10話 ギルド集会②
「ケルベロスだ!ケルベロスの連中が来やがった!」
「ぐへへ。どんな野犬連中が来るのやら」
荒くれの男たちが路上に沢山這い出ている。
「御者は…ルドルフか。お~いルドルフ!」
「ちっ何だよ。お前ら」
「相変わらず金回りの悪そうな顔しやがって」
「余計なお世話だな」
「まぁそれは良い。それより俺らのギルドに入れよ。どうせ『ケルベロス』には、変なのしかいないだろ?」
「いいや結構。俺にはそれは必要ない」
「何だと?」
冒険者の一人がそう凄む。
「俺には仕えるべき存在ができたからな」
ルドルフがそう言うと中から美しいエルフ、マリアが出てくる。すらりとした体形は見る者の心を奪うらしい。欲に忠実な男たちは興奮し近づいていく。
「ルドルフ。ありゃぁエルフか?いい女侍らせてんじゃねぇか」
「ホントにルドルフにゃもったいねぇ女だ。このエルフが主人か?」
そのまま男たちが近づいていく。
「ありえねぇな。ケルベロスにいるエルフがお淑やかなわけがない」
奥にいる若い男がそう呟くと…
「鎮まれ!野郎どもめ。これ以上私に近づく気か?」
マリアはそう叫んで腰の剣に手をかける。下手を打てば一瞬で男たちを切り刻むような覇気を有したものだ。男たちは委縮する…
「お、おめぇら。一度下がるぞ…」
男たちは道を開ける。するとマリアは後ろを振り返って
「レン。何か道が空いたらしいぞ安心して降りて来い」
そう言って手を差し出す。すると中から少年が下りてくる。蒼い髪をした背の低い少年だ。恐らく年は15くらいだろうか…
少し時間を空けてルドルフもその少年に頭を下げる。
「ここが会議場だ。マスター」
僕がマリアに手を引かれて馬車を降りるとそこには大勢の冒険者たちが集まっていた。
「え?マスター…」
馬車から降りた僕を待っていたのは…爆笑だった。
「ハハハハハ!おいルドルフ冗談はよせ。このチビがギルドマスターだって?」
「いくらギルマスがいないからってよ~ガキ連れてきてそいつマスターですって馬鹿にもほどがあるぞ」
「てかこの少年誰よ。ボク~ここは大人の会議場なんだよ?公園はあっちだから家に帰りな」
僕はイラついた。まるでこれは僕への嘲笑でると同時に仲間たちへの侮辱でもある気がしたからだ。僕が全てボコボコにできれば楽だけど…それができるほど僕は強くない。まぁそれより僕の仲間たちの方が怒り心頭みたいだけど…
サラが付いてきて言った。
「ねぇねぇ。レンちゃんをバカにするってことはウチに喧嘩売ってること?」
「落ち着いてサラ」
サラが懐に手をやったので僕は片手で制する。
「落ち着き給えよ」
冒険者たちからの方も抑える人物が現れたようだ。かき分けて出て来たのは高身長の男、見た目は随分豪勢そうだ。それから考えると大体貴族生まれの成金坊ちゃんと言ったところかな?僕のこの予想は外れたことがほぼ無いので信用していいだろう。
「レンと言ったかな?僕はカナタ!見ての通り生まれが貴族のエリート様さ」
ほら当たったね。カナタは続ける。
「僕はレン、君に会ったことがない。つまり君と僕は初対面なわけだ。恐らく別のところから帝都に来た口だね?でも、ルドルフとかアーロンには認められているわけだ。向こうにいるエルフの騎士も初対面だけど見た感じ強そうだ。新しいメンバーだね?まぁ良いんだ。ギルド連盟って言ったって仲間入れるのに許可取る必要もないしね。それでさ…」
カナタは一言だけ言う。
「なんで君みたいな子供をギルドマスターとして認めるのか聞かせてほしいな?」
僕は答えた。
「そんなの推薦されたからで…」
「推薦?!君、この見た目でもアーロンとかより強いのかい?そりゃとてつもない天才だ」
僕は腹が立ったけどその理論も納得だ。そりゃこのメンバーのリーダーが僕なんて不釣り合いに見えるだろう。
するととある冒険者がカナタに言う。
「カナタ様。この方はギルドメンバーを指揮してドラゴンを追い払ったとかなんとか」
「それは本当かい?」
カナタは冒険者記録をめくって見る。
「本当だ…確かに『ケルベロス』がドラゴンを撃退したとある」
そしてしばらく考えた後僕にこう言った。
「僕は書類は疑わない主義なんだ。客観的だからね一応認めよう。まぁ認めるっていっても僕に他所のギルドに口出しする権利なんてないんだけどさ」
そう言ってカナタは僕を通してくれた。