復活祭
最初なので連続投稿します。
明日12時ごろ
今日から世界は英雄オルテガの復活を記念して1年間のお祭りに入る。
記念してとはいうが、復活が確認されたわけではない。
400年前、月の女神の繰り出す漆黒の魔人達によって人類は滅亡の危機に瀕していた。
それに対し太陽神より力を得ていたオルテガが立ち向かう。
400年前から伝わる叙事詩である。
自らの命と引き換えに魔人たちを滅ぼし、息絶えるオルテガ。
そのことで、オルテガは人類すべての英雄となった。
預言書によると。
400年の後英雄オルテガは復活するであろうと。
今日がちょうど400年目のオルテガの命日であった。
北の山に青き炎が立ち昇り英雄は再び立ち上がるであろう。
預言書にはそう書かれている。
「北の山ってどの山だよ」
「英雄様の死んだのって南の海だろ、なんで北の山なんだよ」
そういった声が響き渡る。
ここは大陸にある7つの大国の1つ、ホルス王国にある最北の街ギルガンティア。
そこの酒場は昼にもかかわらず大賑わいである。
今日から一年かけて祝われる復活祭でこの街は大盛り上がり。
この酒場も例外ではなく人でにぎわっていた。
その酒場の一角。
場違いな二人組が食事をとっていた。
一人は18歳ぐらいの青年で、背はそれほど高くなく、それでいて体はがっしりしており、筋肉もしっかりついている。
上半身に皮の鎧を着こみ、ズボンにブーツといったいでたちで、背丈ほどもある大剣をテーブルに立てかけてある。
髪は短く刈りあげられ、顔つきはまだ幼さを残しているが目つきがただ物でないことを示唆していた。
もう一人は少女で、肩まである緑色の髪をかき上げながらスープを啜っている。
背丈は男よりも少し高く、年齢は同じく18歳ぐらい。
フードを目深にかぶっており顔つきははっきりわからないが、ちらっと見えるその顔は間違いなく美人のたぐいであることがわかる。
こちらは長いシャツとズボンにブーツ、上からはフード付きのマントをかぶり。机には長い杖のようなものを2本立てかけており、これから山に登ろうとしていることがわかる。
「姉さんそろそろ向かわないと間に合わないんじゃないか」
「そうね、兄さまは行ってあげないと、絶対迷子になりますからね」
「そういえば、あの山結構危険な魔物が出るそうですよ。万一の時は覚悟しておいてくださいね」
「そのつもりで、この剣を持ってきている。任せてくれていい」
不敵に笑う青年に、姉と呼ばれた少女は心配そうな顔を向けている。
「姉さんそんなに心配しないでくれ。以前に比べると格段に強くなったし、いざとなったら兄者が何とかしてくれる」
「そちらの心配じゃありません。あなたの体のことを言ってます」
そういわれると、強がりでも心配いらないとは言えなくなってしまう。
「姉さん」
「わかっています、そうは言ってられないですものね、ごめんなさいアリスン。下の兄さまや上の兄さまがいらっしゃったらあなたに負担をかけなくて済むものを」
そういって二人は荷物をまとめて酒場を後にする。
その背後から、5人の男たちがこっそりつけていく。
この山の名前はアゾソ山という。
400年前、漆黒の魔人についてきた魔物たちが生きながらえているといわれる山で、人は立ち入らない。
その山を先ほどの2人が登っていく。
特に道という道があるわけでもないのに慣れた様子で登っていく。
登った先に何があるのかはわからない。
その二人を距離を変えずについていく5人の男たち。
こちらも慣れた様子で後をついて行っている。
「姉さんどうする」
「何人」
「5人」
「唯でさえ魔物の気配が濃くなっているというのに、面倒くさい」
「追剥かしら」
「姉さんに目を付けたんじゃない、美人だから」
「あら・あらあらアリソン成長したわね、まさかあなたからお世辞を言われるなんて、私、軽く感動してしまったのだけど」
大げさだな。そう言って笑い飛ばすアリソン。
「400年だものね、少しぐらい変わるわよね。こっち来て」
そうして寄って来た青年の頭を胸に抱きかかえ。
「あなた一人でよく頑張ったわね。えらいえらい」
そうしてアリソンと呼ぶ青年の頭をなでる少女。
アリソンも素直になでられている。
「姉さん400年前の約束覚えてる」
こうしてみれば、18歳ぐらいの若者が年上の彼女に甘えてる風にしか見えないそぶりだ。
「もちろん覚えていますよ、楽しみにしていたんですから」
「でも今はだめです、わかるでしょ」
「呪いですか」
「そう、この身の呪いを解かなければ、安心して……いえそれはいいですね」
そうこうしていると、森が切れ少し広い広場のようなところに出る。
もし仕掛けてくるのならここであろう。
そう思い少し森から出てきたところから離れ、大きな木の下まで歩き、待ち受ける。
「ここからそんなに遠くないよね」
「走って10分といったところです」
「魔物は」
「気配が押し寄せてきています。でも今ならタッチの差で神殿にたどり着けます」
森から盗賊風の男たちが出てくる。
「行ってください姉さん」
「任せた、くれぐれも」
「大丈夫、変化なしでなんとかできる」
