第30章カレンダーにない日
「不運な日」なんてものは、カレンダーには決して載っていない。
メリサの視線は、まだ冷たい木の床に釘付けになっていた。だが、その心の中では、シルヴィの手紙にあった二つの文が、壊れたレコードのように、回り続けていた。『その大した勇気には、感心するわ』、そして、『あなたの、次の行動を楽しみにしている』。その言葉は、保健室の静寂の中で木霊し、息苦しくさせた。
これは、直接的な脅しではない。彼女も、それは分かっていた。だが、これは、今や、彼女の首に巻き付いた、縄だった。たった一つの過ち、たった一つの不注意で、その縄は締まり、彼女が掴み取ろうとしている全ての機会を、奪い去るだろう。
ベッドの上からの、か細く、抑えられた呻き声が、メリサを、思考の渦から、はっと引き戻した。ミラ。少女は、彼女の硬直した背中を見つめている。多くを動くことはできないが、その眼差しは、無言の心配に満ちていた。その痛みの呻き声は、彼女が「どうしたの?」と尋ねる、唯一の方法だった。
そして、その問いかけはまた、メリサに、別のことを思い出させた。『日が沈む前に、正面玄関で、私に会って』。
メリサは、窓を一瞥した。外の空は、既に暗くなっていた。オレンジ色から、濃い藍色へと変わっている。太陽は、とっくの昔に、消えていた。遅れてしまった。
(もし、会いに行かなかったら、あのお医者様の場所は分からない)と、彼女は内心で、パニックになった。(でも、もし今、会いに行ったら……シルヴィが全てを知った、この状況で……何が、起こる?)
悪い考えが、這い寄り始める。その恐怖は、冷たく、腹の底から、指の先までを駆け巡った。もし、これが罠だったら? もし、シルヴィが、もう皆に話してしまっていたら?
そのジレンマの頂点で、一つの音が、静寂を破った。
トントン、トン。
そのドアのノック音は、あまりにも優しく、あまりにも規則的で、狂ったように打つ彼女の心臓の鼓動とは、対照的だった。メリサは、横目でちらりと見ると、ゆっくりと、重く感じられる体をひねり、固く閉ざされた扉と向き合った。
「メリサ姉さん、私……シルヴィよ。」
ドアの向こうからのその声は、ただの囁きだったが、静かな部屋の中では、あまりにもはっきりと聞こえた。
返事を待たずに、ドアノブが、ほとんど音もなく、非常にゆっくりと回る。扉が開き、シルヴィの姿が現れた。その目は、ミラに向けられた途端、表情が、即座に変わった。抑えられた、はっとする息遣い。そして、包帯に巻かれ、いくつかの箇所から濡れた染みが滲み始めている体を見て、その目は、恐怖に見開かれた。
「ミラ」と、彼女は呼んだ。その声は、震えていた。「大丈夫? 容態は、どう?」
ミラは、答えられなかった。代わりに、力なくも温かい微笑みを返した。『大丈夫だよ、心配してくれて、ありがとう』とでも言うような、無言の合図。
メリサは、ついに、凍り付いていた場所から、動いた。彼女はベッドを回り込み、今やミラの傍らで屈み込み、心配そうな眼差しでその髪を撫でている、シルヴィに近づいた。
「今のところは、大丈夫」と、メリサは、かすれた声で答えた。彼女は今、シルヴィの真横に立っている。「ササが、ミラの傷の手当てを手伝ってくれたの。あの子のおかげで、私の負担も少しは軽くなった。今、ヴァーニへ行く計画を立てているの。ササが、そこへ行くように勧めてくれた。ミラの古い傷を、治せるようにって。」
「ヴァーニ」という言葉を聞いて、ミラの髪を撫でていたシルヴィの手が、途端に、止まった。
彼女は、すぐには、応じなかった。ゆっくりと、立ち上がり、体をひねり、メリサを、まっすぐに見据えた。部屋の薄明りの中、二人の視線が交錯した。一つは、疑問符に満ち、もう一つは、毅然として、読み取れない。
