3話 レンのトンデモステータス
村人全員が集まった広場で老司祭は説明を始めようとする。
「それで?司祭の旦那はこのレンとかいう少年にどんなスキルがあると言うんだ?」
ジョージが老司祭にそう尋ねると司祭は軽く咳払いをしてこう言った。
「まずスキルについては置いておいて特筆すべきはそのステータスじゃのう」
そういって司祭は目の前のステータスケージを出す。ジョージは人を見るとき最も先に見るステータスを見た。
「武術Gランク、魔法Gランク…これじゃレンのこれからの成長分の上積みがあることを考慮してもとても戦闘どころか冒険すらできねぇじゃねぇかよ。まぁ当人はする気はないみたいだがね」
ジョージはそう言ってため息をつく。こんなものを見せられて一体何の役に立つというのかという顔だ…確かにそれは僕も思うこれだから冒険者には向かないのだ。
しかしマリアはしばらく見ていく。
「何だ…知力はSSランクじゃないか…この子は君が思ったいるより優秀よ」
「ああん?知力って後衛の役回りじゃねぇか…あぁだから魔術書を理解できたんか。さすがの神様も一芸くらいはくれたわけだな。まぁあって困るものでもないしうらやましいが戦闘関連スキルがないんじゃ意味ないな。まぁ学者にでもなれ」
ジョージはそう言って僕の頭をくしゃくしゃとなでる。
「あのジョージさん痛いです…」
「ガハハ!立派な人間に出会えて俺もうれしいよ」
ジョージはそう言って高笑いする。しかしマリアはまだ続ける。
「何を言ってるんだ?ステータスはそれ以外でもあるぞ」
「ほかには何があるってんだ」
マリアは読み上げていく。
「家事スキルSSランク」
「メイドとかに多い力だな。基本的生活習慣は冒険者に必須だ。天は二物を与えたか珍しいな」
「コミュニケーション能力SSランク」
「初めての奴と出会うときこれがあるかないかで人脈に天と地ほどの差が出るな。天は三ものを与えたな…」
「洞察力SSランク」
「ふぅん…天は四物を…っておい!いくら何でもおかしいだろ!何で4つもSSランクのものがあんだよ!」
「四つではないわ。魔力と武術以外全部SSランクよ。幸運補正とか統率力とか含めてね」
「お、おい冗談はやめろ司祭…そんなことが通んのかよ。きっと合成か何かだろ?」
ジョージは震える声で老司祭に聞いてくる。
「いや事実は事実なのでな。レンにはあらゆる才能があるんじゃ。正に神童じゃよ」
老司祭は僕を見据えて言う。
「総合的はお主のランクはSランクじゃ。なかなかここまで揃えているものは知らんぞ」
えぇ!僕ってそんなにすごい人だったの?でも僕には何の才能もないし…
「や、やっぱり僕はおかしいですよね…」
僕がそうつぶやくとジョージが否定する。
「そりゃねぇな。少なくともさっきの件はアンタじゃなければ解決できなかった。状況を見渡す洞察力、深い魔術の知識、そして俺を動かせる統率力…俺より年下の奴に指図されんのか気に食わないが。お前のだけは受け入れられた」
マリアもそれに続く。
「それに何よりも幸運地の高さだ。「偶然」エルフの里が近くにあり「偶然」私が通りかかり「偶然」対処法を知っていてあくまで「偶然」近くに「偶然」購入されたばかりのポーションがあった。ここまで来れば必然を疑いたくなるな」
「つまり僕が幸運を引き寄せたと…」
「あぁそういうことになるな…」
僕が驚いた。まさか自分にここまでの力があったなんて…
でも確かに何故か昔の記憶がほかの人たちより残っていたり、人より運がいいと感じたりすることは多かった気がする…
周囲の人々がざわめく。
「レン?!お前そんなすげぇ奴だったのか」
「もしかしたら俺とお前は生き別れの兄弟かもしれないぜ!」
僕がすごいと分かったからか皆親しげに話しかけてくる。
「やい沈まれ沈まれー!」
ジョージが大声を出して止める。
「ンなこと言われたってレンの旦那だって混乱するでしょうよ。でもまさかアンタがそんなに凄い人間だったとはね…」
ジョージは少し感心したような顔をして言ってくる。
「それでレンよ。おぬしは将来何になりたい。まぁ無論これだけの才能じゃ何をやっても成功は間違いないじゃろ」
老司祭が訪ねてくる。僕が一番やりたいこと…
「そうですね…家業を継ぎます!」
僕がそう言い放った瞬間周囲の人間が丸ごとぶっ倒れた。
「旦那ァ!その答えはないでしょうよ!俺らアンタに1ミリくらい期待してたのに!」
「そうだぞ!せっかくここまでの能力があるんだ。世のため己のために使うのが必定だろう?」
「そんなこと言われたって僕にふさわしい仕事なんて出入り商人くらいだよ!両親はいないしさ…」
「そんなこと言わなくてもって…両親いないのか!?その幼さで?」
僕の母親は幼いころに死んでしまい、父親も盗賊に襲われて亡くなった。だから今は僕一人でしかない。どっちも僕がもっと強ければ守れたものなのに…
ゴーン、ゴーン!
「あっ、そろそろ時間だ…」
壁の時計が鳴り響き日が暮れ始めたことを示す。
「僕そろそろ伯爵家の御用を聞きに行かなきゃ…」
急がなきゃ…じゃないとあの令嬢のせいでとんでもないことになる気がする…
僕は走り出していく。