分かり合ってるかのようにお互いの目を見つめ頷きあう。
「待ちな俺たちはその女に用があるんだ、男に用はねえ」
「あら!」
「やっぱ美人はつらいね」
「誇っていいわよアリソン」
そういって微笑んで、そして脱兎のごとく走り去る少女。
「待ちな、逃がさねえぞ」
後を追おうとする盗賊風の男たちの前にアリソンが立ちふさがる。
大剣を正眼に構え、男たちを威嚇する。
「小童が、女の前だからと言って粋がるなよ」
そういう男のほうはもう見ていない。
横の森の奥。
「来た」
無視される形の盗賊たちは怒り狂い襲い掛かってくるが。
横合いから飛び出してきた巨大なオオカミにかみ殺される。
「なんだと!」
一匹だけでなく何十匹もの巨大なオオカミに取り囲まれ反撃の暇すら与えられず食い殺される盗賊たち。
巨大な狼の群れ。頭がよく人語を解するがしゃべることはできない。
ダイノウルフと呼ばれる狼だ。
残るはアリソンのみ。
彼に対しては一気に襲い掛からず、包囲しじわじわとその輪を縮めてくる。
おおよそ体長4mほどの大きさの狼たちに取り囲まれれば並みの男なら、自分の最後を覚悟するところだが。
「やー久しぶりにみるな。前とそんなに変わってなくて安心したよ」
そういってダイノウルフの群れの中に突っ込み大剣を横なぎに振るう。
正面とその左右にいたダイノウルフの足や首が切り飛ばされる。
反撃など許さないといわんばかりに振り切った大剣を逆方向の左に振りぬき、更に2頭の狼の命を絶つ。
敵の戦闘力を見定めたのか、包囲の輪を解き、距離を取る狼たち。
「向かってこないのなら相手をしても仕方がない」
そういって狼たちに背を向けアリソンは森の中に消えていく。
それを追いかけもせず、反対側の森の中に狼たちは姿を消していった。
急な斜面を羽でも生えているかの如く軽やかに飛び跳ねながら登っていく少女。
森の妖精のごときその背後から巨大な黒クモが追いかける。
「やばい・やばい・やばい、なんであんたがこんな所にいるのよ」
クモの名前はモスキーパイソン。
通常は暖かいところに生息しているので、気温の低い北ではほとんど見ることがない。
頭に角を生やし、口から蚊の羽音のような音を出すところからそう名付けられた。
口から粘着質の糸を吐き出し少女を捕えようと執拗に追いかけてくる。
「もうやだークモ嫌いなのにー」
先ほどまでのしっかり者の姉というイメージは全くなくなり泣きながら必死に逃げる女の子になってしまっている。
糸の届く距離までもう少しの所まで詰められる。
目の前に白く光り輝く神殿が見える。
あと少し。
そのタイミングで足にクモの糸が絡みつく。
少女は転ばされ、クモの元まで引きずり寄せられる。
万事休すと思われた瞬間クモの首が跳ね飛ばされる。
「無事かエアリス」
アリソンが間一髪間に合った。
エアリスと呼ばれた少女は大泣きでアリソンに抱き着き、更に大声で泣いた。
よしよしエアリスの頭をなでるアリソン。
さっきと逆である。
そのままエアリスを抱き上げ、神殿に向かうアリソン。
「早かったわね」
涙ながらそう問いかける。
「狼だったから」
「そっかあいつら頭いいもんね」
「それに比べてクモなんて大嫌い、臭いし、うるさいし、ねばねばしてうっとおしいんだから」
「そうだね」
クモのおかげで俺は姉さんを抱けてラッキーですけどね。そう思ったが言わなかった。
「そういえばさっきエアリスって呼んだ?」
「あー咄嗟だったからつい」
「これからも……」
「だめです、姉さんは姉さんですから」
「けち臭いこと言ってる」
そういわれて思わずはにかんでしまうアリソン。
会話をしながらついに神殿にたどり着く。
神殿といっても屋根はなく、ただ4本の柱が立っており、直径5メートルほどの円盤状の床があるだけである。
神殿の周りは草が覆い茂ていたが、床の周りには不思議と草は生えていなかった。
入り口にはアーチがかかっており門の役目を果たしている。
1歩アーチの中に入ると、澄んだ水をたたえた池があり、その中を神殿までつなげるように石が浮かんでいる。
「もう少しだね」
神殿につながる石の上で、夜空を見上げるエアリス。
ほぅ と一息つき星を眺めてうっとりする。
そうしていると空に青い光点が現れ徐々に大きくなってくる。
「始まりましたね」
「時間どおりですね」
青い光が神殿の真ん中を貫く。
そうして徐々に光が薄れ、真ん中に人影が姿を現しつつあった。
バチッ。
その瞬間神殿の周りに張られた結界を外から干渉してくるものがあった。
二人は振り返りその存在を確認し青ざめる。
大きな黒い影が結界を破ろうと両腕を突き入れてくる。
結界が干渉して青い火花を上げながら侵入を阻止するが、相手が悪すぎる。
「面白かった!」
「続きが気になる!」そう思っていただけたら、
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援よろしくお願いします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。