「サンディから、あなたたちの計画のことは、全部聞いたわ」と、シルヴィは言った。その表情は、真剣で、冷たく、そして、張り詰めていた。
メリサは、ただ、黙って、その言葉が、空気の中に漂うのに、任せた。
「あなたたちが、この孤児院から出るのを、手伝うわ」と、シルヴィはきっぱりと言った。その口調は、一切の議論の余地を残さなかった。彼女の手が、使用人の制服のポケットの中へ入っていく。「あなたたちの、逃走ルートは、もう手配してある。このメモの中にある、指示に従って。」
素早い動きで、彼女はメリサの右腕を引き、きれいに折り畳まれた一枚の紙切れを、その手のひらに、滑り込ませた。メリサは、今やそのメモを握る自分の手を、ただ、見つめることしかできなかった。あまりにも、驚きすぎて、反応できない。
「そのルートは、ずっと前に、ミホ、ダウニー、ミエと一緒に作ったものよ。もし、そのメモに書かれた道順に従えば、残忍さで知られるヴァーニの街の衛兵と、出くわすことはないわ。」
シルヴィの口から出る言葉の一つ一つが、メリサが、自分が手に入れるとは夢にも思わなかった、パズルのピースだった。
「まだ、間に合ううちに、お行きなさい」と、シルヴィは言った。「私は、ここからあなたを助ける。あの子たちが、無事でいられるように、守るから。」
その瞬間、メリサの中の何かが、変わった。先ほどまで彼女を麻痺させていた疑念は今、燃え盛る熾火へと変わった。自由な左手は、体の脇で、指の関節が白くなるほど、固く握りしめられている。その顔は、俯き、唸るような、燃えるような決意の表情を、隠していた。この計画は、失敗させてはならないし、失敗することもない。
彼女は顔を上げ、燃えるような目で、シルヴィを見つめた。
「分かったわ」と、メリサは、毅然として、確かな声で言った。「あなたに、任せるわ、シルヴィ。あの子たちを、お願い。ミラみたいに、させないで。用事が済んだら、ジャミル様と一緒に、必ず、すぐに戻ってくるから。」
シルヴィは、言葉で答えなかった。短い頷きと、真剣な眼差しだけで、十分だった。
もう時間を無駄にすることなく、メリサは屈み込み、細心の注意を払いながら、ミラの体をベッドから抱き上げた。シルヴィは、機敏に、ドアを大きく開け、二人の行く道を確保し、邪魔されることなく、行かせた。
孤児院の廊下は、静かなトンネルのようだった。使用人のほとんどは、もう自室におり、残りは、遠くの持ち場で見張りをしている。メリサの、急ぎ足の足音だけが、唯一の音だった。
数分後、彼女は、正面玄関に到着した。そして、そこには、門のランタンの、薄暗い光の下、ササのシルエットが、既に、立って待っていた。
「来ないかと思ったわ、メリサ」と、彼女は言った。その声には、傲慢な響きがあったが、奇妙な、わずかな優しさが、混じっていた。
メリサは、それを無視し、二人の距離が、ほんの数歩になるまで、歩き続けた。
「あなたの手紙、読んだわ、ササ」と、メリサは、単刀直入に言った。「私に、何を望むの? 私を、罠に嵌めるつも――」
ササの手のひらが、ひらりと振られ、彼女の言葉を遮った。
「まあ、十分だ」と、ササは言い添え、無理やり作ったような薄い笑みを、その顔に浮かべた。「その話は、今はやめときましょ。まずは、ミラの健康のことを、考えなさい。もし、ミラの容態がまだ不安定なら、あなたの計画は、無駄になるわよ。」
ササの、その見下したような態度に、メリサの血が、沸騰した。怒りが、熱く、息苦しく、胸にこみ上げてくるのを感じた。だが、彼女は、それを飲み込んだ。今、逆らう勇気は、なかった。腕の中の、ミラの重荷が、ますます、重く感じられた。
ササの指示で、そびえ立つ鉄の門が、軋む音を立てて、開き始めた。
「さあ、お行きなさい」と、ササは続けた。その表情は、相変わらず、読み取ることが難しい。「ミラを、そして、この孤児院の、他の子供たちを、救いなさい。」




