ウィルとアーサーとクリスマスの次の日
クリスマスの次の日の朝、ウィルはもみの木の下でくまのぬいぐるみを見つけました。
ウィルはぬいぐるみの頭にうすく積もった雪をはらい、自分の赤い毛糸のぼうしをかぶせました。
「あったかい。ありがとう」
「どういたしまして。ぼくはウィル。きみは?」
「ボクはアーサー。ともだちをさがしてるんだ」
「まいご?」
「ううん。これから見つけるところ」
「……よかったら手伝うよ」
◇
ウィルは、森で一番力持ちのくまのところにアーサーを案内しました。
「ぴったりだと思うんだ」
くまは喜んで一緒に遊びました。
「遊んだだけでこわれちゃうのはちょっと」
アーサーはウィルのところに帰ってきました。
ウィルはアーサーの破れた背中をちくちく縫って直しながら肩をなでます。
「きみって本当にいい手触りだね」
◇
ウィルは、森で一番おしゃべりなリスのところにアーサーを案内しました。
「ぴったりだと思うんだ」
リスは喜んで一緒に遊びました。
「静かでつまらないわ」
ウィルはアーサーと背中合わせで本を読みながらつぶやきました。
「きみがいると落ち着くね」
◇
ウィルは、森で一番遠くへ飛べるタカのところにアーサを案内しました。
「ぴったりだと思うんだ」
タカは喜んで一緒に遊びました。
空から落ちてくるアーサーをウィルが受け止めます。
「背中に乗せてもすぐに落ちてしまうんだ」
ウィルはアーサーを抱きしめて言いました。
「このふかふかが好きだよ」
◇
ウィルは、森で一番元気な犬のところにアーサを案内しました。
「ぴったりだと思うんだ」
犬は喜んで一緒に遊びました。
「すぐに汚れちゃうもの」
犬は申し訳なさそうにアーサーを口から放しました。
ウィルはアーサーとお風呂に入って歌います。
「洗ったらほら、こんなにいいにおい♪」
◇
「つかれちゃったね。今日はもう寝て、また明日探そうか」
ウィルとアーサーはベッドに横になり天窓から星空を見上げました。
「きっといいともだちが見つかるよ」
「あのね、ボク、キミに伝えたいことがあるんだけど」
「なに?」
ウィルはアーサーの方を向きました。
アーサーもウィルの方を向きました。
「ボクと、ともだちになってくれない?」
「へ?」
「ボクはウィルとともだちになりたい」
「でも…………」
長い沈黙のあと、ウィルが震える声で言いました。
「あのね、きみにはいいところがたくさんあるけど、ぼくにはなんにもないんだ。なんにも」
アーサーは思わずウィルの手を握りました。
「ぼくは人が苦手だし、目を合わせるのも怖いんだ。人が集まるところも苦手。ちくちくしたものもトゲトゲしたものも苦手」
「ボクはウィルがいい。気づいてないの? ウィルは、お裁縫ができるし、本が好きだし、あったかくて綺麗好きだよ。それになにより、とってもやさしい。ボクもウィルにやさしくしたい。ボクたちいいともだちになれないかな?」
アーサーはウィルの涙をぬぐいました。
「ほんとうはね、ぼくとともだちになるのはどうかなって思ってたんだ。断られたらって思ったら怖くて言い出せなかった。きみは勇気があるね。きみに勇気をもらったよ。アーサー、ぼくとともだちになって」
「嬉しい! もちろんだよ! ボクたち相性ぴったりのいいコンビになるね」
ふたりはぎゅっと抱き合いました。
あったかくて、やさしくて、いい心地です。
シャンシャンと、どこか遠くでふたりの友情を祝福するみたいに鈴の音が響きました。
お読みいただきありがとうございます。
冬の童話祭大好きです。
寒さがほっと和らぐあたたかさを。
あなたさまにとって心地よい日になりますように。