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第6話「魔法剣士レオンハルト爆誕」

「あの、魔法って知ってます?」

 専属アドバイザー(仮)であるナースのアドバイスだ。

「魔法? もちろん知っているが……」

「何もないところから炎を出したり、電撃を出したりするやつです。あとは回復魔法などもありますし、強力な魔法になるとどこからともなく魔物や精霊、獣などを召喚することができますね」

 知っていると言ったのになぜ説明してくる?

 それより今回は魔法を提案してきたか。

 魔法剣士レオンハルト。まさに主人公にふさわしいジョブだ。乗った!


 そういうわけで、町の魔法学校で魔法を学ぶことができると聞いた俺は、魔法学校にやってきたのだが何やら入学金が必要とのこと。

 ダンジョンでブヨブヨとガイコツからお金を巻き上げて入学した。

 しかし、入学した後でテキスト代やら試験料でさらに金が必要になった。

 高すぎると思いつつも、できることは全部やっておきたい。その思いでまたブヨブヨとガイコツからお金をせしめてきた。向こうからしてみれば大迷惑だろうな。

 魔法学校の授業はとてもわかりやすかった。魔法の理屈から説明してくれて、なぜ発動するのかを理解することができた。

 これならテストも余裕だろう。そう思って取り組んだテストは0点だった。

 難しすぎる。完全に授業の範囲外だ。とはいえ、魔法学校は学科と実技で一つのセットになっている。両方をパスしないと卒業できない。

 俺は諦めず再度試験を受けた。ちなみに、再試験にもお金がかかる。

 結果は5点。バカすぎて点数が上がらない。


 困った俺はナースに相談することにした。

「私はあなたの専属アドバイザーではないのですが……」

 ものすごく嫌な顔をされた。俺はそんなに悪いことをしたのだろうか。

「商人が過去問をまとめて販売していたと思います」

 またお金か、と思うものの、背に腹は変えられない。

「おや、今度は魔法の習得ですかな。ようやく先に進めたようで安心いたしました」

 相変わらず手を揉みながら笑顔で話してくる。その笑顔と勘違いが辛い。

「はは……、さすがに時間かけすぎましたからね」

 商人の誤解には特に触れず、ダンジョンで稼いだお金で過去問を購入した。

 過去問を見る限り、どの回も同じくらい難しかった。しかし、傾向としては似ている。同じような問題が出ていることもあった。

 俺は過去問の問題と答えをそのまま覚え込む勢いでひたすら勉強した。もはや理解などという概念はどこかに行った。暗記こそ正義。

 結果は71点で合格だった。合格点は70点だったのでギリギリではあったが、合格してしまえばこっちのものだ。

 残るは実技試験。これは楽勝だった。一発で炎が出たのだ。

 この辺はセンスの塊ということだろう。魔法剣士になるべくしてなったと言っても過言ではない。

 これで全ての準備は整った。

 魔法剣士レオンハルト、いざ参る。


 いつもの最深部(地下1階)に来ていた。ドラゴンは俺の顔を見るや否やため息をついた。

「そこ! あからさまに面倒くさそうな顔をしない!」

 ドラゴンは呆れた顔をし、そっぽを向いた。

「これまでのレオンハルトとは違うぞ! なぜなら、今の俺は魔法剣士レオンハルトだからだ!」

 俺の言葉に目を見開き驚くドラゴン。

 俺はドラゴンに向けて両腕を伸ばし──手の先から炎を出した。

 しかし、炎はドラゴンまで届かなかった。

「何! 届かないだと!?」

 同じように両腕を伸ばしたが、今度は何も出ない。

「もう一回だ!」

 何度やっても結果は変わらず、俺は腕を伸ばしているだけのマヌケな人間だった。

「なぜだ!? 俺は実技試験をパスしたはず!」

 ドラゴンは既に寝始めていた。

 その時、自分のステータスの低さを思い出した。もしや、俺はMPがほとんどないんじゃないか? 俺の最大MPは炎の魔法一回分しかないから、二発目以降出ないんだ。

「なるほど、ここまで魔法剣士レオンハルトを苦しめるとは……。やるな。しかし、まだ俺には剣がある!」

 銅の剣(一般的には安物だが最初のダンジョンにしてはそこそこ高価)を抜き、ドラゴンに向かって走り出した。

 そしてまたもや左半身に衝撃を受け、医務室送りになるのだった。


 目が覚めると、ナースがマッチ箱を持って、火のついていないろうそくの前に立っていた。

「あら、マッチが切れてますね」

 俺はろうそくに手を伸ばし、代わりに火をつけてあげた。

「ありがとうございます。レオンハルトさん、ギルドに入会して初めて役に立ちましたね」

「さらっと酷いこと言いますね……」

 今日はもうMPを回復しない限りは魔法は使えないし、魔法剣士レオンハルトはなしだな。

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