5話 帝都ギルド本部
僕が連れていかれた先は帝都の冒険者ギルド前だった。
「立派な建物ね…」
「そうでしょう。まぁこれでも俺様たちが入ったころは相当栄えてたんでね」
ルナ様のセリフにジョージがうなずく。でもそんなギルドも今はマスターが居ない。
「何でこんな立派な組織の主が居ないのさ…」
「それは話せば長くなるんですがね…」
ジョージは扉を開ける。中の酒場には人が少なかった。
「お帰りなさいませジョージ様…こちらはお客人ですか?」
きれいな受付嬢のお姉さんがジョージに話しかける。
「ああ、大事な新顔だ。それで?あいつらはまた地下闘技場か?」
「えぇ…これで3日目です」
受付嬢は眉をしかめる。
「しょうがない奴らだ……話付けてくる。マリアさんとルナ様は待っててくださいや」
ジョージはそう言うと地下に続く階段を降りていくので僕もついていく。
「一体何があったのさ」
「いやさっき言ったでしょう。揉めてるって」
階段をしばらく下りると鉄製の扉がありジョージがそれを開いた。
中は凄いことになっていた。
「ハァ…ハァ…いい加減折れろってアーロンさぁ…」
「ガハハ無理だなそんなんじゃ俺は引き受けねぇぞ……」
「いや……あの……」
目の前で大男が二人で言い争っていた。片方は背が低いが早そうな男で、もう片方は赤い肌の大柄な男だ。
「一体何で喧嘩してるの…」
「あぁギルドマスターの地位に誰が付くかで争ってんですよ」
「やっぱりギルドっていうのは荒くれ物が多いんですね…力で頂点につこうとするなんて」
「いや?あれは役職の押し付け合いですぜ」
「え?役職?」
「ええ、あいつらだけじゃなくギルドマスターなんてめんどくさくて皆やりたがらないから」
「え?じゃあずっと押し付けあってるの?」
「アーロンは強いんだからさぁ荒くれ物を束ねるギルマスに向いてると思いますぜ」
「俺みてぇなバカに務まるわけねぇだろうが!ルドルフここはお前みたいなインテリ野郎がなるべきだ!」
「え……え?」
「また言い争ってる……」
僕が呆れているとジョージは扉を開けて中に入っていき、そこにいた女の子に話しかける。
「おいサラ。またやってんのか」
サラと呼ばれた金髪の女の子は驚いた声を上げて言う。
「あぁジョージのおっさん。お帰り~村の見張りはどうだった?そうだよまただよ~」
「確かギルマスは投票するとか言ってただろ?」
「それが割れちゃってね。それで散々な押し付け合いの結果アーロンとルドルフのどっちかにすることにしたんだけど…」
「そ、そんなに揉めてて大丈夫なの?」
マリアが心配そうな顔で言う。
「まぁ大丈夫っしょ…」
するとジョージが大声を出す。
「落ち着けお前ら!」
「なんだ…ジョージか」
「ジョージさんお帰りなさい。どうでしたか?」
「あぁ……村の方は大丈夫だったよ。それよりお前らギルマスの投票はどうなった?」
すると二人は同時に言う。
「「で?どっちがギルマスにふさわしいと思う?」」
するとジョージは僕の腕をとって。
「レンの旦那だな!この方が次のマスターにふさわしい!」
「え?僕?」
周囲の冒険者たちの視線が刺さる。
「あのね。ジョージいくらやりたくないからって子供連れてきてマスターにするって駄目じゃないかな…」
サラが呆れた顔で言う。
「いや。レンの旦那はな、めっちゃ優秀だぜ!」
「おいまさか俺様達にこのガキの指示に従えって言ってんのか?」
アーロンが巨体をゆすりながら僕の前に来る。
「あ……あの……」
「このガキに一体何が出来るってんだ?」
すると辺りに警報が鳴り響く。
『緊急警報。帝都付近に魔物の群れが襲来しました』
「「なんだって!?」」
周囲にどよめきが広がる。するとアーロンが金棒を持って
「ったく毎度毎度仕方ねぇなァ!行くぞ!」
その瞬間一同が揃ってバラバラに走っていく。
「旦那!マリア姉さんとルナ様も連れて行きましょうぜ。能力を示すチャンスだぜ」
そう言ってジョージは僕を連れて走っていく。