14話 恐ろしい怪物&新しい仲間
僕の感は悪い方にあたることが多い。目の前に現れたのは巨大な生き物だった。
ガルル!!ワォーン!!奥から声が聞こえて来たと思ったら目の前に巨大な犬が現れて来た。しかもただの犬ではない…三つ首の生物一種のケルベロスだ。
「この怪物はこの地域の門番と言われとるケルベロスやないか!刺激しない限り大仰に活動しないと聞いて今ここに来たんやぞ!」
フィンは狼狽するが、狼狽したところで助かる命もない。
「マリア!サラ!大丈夫?!」
「えぇ少々驚きましたが…この怪物め!レンを襲う気だな!」
「まぁまずはさっきの盗賊ゴブリンを喰い殺されないようにしないと。じゃないと証拠になんないしね」
マリアとサラは武器を構え、ケルベロスとにらみ合う。
「このケルベロスはだいぶ狂暴化している…普段なら刺激しないように横を速く通り抜けることも対処法の一つだと聞いたことあるけど…」
「さすがレンちゃん。何でも知ってるねぇ。でもそれじゃきついかも…」
「ではなぜここまで荒れ狂っている…まさか」
「うん…残念だけどね」
僕とマリアの視線がコブリン盗賊団に集まる。
「ん?あぁあの犬っころを盗賊に利用してたかだって?そりゃ利用するだろ…ガキを犬質に取ったらすぐに従ったよ!アハハ!」
「貴様ァ!動物愛護の精神が無いのか!」
「そんな道徳心が微塵にもあったら俺は現在盗賊なんかしてねぇと思うぜw」
「貴様…」
激高するマリア、抑えようと僕が諫める。
「待て待て…今対応すべきは目の前の問題でしょ?」
「あ、あぁそうだ。失礼したなレン…今お姉さんが片付けてやる」
「ちょいちょい!それはウチも同じだし!」
「ガルゥ!!」
マリアにケルベロスが嚙みついた。しかしマリアは剣を打ち込んでいる。ガリガリとケルベロスは剣を噛もうとする。
剣を噛もうとするなんて…包丁を噛もうとする人間がいないのと一緒でそんな事魔物とはいえ生物の行動としてはありえない…おそらく狂暴化したことに関係あるんだろう。
「あれは…魔素過剰だな。生物のエネルギーが多すぎて暴走してる…それを引き起こす方法にはいくつか種類があるけれど…対処の仕方は一緒だよ」
「ふぅん…良くそれを分析できんなぁ…天才か」
「フィン。どこかに魔素減退のポーションはない?」
「んなもんある訳…運よくあったわ!あるギルドに売りに行った時に持ってく数を間違えた阿呆がいたらしくてな。ついでに戻そうとしとったんやが…」
「それを頂戴!代金は…」
「天引きでええわ!後で報酬払うときに調整するでんな」
僕はそれを受け取ってからマリアに投げる。
「マリア!これを受け取って!」
「了解した」
マリアはそれを受け取るとケルベロスの口の中に思いっきりポーションをぶち込んだ!
ケルベロスは最初は薬が苦いのか暴れていたが、次第に大人しくなっていく。そして倒れこんだ…
「チッ…肝心な時に役に立た…ゲホ」
「しばらく静かにしてて。カス」
盗賊の頭はシルファに蹴飛ばされ気絶する。
馬車から降りた僕とマリア、サラはケルベロスに集合する。
「間に合わなかったようだな…」
「うん…もう冷たくなってるよ」
あの手の薬は生物の性能を上げる代わりに寿命を対価にするものだから…時間から考えて既にこのケルベロスの生命力はもう微かしかないのだ。悉くあの盗賊はクソだけれど助けられなかった僕も駄目だ…
「サラ、楽にしてあげて」
「うん…」
サラがケルベロスの喉元を切ろうとした時…ケルベロスは最後の力を振り絞って頭を動かす。
「ワオン…」
その声に呼応するように奥の茂みから小さな犬がやって来た。
「これは…小ケルベロス…そうか先ほどの犬質か。レン」
「そうだね」
僕が寮手を広げると小ケルベロスは僕に向かって走って来た。と言っても僕より大きいけれども。
「クゥン…」
僕の身体が光りだす。
「これはテイマー契約でんな。人と魔物が心通わせることでできる契約。まぁ適正ってもんがあるんやけど…」
降りて来たフィンが書類を見る。
「レンのテイマー適正は…S+ランク?!おいおいこれって護国龍も数体従えられるって言うレベルやで?!それに動物からの好感度もSランク…ほんまに凄いなぁ…」
フィンは驚嘆するが僕もそう思い、決めた。
「僕この犬を育てるよ。安心して一生を共にこの子と生きるから!」
そう母ケルベロスに呼びかけると彼女はどこか笑ったように目を閉じた。
サラがすぐに喉を切り裂きケルベロスは眠るように息絶えた。