寄り、切迫した表情で何かを耳打ちする。 その表情だけで十分だった。ボロにも意味が分かる。外部チームからの赤信号──危険が迫っている。


ズルヴィアンは即座に立ち上がり、ボロへと駆け寄った。 「捜索中止だ! 撤退するぞ!」


ボロが発見を報告する間もなく、その腕はズルヴィアンによって強引に引かれた。 彼らは素早く動き出す。痛みに呻き続けるハンを残し、二番房から遠ざかっていった。

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