第19章あの日の約束
乾いた風が道の埃をさらい、タウンゼンドの小さな街の隅々へと、しゃがれた囁きを送っていた。先ほどまで市場の上で焼き付くようだった日差しは、今やその鋭さを失い、気だるい温かさに変わっていた。
ジャミルは、もう自分がどこにいるのか分からなかった。意識は、浮かんでは沈む。分かっているのは、ただ、自分の打ちのめされた小さな体が、見知らぬ男の腕に抱かれているということだけ。体力は完全に尽き果て、関節という関節が軋むように痛む。彼は、抗うのをやめた。重い瞼が、ついに固く閉じられるのに、身を任せた。
男の足取りは、確かで、リズミカルだった。それは奇妙な落ち着きをもたらし、ジャミルを眠りへと誘うには十分だった。ただ目を閉じていただけの状態から、その意識は本当に、深い眠りへと滑り落ちていく。やがて、その整った呼吸から、かすかな寝息が聞こえ始めた。男は俯き、腕の中の少年を一瞥する。その唇から、静かなくすくすという笑い声が漏れ、ほとんど聞こえない呟きが続いた。
「どうやら、随分と疲れる一日だったようだな、坊主。」
歩みを止めることなく、その足はイネ科の草原を切り裂く土の道を踏みしめ、一つの隠れ家――ズルヴィアンの家へと、向かい続けた。
***
別の場所――まだタウンゼンドの街の中。空気は、より重く、鉄錆の匂いがした。その一撃は、ハンの肺から全ての空気を奪い去った。彼は崩れ落ち、膝が先に地面を打つ。世界が回転し、腹部に鋭い痛みが爆ぜた。顔はすでに青黒い痣のキャンバスと化し、必死に酸素を求める呼吸は途切れ途切れだ。
咳き込む。口から、どろりとした赤い液体が噴き出し、裂けた下唇に濡れた跡を残した。もう、限界だった。彼の中には、もはや抵抗の力は残っていなかった。
だが、目の前にそびえ立つ屈強な男にとって、それはまだ十分ではなかった。その怒りはまだ燃え盛り、捌け口を求めている。一つの乱暴な動きで、彼はハンの薄汚れた服の襟を掴み、その華奢な体を無理やり引きずり上げた。首が絞まるような感覚が、ハンを襲う。
「さっさと吐け。あのクソガキはどこへ行きやがった!?」
掴む力が、強まる。ハンから漏れたのは、か細い呻き声だけだった。冷たい質問が、答えのないまま、宙に漂う。なすすべもなく吊り上げられ、体は地面からわずかに浮いていた。
答えが得られず、さらに二発の拳が、その腹部にめり込んだ。ハンはただ頬を膨らませ、苛む痛みの波に耐えることしかできない。既に腫れ上がった両目は、今や完全に閉じられていた。
「まだ生きていたいなら、さっさと――」
その言葉は、途切れた。振りかぶられた三発目の拳が、空中で、ぴたりと止まった。屈強な男の背後、ほとんど音もなく、三人の若者と一人の、中年の男が現れていた。別の手が、素早く、そして静かに、空中の男の手首を掴み、鋼のような力で、それを制止していた。
「そいつを離せ!」
その声は、無造作な黒髪の男から発せられた。毅然として、突き刺すような声だった。
その命令を聞き、ハンは腫れ上がった瞼を無理やりこじ開け、霞む視界の中で、声の主を探した。
屈強な男は唸った。腕を振り、黒髪の男の拘束を解く。ハンを完全に離すことなく、その足を地面に戻させると、体をひねった。その視線は、短刀のように鋭く、目の前の四人を捉えて離さない。
「離さなかったら、どうするってんだ、あぁ!?」
その挑戦に、最初の救助者の右隣にいた、灰色の髪の男が、薄く、にやりと笑った。それまで閉じていた目が、今や細く、鋭く開かれている。明らかに、その感情の導火線は、ひどく短い。だが、彼が一歩前に出ようとした、その時。真ん中に立つクリーム色の髪の男の腕が、それを遮った。無言の、合図。
