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第20章嘘の香り

鍵が回るカチリという音が耳をつんざき、女主人マトリアークの部屋に濃密な静寂を閉じ込めた。メリサは冷たい扉の葉に寄りかかり、床に血だまりを作って倒れている姿を見ないように、必死で喘いだ。鉄錆の生臭い匂いと、あの女がいつも纏っていた百合の香水が混じり合い、鼻をつき、吐き気を催させた。


これは、単なる抵抗ではない。残忍な犯罪だ。そして、その代償は、死。指先の震えが無言の証人となっていたが、他にどんな選択肢があったというのだろう? この足枷は、断ち切らねばならなかった。どんな手段を使ってでも。


冷たい床を踏む裸足の一歩一歩が、奇妙に感じられた。部屋の中央に積まれた自分の服へと向かう、音のない足跡。だが、何かが彼女を窓辺へと引き寄せた。外では、二階の高さから、草原が緑の絨毯のように広がっている。子供たちが笑い、走り回り、そして――自分たちがどれほど残酷な世界にいるのか気づかずに――世界について学ぶ場所。


強い風はなく、ただ、時折乾いた葉や草を飛ばす、優しいそよ風が吹いているだけ。西に傾き始めた太陽が、オレンジ色の光を注ぎ、夕暮れの訪れを告げていた。皮肉なことに、その静けさこそが、彼女を刺した。


小さな王子の顔が、脳裏をよぎる――彼に囁いた、約束。必ず後を追うという、約束。途端に、冷たい不安が腹の底を這い上がった。彼女は、壊れた人形のような動きで振り返り、急いで自分の服を掴んだ。


分厚いオーク材の扉の向こう側では、静寂は異なる質を帯びていた。待ち望む気持ちと、不安に満ちていた。サンディはただ石のように固まることしかできず、その背中は、後ろで落ち着きなく立つミラの唯一の景色となっていた。彼の心の中では、聞こえず、しかし破壊的なほどに、激しい議論が繰り広げられていた。


「ねえ……これから、どうしよう? 私、メリサ姉ちゃんのことが、すごく心配……」


ミラの優しい質問は、誰にも触れられずに、宙に漂った。サンディは、答えない。その手は体の脇で固く握りしめられ、指の関節が白くなっていた。下の磨かれた大理石の床が、怒りに満ちた視線の的となっている。


(俺は、まだあんたに信頼される資格があるのか、ジャミル兄様!?)


その眉間には、深い皺が刻まれている。


(俺は……あんたとの約束を汚し、破った。あんたの一番近しい人を、辱めたんだ。俺は、何も――)


その苦い物思いは、扉の向こうから聞こえてきた、ゴッ、という鈍い物音によって、打ち砕かれた。サンディを、現実に引き戻すには十分な音だった。その目が見開かれる。一秒後、彼は既に前へ飛び出し、その木の扉に拳を叩きつけていた。


「メリサ姉さん……!」


パニックに陥った彼の打撃の下で、扉が揺れる。ミラは、青白い顔で、その腕を引いた。


「サンディ兄さん、やめて! そんなに強く叩いたら、誰かに聞かれちゃう――」


その言葉は、内側から鍵が回るカチリという音によって、途切れた。サンディは一歩下がり、息を殺す。扉が開き、そこに、メリサが立っていた。服は、もうきちんと着こなされている。顔は少し青白いが。彼女は、無事だった。


サンディは、ためらわなかった。前に飛び出し、メリサが消えてしまうのを恐れるかのように、固く、固く抱きしめた。ミラも後に続き、それまで堪えていた涙が、ついに溢れ出した。彼女もまた、その抱擁の中に飛び込んでいく。メリサは少しよろめき、そして体勢を立て直すと、その二人の子供を抱きしめ返した。


「メリサ姉さん! 無事で、よかった……」


サンディの声は、安堵と、それよりももっと深い何か――口にできない罪悪感――に満ちて、掠れていた。


ミラにとって、その短い別れは、永遠のようにも感じられた。その嗚咽は、メリサの肩で押し殺される。母親の愛撫のように優しい動きで、メリサの両手が、震える二人の背中をさすった。しばらくして、彼女は、ゆっくりとその抱擁を解いた。


「ミラ、サンディ。聞いて!」と、彼女は言った。その口調は毅然としていたが、そこには優しさが滲んでいた。彼女は、二人の顔を、一人ずつ、じっと見つめた。「いつまでも、ここにいるわけにはいかない。この場所は……」


その声は、喉に目に見えない棘が刺さったかのように、詰まった。一瞬、その視線は虚ろになり、サンディとミラを通り抜け、部屋の中の壁へと戻った――額縁に収められた、哀れな子供たちの顔の列へ。『売却済み』、『失敗作』と書かれた赤いスタンプが、網膜を焼くように感じられた。


気まずい沈黙が、三人の間に漂った。まだ涙に濡れた目で、ミラが、勇気を振り絞った。


「どうして、メリサ姉ちゃん? この場所に、何があるの? なんで、黙っちゃうの?」


その質問の連なりが、メリサを恐ろしいフラッシュバックから引き戻した。彼女は素早く首を振り、唇に薄い笑みを無理やり浮かべた。


「ううん……何でもないの。」その声は、少し揺れていた。「とにかく、ここから早く出ないと。手遅れになる前に。」


「待ってください、メリサ姉さん」と、サンディが言った。その目が細められる。何かが、おかしい。彼は、今しがた気づいた。メリサの後ろの部屋は、静かだ。メリサしか、いない。「メリサ姉さんの言ってることが、本当に分かりません。デルヴィ奥様はどこです? なぜ、メリサ姉さん一人でここに?」


その質問は、見えない鉄槌となって、彼女の胸を打ちつけた。


(この問いに、答えるべき? それとも、無視する……? もし答えたら、サンディとミラは、私をどう思うだろう? 私を憎む? それとも、その逆……?)


「メリサ姉ちゃん!」


ミラの、か細い声は、ほとんど聞こえなかったが、この静寂の中では、あまりにも大きく響いた。


メリサは、まだ自分自身のジレンマに囚われ、安全な答えのパズルのピースを探していた。


「メリサ姉さん!!」


今度は、サンディが呼んだ。その口調は、より切迫している。「なんで、黙ってるんですか? 何か、私たちに隠してるんですか?」


メリサは深く息を吸い込み、荒れ狂う心臓を落ち着かせようとした。その視線が、探るようなサンディの目とぶつかる。


「ううん……何も、隠してないわ……」


「本当に何も隠してないなら、なんでさっきからずっと黙ってるんですか?」と、サンディは素早く、鋭い声で言い返した。


「私は……」メリサは一度言葉を切り、唯一の盾として頭に浮かんだ名前を口にした。「……ただ、ジャミル様のことが、心配だっただけです。」


嘘。舌の上で、苦い味がした。だが、その名前を口にすることは、功を奏した。ミラの表情が、途端に変わる。深い思慕と悲しみが、その顔に影を落とした。彼女は知らなかった――知る由もなかった――あの小さな王子が、もはやこの屋敷にはいないということを。その秘密を背負っているのは、サンディとメリサだけだった。

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