狂戦士
山を下りる途中眠りそうになったエアリスを、アリソンが背中に背負っている。
気を張り詰めすぎたせいで疲れたのだろう。
エアリスの髪をそっと撫でてやるオリヴィア。
「この娘にはいつも苦労を掛けるな……」
エアリスを気遣うオリヴィアをみて、アリソンは変わらないその優しさにホッとする。
「アリソンも、苦労かけましたね」
「いえ、自分だけ生き延びてしまい、本当に申し訳なく……」
「そんなことはないよ、400年間一人で生きてきたのでしょ、どれほど辛かったか」
「その言葉だけで十分です兄上。ただし今回の戦いは絶対参加します。400年間腕を磨いてきました。もう、兄上様方や姉さんが死ぬのを見てるだけは嫌です」
肩を震わせ泣くのを我慢しているアリソン。
色々背負わせてしまったことに、申し訳ない気持ちになる。
「わかってるよアリスン……そうだ、あとで手合わせしてあげる。どれほど強くなったか、私にみせてくれますか」
「いいんですか」
「あたりまえです」
それこそ400年間夢にまで見たことだった。
前世では一度も手合わせをしてくれなかったのだ。
自分はまだ兄には全然とどいていない、それは先ほどの戦いでもよくわかる。
だがそれでも、自分がどれほど強くなったか、無敵の兄相手にどこまで通じるのか、試してみたかったのである。
「話は変わるけど、エアリス……この娘、呪われてないか?」
「やはりわかりますか」
「夜明けが近づくにつれ呪いの波動が強くなってきている、これは日中に発動する呪いかな」
「はい、夜明けとともに,鷹に変化させられてしまいます」
「あら、かわいい」
「兄上」
アリソンが睨んでくる。
「失礼、……で呪いをかけたのはだれかわかってる?」
「はい。姉さんが転生してきたのは今から1年前、デバマント山の神殿です。俺も、転生してくるタイミングにあわせてその山に向かったのですが……」
悔やむように言葉を紡ぐアリソン。
よほど悔しい思いをしたのだと思われる。
「つづけて」
「その山にはいつの間にか城ができてました。漆黒の城です。主はヴァン・デイン・ドラキュラ伯爵。奴の手下どもに阻まれてしまい、到着する前に……姉さんを奪われてしまいました」
口惜しさと無念さが伝わってくる。
この二人が恋仲なのは知っている。
ゆえになおのこと悔しかったのだろう。
「吸血鬼?」
「そうです」
「吸血鬼相手に取り戻せたのか!」
「はい!がんばりました」
驚いた。人を助け出すのにアリソンの持つ変化の能力は使えない。あれは自制心を失わせるからだ。
吸血鬼相手に、普通人では太刀打ちできない。それがたとえ日中であったとしても、城の中では関係ないからだ。
それをこの弟はやってのけたというのだ。
「城から飛び出す直前に奴の呪いがかかってしまい、このような次第になってしまいました」
「何を言っている、上出来だ!あとは私に任せておけばいい」
この兄なら、吸血鬼などたとえ夜であっても、圧倒するのだろうな。
かっこいいな……彼にとって兄とは憧れであり、尊敬する対象であり、目標だった。
「で、奴はまだデバマント山にいるのか」
「いえ……それがですね」
あ~途端に歯切れが悪くなる弟に、すべてを察する。
「バーサーカーの力を使ったのか」
「当たりです兄上、よくわかりましたね」
バーサーカーとは、これも呪いの一種である。
半不死の呪い。狂戦士バーサーカー。
ある国が戦争のために生み出した究極の人間兵器である。
切られても瞬時に回復する肉体、通常状態の10倍の身体能力、自らの意思を持たず本能的に人を殺し続ける狂った戦士。
疲れきるまで暴れまくり、そうなってからやっと元に戻る厄介な能力
不死ではあるが、完全ではなく、その力を使えば使うほど寿命は短くなる。
おそらく後2~3度変化すれば、この子の命はつきる。
私がこの子を拾ったのも、ある戦場であった。
狂戦士になり、暴れまわる彼を、殺さずなんとか無力化させ、国に連れ帰ったのだ。
「アリソンさぁ……」
「わかってます、よーくわかってます、ですが兄上」
途端に頭をはたかれる。
「そのまま逃げてれば済んだでしょ、なんで復讐しようとするのかな? 馬鹿なの?そんなことしたらエアリス悲しむのわかってるでしょ」
「は・はい泣かせてしまいました」
はぁ。ため息が出る。
わかるよ、狂戦士の呪いは、普段でもイライラして落ち着かない気持ちにさせる。
惚れた相手にそんなことされて黙っていられるわけないのだ。
「でもね、それでも、お願いだからやめて。私たちはあなたを大事に思っている。あなたはどう思ってるかわからないけど」
兄上が目に涙を潤ませて言ってくる。
ちょっと待って調子が狂う、泣いたところなんかいままで見たこともない。
「本当に、申し訳ありません」
そういうしかなかった。
狂戦士になったアリソンが大暴れしたせいで城はめちゃくちゃ、吸血鬼は逃げ出して行方不明。
これは、すぐのことにはならないね。
命に関わる呪いでないのがせめてもの救いだ。
でも、空か……いいな私も飛んでみたいな。
ギルガンティアの街になんとかたどり着き、泊っている宿屋に向かう。
1階は酒場になっている宿屋だ。
エアリスを担いで3階の部屋に向かうアリソン。
久しぶりのにぎやかな酒場に、わくわくしながら酒を頼むオリヴィア。
祭りはまだまだ始まったばかりなのである。
駆けつけ一杯といわんばかりに酒場のカウンターに座り、ビールを注文する。
それを一気に飲み干し、おかわりと焼いた鶏肉を注文する。
女に転生したとはいえ、暴飲暴食は前世と変わらないのである。
「お嬢さんあんまり見ない顔だけど、この辺の子かい」
酒場のマスターらしき人が話しかけてくる。
「うーんとね、元々はずーと南に住んでたんですけど、今日はこちらに用事があって」
「もしかして、賞金狙いかい」
「賞金?」
「ほら”オルテガを探せ”って、知らないかな。転生した英雄オルテガを見つけたものは賞金10000万ドルってやつ」
まじか。それって本人ももらえるのかな……?
「なんか賞金首みたいですね、どこに転生してくるのかなんてわかってないのでしょう」
「そうなんだが、どうもさっきそこの山で青い光が立ち昇ったっていうんで、結構な数あの山に向かって行ったぜ」
「でもあの山って」
そう魔物がうじゃうじゃいるのだ。
「だから、たぶんほとんど逃げ帰ってくるんじゃねえか」
「転生したのなら山を下りてくるのを見つければいいのにね」
「違いない」
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