ゆいこのトライアングルレッスンD 〜星屑デート〜
「ゆいこの受験勉強の息抜きにどこか行こーぜ。行きたいところある?」
「プラネタリウム行きたいな。」
「いいんじゃない。息抜きとはいえ、プラネタリウムなら物理や地学とか勉強にも通じるものがあるし」
「ゆいこ、そこまで考えてたのか?」
「いやー…推しの声優さんが解説してて!」
「そんなことだろうとは思ったけど。そういえば、ゆいこの推し、リメイクされた宇宙戦艦の乗員してたよな」
こんな会話から、3人でのプラネタリウムデートが決まった。
「…さて、私からのお話はこれでおしまいですが、しばしの間、癒しのひとときとして、宇宙空間をお楽しみください。」
ナレーションに変わって、ヒーリング系の音楽が流れてくる。星・音・香りの融合を謳い文句にした大人向けのプログラムに、アロマの香りが漂い、満天の星空が少しずつ動いていく。
ふいに、右隣にいるひろしがゆいこに聞こえるだけの小さな声で囁く。
「ゆいこのおとめ座のスピカと、うしかい座のアルクトゥルスって『春の夫婦星』って言われてるんだって、知っていた?」
「ううん。知らなかった。」
「アルクトゥルスは秒速125キロの速さでスピカに近づいてるんだって。と言っても、スピカに並ぶのは、6万年後らしいけど。」
「わー。なんだか、ロマンチックだね。」
天空に目を向けたまま、そう答えるゆいこの頬に何かが当たり、さっきよりも熱のこもった囁きが耳に響く。
「俺もゆいこにもっと近づきたいよ。」
息が耳元にかかってこそばゆい。そこで頬にあたったものが、声がもれないように口を覆ったひろしの手が触れたのだと気づく。
そのタイミングで、ゆいこは小さくビクッとする。なんと言っていいかわならなくて、ひろしに目をやると、暗くて表情がよく読めなかったが、見つめられてるのは気配でわかった。
「なんてね。」
とひろしが、小声で呟き、かすかに笑ったようだった。
ビクッとしたのは、突然ひろしとは反対側の肘掛けに置いていた手に体温を感じたからだ。たくみの方を見たわけではないけれども、たくみの手のひらが優しく、自分の手の甲に乗せられているのを感じた。
タイミングを逃した、というのは言い訳なのか、触れているところから伝わる温かさが心地よくてというか、とにかく手を重ねられたまま動くことができない。
ひろしに見つめられ、手にはたくみを感じ、どうすることもできないでいる時間は、実際には短かったのかもしれないけど、長く感じられて、ドキドキが止まらなかった。
暗いとはいえ、ゆいこの向こうで、何かが起きていることはすぐに気づいた。
(ひろしの奴、抜け駆けしやがって)
二人だけの空気を作っていることが面白くなくて、自分の手をゆいこに重ねた。すぐにどかされるかと思っていたが、思いのほかゆいこはそのまま受け入れてくれた。
(少しでも俺を感じてくれていたら、それでいい、今日のところは。)
暗がりの中、ゆいこに起きたことは、見えていた。たくみが悔しい思いをしているのもお見通しだ。でもゆいこの気持ちはわからない。我ながら大胆な行動に出てしまったと自覚している。とはいえ、たくみに握られた手を払いのけず、それでも自分に顔を向けたままのゆいこに、それ以上は何も言えず、ただ眺めることしかできなかった。
いつの間にか、星空は朝焼けに変わり、照明がついていた。急にゆいこは立ち上がり、精一杯明るい声で言う。
「なんかお腹すいちゃった。スイーツ食べに行かない?」
トライアングルレッスンDはデートのD!
某声優さんのDではありません、とのこと。
トライアングルレッスンな交流をできたら嬉しいので、
よかったら、コメントいただけると幸いです。
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の人気コーナー「ゆいこのトライアングルレッスン」に応募した作品です。
トライアングルレッスンとは?と思われた方は
ゆいこのトライアングルレッスン〜軌跡〜
https://ncode.syosetu.com/n1009ic/
をご覧ください。