第22章救いの錨
メリサの言葉は、もはや命令としてではなく、救いの錨として、空気の中に漂っていた。サンディとミラの肩から、緊張がふっと消え、代わりに、胸の中にじわりと広がる、温かい希望の光が感じられた。ついさっきまで、煤のように真っ黒だった未来に、一点の光が灯ったのだ。
「どこへ行くんですか、メリサ姉さん? 僕たちの目的地は、どこです?」
サンディの声は和らぎ、もう先ほどまでの鋭い詰問の響きはなかった。彼が見つめる先で、メリサは新たな目的を得て動き出し、まるで数瞬前の心の葛藤などなかったかのように、床からトマトの籠を拾い上げていた。
「目的は、一つだけ」と、メリサは答えた。その目は二人ではなく、部屋の向こう側を見据えている。「私たちが隠れるのに、唯一、最も安全な場所。」
「それは、どこ!?」と、ミラが叫んだ。好奇心が、恐怖を上回っていた。
答えずに、メリサは踵を返した。その足取りは、まだ戸口の近くで固まっているサンディとミラを残し、支配者の机へと、まっすぐに向かう。その指が、開かれたまま置かれていた一つの書類の上に、降り立った。それは、サンディの目にも見覚えのある計画書。世界のあちこちにある高級住宅地の場所を示す、小さな地図が添えられている。
「私たちは、行くわ……」
メリサは、わざと言葉を区切った。その人差し指が、書類に添付された地図のある一点を、強く押した。
「……ヴァーニへ。」
彼女は体を起こし、今やその視線は、二人を捉えて離さない。「そこへ行くの」と、彼女は続けた。その口調は、一切の議論の余地を残さない、毅然としたものだった。「ジャミル様と、ハン様の後を追って。」
その一つの名が、ミラの耳を刺した。ジャミル。希望に彩られたばかりのその表情が、困惑に歪む。「い、いつからジャミル兄様はヴァーニに? 明日、イグニスター学園へ行かれると、デルヴィ奥様は……なんで、急に――」
「話は後!」と、メリサは素早く遮った。彼女はもう、二人の方へ歩き返してきていた。その眼差しが、切迫を物語っている。「時間がないの。急いで、一番大事なものだけまとめて。五分後に、裏の倉庫で会いましょ!」
その命令は、絶対だった。一言もなく、サンディとミラは互いに視線を交わし、そして同時に頷いた。三つの影は素早く動き、女主人の執務室の息詰まる静寂を後に、孤児院の長い廊下へと吸い込まれていった。
太陽は西に大きく傾き、孤児院の窓から黄金色の光を投げかけていた。メイン廊下の大時計は、午後二時三十一分を指している。メリサにとって、廊下は違って感じられた。普段は音楽のように聞こえる幼児たちの陽気な笑い声が、今や、間もなく置き去りにする世界の、反響のように聞こえる。料理、掃除、収穫――それぞれの仕事に忙しい使用人たちの喧騒が、彼女の逃避行の背景音となっていた。
その忙しさの中で、メリサは、異質な存在だった。彼女は使用人の制服を脱ぎ捨て、シンプルな普段着に着替えていた。髪型はいつも通りだったが、その表情は、苦労して身に着けた、仮面だった。その微笑みは、彼女自身の顔の上で、どこか異質なものに感じられた――あまりにも大きく、あまりにも明るく、しかし、決して、その瞳には届いていない。
他の使用人とすれ違う時、彼女はその微笑みで挨拶を返した。内なる嵐を隠すための、陽気な演技。その足取りはもはや緊張を運ばず、わざとらしく作られた、軽やかなオーラを纏っていた。
不意に、鬼ごっこをしていた三人の幼い子供たちが、彼女の足にぶつかった。その小さな衝突は、彼女を揺るがせなかった。むしろ、彼女はそれを歓迎し、その無垢な瞳を見つめるために屈み込み、まるで彼らから最後の力を引き出すかのようにした。その日初めて、彼女は心から微笑み、母親のような優しさで、一人ひとりの頭を撫でた。
「次からは、遊ぶ時、気をつけるのよ」と、彼女は優しく言った。「重い物を持ってる使用人の人たちが、たくさんいるんだから。もし、あなたたちが怪我でもしたら、どうするの? 毎日、お薬を飲んで、注射されなきゃいけなくなってもいいの?」
