土下座
その日の夜。
ベッドの中で、ポニテは震えていた。
俺は優しく抱きしめてあげるけど、それしかできない。
親に捨てられた子供のように、
弱々しく、
怯えきって壊れそうだった。
そんな姿を見ていると、それだけで悲しくなってくる。
ポニテがどうしてこんな酷い目に遭わないといけないんだろう。
そん風に思えてしょうがない。
涙腺が熱くて、心臓が苦しい。
でもポニテは、もっと辛いんだと思う。
その時、ベッドの外で、誰かが着地する音がした。
肩越しに見ると、エーコとシャンナが立っている。
「どうしたんだ二人とも?」
ポニテも気付いて、俺に隠れながらそっと顔を出す。
するとエーコとシャンナは、その場で綺麗な土下座をした。
『『申し訳ありませんでした』』
俺とポニテは起きて、ベッドに座りながら二人を見た。
「どうしたんだよ二人とも?」
エーコが顔を上げる。
『ポニテ様をこのようなデスゲームに巻き込み、申し訳ありません』
シャンナも顔を上げる。
『参加条件が、人狼ゲーム経験が無く、知識も乏しい一〇代の若者だったんです。ごめんなさいポニテちゃん』
二人の声は、いつもの明るさが無い、本当に申し訳なさそうなものだった。
「らしくないじゃないか。お前ら神様にとって俺ら人間なんて家畜だろ?」
『確かに、我々と人間の関係は、人間と動物の関係に近いです。でも、皆様人間も、闘牛を楽しみながら見てもアクシデントで牛が大けがをしたら、悲しい気持ちになりませんか?』
「それは……」
俺は言葉を濁す。
『わたくし共は、混沌と狂気を好みます。愚かな人間達が騙し合い、傷つけあい、足を引っ張り合い、その果てに滅び堕ちてゆく。皆をあざむききったと信じ切っていた人狼の正体がバレ。悔しそうに発狂する様には絶頂を感じ、何度も下着やバニー衣装をダメにしてしまいました』
エーコは自身の局部をなでる。
妙なエロさに、俺は頭の中の煩悩を振りはらってから話を聞く。
『ですが、メガネ様方は純粋に、誠実に、仲間を守る為に、傷付き悩み苦しみながらこのゲームを勝ち進んでおります。メガネ様やポニテ様、ツインテ様は、わたくし共にはまぶし過ぎる存在です。だから我々に助力する権限はありませんが、どうぞ、優勝してください。そして』
エーコは、力を込めて言う。
『何がなんでも、現世にお戻り下さいませ』
「現世に……戻る?」
その言い回しに、俺は違和感を覚える。
「おいエーコ、それはどういう」
答えず、エーコとシャンナは立ち上がり、体が半透明になっていく。
『最後に言っておきますが、皆さんはこのデスゲームに巻き込まれて、感謝しなくてはならない。ニャル様のあのお言葉は、本当です』
二人の姿が消える。
「一体……何がどうなっているんだ?」
俺の疑問に答えてくれる人は、誰もいなかった。




