彼女との一夜
その日の夜。
もちろんポニテは殺す相手なんて選ばない。
ポニテは俺の部屋のシャワーに入って、寝る準備をする。
俺は学校の制服のブレザーとワイシャツを脱いで、上はランニング一枚だ。
いつもはズボンも脱いでから寝るけど、今夜は女子のポニテも一緒だから、履いたままで寝るつもりだ。
このホテルには各部屋にバスルームと洗濯機が完備されている。
そしてこれもニャルの魔法だろう。
洗濯機は衣類を放り込んでスイッチを押すと、お風呂から上がるまでに洗濯、脱水、乾燥はおろか、アイロンがけまで終わっている。
だから俺らは着替えなくても、最初に連れてこられた時の服を毎日着回している。
バスルームのドアが開いて、ポニテが出て来る。
ポニテは裸足で学校してのスカートと、ワイシャツだけの格好だ。
ワイシャツは裾を外に出して、ボタンも上二つが開いている。
いつもの俺なら色々とやらしい妄想の一つもしただろう。
でも、今はそんな気分じゃない。
人狼になってしまったポニテの事を考えるだけで、胸が苦しくなってくる。
今の俺は、ポニテを安心させてあげることしか考えられなかった。
「じゃあポニテ、寝ようか」
「はい……」
俺らがベッドに向かうと、ポニテの爆乳が不自然に跳ね弾んだ。
あれ? もしかして……
「あのメガネさん……」
ベッドに腰掛けると、ポニテは少し恥じらいながら、
「寝ている時に付けていると、その、痕がついちゃうから……下着……つけていないんですけど、気にしないでくださいね……」
最後の方は、もう消え入りそうな声だった。
これは流石に心臓が跳ね上がったけど、でもそれ以上は何もする気は無い。
俺はベッドに入って、ポニテと並んで眠る。
そして、決してやましい気持じゃなくて、彼女を安心させてたくて手を握った。
「あの」
「大丈夫だよポニテ」
俺はポニテと視線を合わせてほほ笑んだ。
「ポニテは、俺が守るから」
ポニテの顔が、耳まで赤くなって、彼女の瞳が硬直する。
俺は頭をなでてあげてから、部屋の電気を消した。
するとすぐに、ベッドの中でポニテが俺に抱きついて来た。
彼女のやわらかくて、弾力溢れる胸が俺の胸板に押しつけられる。
「ポ、ポニテ?」
「すいませんメガネさん、でも、でもこうしていないと凄く不安なんです、だからお願いします……」
砂でできているようにもろく、頼りないポニテ。
俺が抱きしめ返すと、彼女の体がどれだけ華奢で細いかが良く解った。
この子を守りたい。
俺は正直にそう思った。
でも、さっきはああ言ったけど、俺はポニテを守る為に、本当に独裁者になれるのだろうか?
ポニテと体温と香りに包まれながら、俺は自問し続けた。