その質問の連なりは、脅しではなかった。彼女が、自らの心配を隠すために使った、盾だった。
「嫌だ!」と、薄緑色の髪の小さな女の子が叫んだ。その顔は、恐怖で青ざめている。
彼らの答えは、同じような表情と共に、一斉に返ってきた。バケツやモップがぶつかる音の中、メリサは再び、今度はより個人的な口調で、話しかけた。
「それなら、あなたたちは、早く中に入りなさい。いい子にして、ちゃんと食べて、ちゃんと寝るのよ。夢が叶うように、一生懸命、勉強するの。……そして、あなた……エルヴィンダ。」
メリサは、二つ結びの、暗い赤毛の少女をまっすぐに見つめた。「あなたが、この中で一番お姉さんよ。」彼女は、その少女と視線を合わせた。「弟や妹たちを、守ってあげて。もし、誰かがこの子たちを傷つけようとしたら、怖がらないで。あなたの恐怖心じゃなく、あなたの力で、戦うのよ。」
エルヴィンダは、ただ、見つめ返すことしかできなかった。緊張で、その口は固く結ばれている。
不意に、小さな手が、メリサの肩に触れた。「メリサ姉ちゃん……」と、肩までのピンク色の髪の少女が、か細い声で呼んだ。
メリサは振り返った。「どうしたの、モモギ?」
「メリサ姉ちゃん、どこ行くの? なんでそんなお洒落してるの? いつもの姉ちゃんと違う!」
メリサは小さく笑った。少し、脆く聞こえる笑い声だった。「すごいわね、モモギ。気づいたの。今日は、外で大事な用事があるの。すぐ帰るわ。たぶん、明日には。」
その一音一音は嘘であり、まるでガラスの破片を飲み込むような味がした。仮面が崩れ落ちそうになるのを、後悔の震えを、彼女は下唇を噛んで堪えなければならなかった。
「私も行く!」と、緑髪の少年、エズが言った。「ずっとここにいるの、飽き飽きだよ!」
「そうよ! エズの言う通り」と、モモギが続いた。その金色の瞳が、きらきらと輝いている。「私たちも、メリサ姉ちゃんと一緒に行きたい。」
その無邪気な願いは、サンディの尋問よりも、ずっと強く彼女を打ちのめした。メリサは黙り込み、混乱した頭の中で、適切な言葉の連なりを探した。彼女は、深く息を吸い込んだ。
「外の世界は、あなたたちが想像するほど、きれいな場所じゃないの」と、彼女は、声を優しく保とうと努めながら言った。「外には、あなたたちみたいに小さな子を傷つける、悪い人たちがたくさんいるのよ。」
「本当!?」と、エルヴィンダが、目を見開いて尋ねた。
「ええ」と、メリサは素早く、頷きながら答えた。「だから、あなたたちは、ここにいなさい。絶対に、逃げ出そうなんて思わないこと。分かった?」
三人は、一斉に、素直に頷いた。
それで十分だと感じ、メリサは立ち上がり、少し皺になった服を直した。「じゃあ、行ってくるわね。何かあったら、セルヴィお姉ちゃんに言いなさい。あの子が、あなたたちの面倒を見てくれるから。」
「うん!」と、エズが呟いた。
「じゃあね、また明日!」と、エルヴィンダが、手を振った。
「バイバイ!」と、モモギが明るく言い添えた。
メリサの顔の微笑みは、廊下の角を曲がるまで、保たれた。角を曲がり、その背中が見えなくなるとすぐに、その微笑みは崩れ落ちた。顎がこわばり、拳を握りしめ、その指の関節が白くなる。怒りと絶望が、内側で沸騰していた。自分自身のためではない。この狼の巣窟に、置き去りにせざるを得ない子供たちの、運命のために。
急がなければ。手遅れになる前に。
第1話から今までこの物語を読んでくださっている皆さま、本当に心から感謝いたします。
新しいエピソードの投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
持病が再発してしまい、しばらくの間、頭がうまく働かず、執筆が思うように進められませんでした。
ですが、今回は必ず最後まで、ジャミル、ミラ、サンディ、メリサ、そしてハン、それぞれの問題がすべて解決するところまで書き切るつもりです。
もしこの作品を気に入ってくださったなら、感想や「いいね」などで応援していただけると、とても励みになります。
本当にありがとうございます。
心を込めて。
サイフル・バフリ