落ち着いた、しかし重みのある声で、クリーム色の髪の男が答えた。「この件、当局に報告させてもらう。君は――」
男の口から、爆笑が迸った。大きく、傲慢で、交差点まで響き渡る。当局という脅しは、彼にとっては、今まで聞いた中で最も陳腐な冗談に聞こえた。
その笑い声を見て、灰色の髪の男の顎が、きつく食いしばられた。一度は抑えられた怒りが、再び溢れ出す。「てめぇ! よくもジェーンの言葉を笑いやがったな!」と、彼は抑えた声で唸った。
ジェーン、クリーム色の髪の男は、横目で仲間を一瞥した。彼は、ゆっくりと腕を下ろす。その左側では、白髪交じりの髪の中年男が、ただ、斜に構えて微笑んでいるだけだった。目は閉じられ、両腕は胸の前で組まれている。彼は黙っていたが、その全身が、交渉など時間の無駄だ、と叫んでいた。
屈強な男の笑い声はまだ収まらず、今や腹を抱えている。
「……仕方ないか。」
ジェーンは、諦めたように肩を少し落とし、ため息をついた。
一番前に立っていた黒髪の男が、その合図を捉えた。彼は一歩下がり、空間を作る。次の瞬間、その中年男が弾丸のように飛び出していた。その動きは霞み、空気を切り裂く。まだ笑いの中にいて無防備だった屈強な男の顎を、一発の拳が、撃ち抜いた。
ゴッ!
屈強な男の世界が、一瞬、回転する。予期せぬ一撃に、彼は後ろへよろめいた。ハンを掴んでいた力は、反射的に解かれる。ハンは、空の袋のように地面に崩れ落ち、うつ伏せのまま、動かなくなった。
「この野郎! よくも殴りやがったな。」
「先に警告はしたはずだ」と、ジェーンが素早く、冷たい声で言い添えた。「だが、君はそれを無視し、嘲笑った。」
怒りに唸りながら、屈強な男は、やみくもな拳を繰り出した。だが、中年男の目には、その攻撃はスローモーションのように映っていた。彼は、左へ、いとも簡単に身をかわし、相手の勢いを空転させる。
その瞬間、他の二人の若者が、異なる角度から同時に飛びかかり、一瞬でその男を無力化した。屈強な男は、まだ意識はあったが、もはや抵抗できずに、鈍い音を立てて地面に倒れた。
ジェーンは、その騒ぎを通り過ぎ、うつ伏せに倒れているハンの元へ歩み寄った。
「き、貴様ら……一体、何者だ……?」と、屈強な男が、痛みをこらえながら、掠れた声で尋ねた。
静寂。その問いは、答えられることなく、交差点の重い空気に吸い込まれていった。
ジェーンは、もうハンの隣に跪いていた。慎重に、その体を仰向けにする。
「おい……起きろ」と、ジェーンは言い、ハンの肩を優しく揺さぶった。反応はない。「さっさと起きろ。」
静寂が、彼に答えた。ハンの体は力なく、生命の気配が少しも感じられない。
ジェーンは、ハンの首筋に二本の指を当て、脈を探った。……あった。ひどく弱いが、確かにある。彼は、もう少し強く、ハンの頬を叩いた。
「おい! 聞こえるか!」
ジェーンの声は、今や、より切迫していた。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、ハンの瞼が震えた。血に濡れた唇が動き、言葉を形作ろうとする。ジェーンは、耳を寄せた。
血と、絶望に満ちた、しゃがれた囁きが、ハンの口から漏れた。
「……連れて、いってくれ……あそこへ……」
「どこへだ?」と、ジェーンは素早く尋ねた。
ハンの目が、わずかに開かれた。その視線は虚ろだが、恐怖に満ち、ジェーンの顔に固定されている。
「……『ミューズ』の……拠点へ……おれは……帰りたい……」




