独裁者
俺の胸で、子供のように泣きじゃくるポニテ。
俺は彼女を優しく抱きしめ返して、その頭をなでた。
ポニテが人狼。
なら、ポニテを守る為には……
俺は狼狽する心臓を抑えられないまま、ポニテの耳元で囁いた。
「ポニテも、俺の職業を聞いてくれるか?」
「え?」
俺の、あまりに力無い声で察したんだろう。
ポニテは体を倒して、俺と視線を交えてくれる。
そして、その悪魔の能力を告げる。
「独裁者…………能力はさ、ゲーム中に一度だけ、投票結果を無視して好きなプレイヤーを処刑することだ……」
「え……あの、じゃあ」
「そうだよ……使いどころなんて、解り切っている……」
猟師と違って、あくまでも処刑対象を変える。
つまり、
「自分が疑われた時、それを回避する。そしてそうすることで、自分が人狼じゃないことを証明する。正真正銘、自分が助かる為に誰かを殺す悪魔のカードだ。しかも、自分の代わりに殺す相手を決めるなくちゃいけない……」
「メガネさん……そんなに、落ち込まないでください……大丈夫ですよ、だって、メガネさんは村人だって、もうぽわぽわさんが証明してくれたんですから、きっと、きっとメガネさんが疑われるようなことはありません」
ポニテは、俺を慈しむようにして、優しく抱きしめてくれる。
それが嬉しくて、俺は決心する。
「俺はお前を守る!」
「え?」
「俺は、みんながポニテを疑って投票したら、俺はこの力でポニテを守るよ!」
「そんなのダメです!」
ポニテは必死に首を振った。
「そんな、わたしの、わたしなんかの為に誰を犠牲にするなんて」
「でも、俺らは自分が生き残る為にさんざん」
「っ……」
ポニテが硬く目を閉じる。
「ごめん! 今のは言い方が悪かったよ」
今まで人狼に投票したのは、みんなで助かる為だった。
でも独裁者スキルは違う。
あくまでも自分一個人だけが助かる為に他人を殺す能力。
投票で人狼を殺すのとは天地の差がある。
ポニテは、また俺の胸板に顔をうずめて、母親に再開した迷子のようにしてしがみつく。
「すいませんメガネさん。迷惑かもしれませんけど……今夜は一緒にいてくれますか?」
その姿があまりに儚げで、俺は断ることなんてできなかった。




