11話 ギルド集会③
会議場は物々しい雰囲気に包まれていた…とは言ってもその原因の4割は僕のギルドのせいなんだけど…僕の後ろにメンバーたちがたたずんでいる。アーロンとかマリアがいるせいで威圧感が半端ないんだよな…今卓の向こう側にいるギルドマスターたちが下手なことを言ってしまえばすぐに首が飛んでしまうほどの威圧感だ。何でこんなことになったんだろう…
僕がギルド会議に出ると知った時だ。
「旦那。定期会合に行く際は護衛のメンバーを連れて行くのが礼儀ですぜ」
ジョージが僕を見ながらそう言った。
「そういうものなの?ジョージ」
僕が尋ねると返してきたのはアーロンだった。
「おう。なんせギルドの集会ですぜ荒くれ物が多くて仕方ない。だから護衛するんです」
まぁ確かに帝都ってあんまり治安がいい気もしないし、僕に戦闘の才能がないから誰か連れてくことにはなるんだよなぁ…
僕はそう考えながらメンバーを見回した。
「で?誰が行くの?」
僕がそう言うと。
マリアが手を挙げた。
「私が行こう。レンもそうだが私も新参者だ。紹介のために連れて行ってはくれないか?」
「うんそうだね。マリアは一緒の方がいいね」
マリアなら落ち着いて話に参加できるだろうと思った矢先別の手も上がる。
「ならば俺様も行こう」
アーロンだ。アーロンってあの見た目だけどちゃんと参加できるのかなぁ…
「レンも姐さんもルナもまだ新顔だろう。ならばここはこの道20年の俺様が仲介役になってやろうという話だ」
「お前じゃ仲介役にならなかろうよ。怒りで机を裂くのがオチだ」
「何だとルドルフ?!それは前の前の前のその前のギルド会議での話だろ!」
「前科があんのがいけねぇんだよ!普通に考えろ向こうのギルドにだって新顔はたくさんいるんだ。『机を裂こうとするやつがこのギルドのデフォルトです』ってなったらマスターに迷惑がかかるだろうが!」
ルドルフがそうアーロンに嫌味を言う。
「え?ってことはルドルフも来てよ。アーロンを止められるんでしょ?」
「へ?」
ルドルフは少し困惑した後で…
「仕方ないな。俺も行くよ」
と言って手を挙げた。そのままあれよあれよとサラと仲間たちも参加するとかいうことになって僕はほぼメンバーを引き連れていくことになったのだった。
結果がこれである。前を見ると他の4人のギルドマスターは一人くらい連れているだけで後は誰も来ていない。大して僕はと言うとメンバー全員大集合状態で一軍だけおかしくなっている。これでは新人としてバカだと思われるだろう。
恐る恐る見てみると他のギルドマスターや護衛たちは苦笑している。どう考えても子供のお使いを見守る大人たちにしか見えないだろうこれは。
ほどなくして会議が始まった。老獪な男性が話し始める。この男性、歳はとっているが体中に傷があるだけでなく服の下の身体は非常に引き締まり筋肉が付いている。かなりの熟練さが見て取れるな。
「え~では本日の議題は…」
「待たれよアラン殿。その前にやるべきことがあるのではないか?」
アランと呼ばれた男性をカナタが留める。
「本日この場に新たなメンバーが加わっているだろう?紹介するのが筋ではないだろうか」
「了解した。カナタ」
アランはそう言うと僕の方を向いた。
「貴殿。名前は?」
いよいよこの時が来たか僕のターンだ。
僕は立ち上がって一礼する。
「僕はヒスイ村出身のレンと申します。諸事情により先日よりギルド連盟加盟『ケルベロス』のマスターを務めております。不束者ですがどうかよろしくお願いいたします」
僕はそう頭を下げて挨拶を終えた。向こうからの反応は…
「ふむ。年の割にはできる物のようだ」
「フッ、僕が認めたとおりのようで何より」
「えぇ~でも子供でしょう?いくら先代があれだったからと言ってもね~。てかカナタは認めてるしさ」
「と言うかこれで頼りになるのかよ?そもそも体格も戦闘向きじゃないじゃねぇか」
賛否両論だ。まぁ予想していたことだが、なんせ一週間前の僕でも同じ感想が出たのだから。これは早めに自分の有用性を示しておかないと後々の付き合いに苦労するな…
「皆の者落ち着かれよ」
それを抑えたのはアランだった。
「本題からそれる話は止めてほしいの。ではレン、これから共に帝国ギルドを発展させていこうではないか」
「は、はい!」
老獪な男だ。隙を見せたらそのまま握りつぶされるぞこりゃ…
「では本日の主な議題は最近この国を騒がせる盗賊のことだ」
盗賊…あぁ盗賊かぁ…あれやだよね。僕の父も商人してたけど一番恐れていたのが盗賊だった。魔物も怖いけれど確実に悪意を持って攻めてくる盗賊の連中には敵わない。
「盗賊…と言うと三巨頭とその傘下ですか?」
「ほぉ。レンよくその年で三巨頭のことを知っておるな。知識の深いことで吾輩のギルドメンバーにも未だその知識すら足りぬものが大勢いる」
アランがそう感心すると他のマスターたちも感心したようにうなずく。
「何だ案外知っているではないか。この少年知識だけは一丁前だな」
「そりゃそうっしょ。レンちゃんは知力カンストなんだから。この世のあらゆるものに対して造詣が深いしね」
サラが俺を変に持ち上げてくるので僕はまぁまぁ恥ずかしい気持ちになった。
「それでだ。皇帝からもこの問題について迅速に対処せよとのお達しがあってだな…我々ギルド連盟で対策を考えると奏上した。各ギルドも気を付けるように」
アランはそう言ってから話を続けていく。僕はその内容を確認しながら時々口をはさみ挟まれ結局五大ギルドの親睦を深めるという目的は達成できたのだった。