シャッフル
「えぇ!? ツインテさん達いないんですか!?」
「実はそうなんだよ」
目を覚ましたポニテに、俺は残酷な現実を教えてあげた。
ポニテはしょんぼりとうなだれる。
まぁ、ツインテならともかく、俺なんかと一緒じゃ落ち込むよな。
「で、でも」
ポニテの顔に、八分咲きの笑顔が浮かぶ。
「メガネさんが一緒でうれしいです。さっきも凄い名推理でしたし、頼りにしていますよ、メガネさん♪」
俺の手をそっと握って、ポニテはそう言ってくれた。
俺は、
「よ、よーし、俺頑張っちゃうぞ!」
「はい♪」
ポニテの笑顔を見ると、一〇〇万馬力の力が湧いてくるのだった。
「リア充爆死しろ」
「ちっ」
「バカップルが」
周りからの声に振り返って、俺らは赤面しながらうつむいた。
◆
「えっと、じゃあまず自己紹介ですね」
なんとなくそういう空気になって、俺から始めた。
「俺はメガネです」
「ふわわ、わたしはポニテって言います。メガネさんとはさっき同じグループで戦わせてもらいました」
続けて、Tシャツを着た男子達が口を開く。
「俺は赤シャツな」
「僕は青シャツね」
「私は緑シャツです」
「オレは黒シャツだ、ファーストステージからずっと同じっていうか、なんかオレらのグループってどうも色違いのシャツの奴を集めたらしいんだよな」
黒シャツが辟易しながら語った。
でもファーストステージから一緒って、こいつら四人チームなんじゃ。
「言っておきますが、私達は別にチームとかではないので、あしからず」
「俺らはずっと一緒だったけど、いつだれが人狼になるか解らないからな」
「僕らの関係って付かず離れず微妙だよね、はは」
あー、そういう感じなのか。
だからニャルはこいつらを分け無かったんだろうなぁ。
こいつらがチームじゃない。
という事実に、俺は凄い説得力を感じた。
続いて女子達が事項紹介をする。
「はぁーい、あたしはポワポワだよぉ」
おっとりした、全体的に良い意味で肉付きのいいロングヘアーの女の子が可愛らしく笑ってそう言った。
ていうか凄い爆乳だ。
ポニテと同じくらいあるかもしれん。
「あたしはメラメラよ!」
なぜか制服姿なのに、格闘技用のオープンフィンガーのグローブをした女子が元気よく親指で自分を差した。
ていうかこの二人、雰囲気で名前を付けられているな……
「私の名前は包帯です。転んだ時の怪我の治療に行った病院帰りにさらわれたから、見ての通りよ。左腕を八針縫ったわ」
包帯が左腕の袖をまくると、確かに包帯が巻かれていた。
「ウチはタコヤキ言うんやけど……」
小柄でショートカットの女子がソファから立ち上がり、天井に向かって、両手を構えて大きく叫ぶ。
「たこ焼き喰っとる最中にさらったからってタコヤキは安直過ぎるやろがぁあああああああああああああああああ!」
叫んでから、タコヤキは大きく息を吐いた。
肩で大きく息をしている。
なんかもう、ニャルも必死だな。
とにかく名前が被らないように被らないように滅茶必死って感じがする。
自己紹介が終わると、エーコが手を叩く。
隣にはシャンナが立っている。
『では皆様、フォーステージの会場へご案内致しますので、どうぞこちらへ』
『どうぞ♪』
エーコとシャンナに言われるがまま、みんなはぞろぞろと黒いドアへと向かって歩いて行った。
最後を歩く俺はふと、
「なぁエーコ。さっきのステージで全員がロリっ娘だったのって、もしかしてミュールがいたからか?」
エーコは俺に顔を寄せる。
『鋭いですねメガネ様。はい、ニャル様が、ミュール様がゲームをひっかきまわすのを期待して、男子プレイヤーがわたくし達には見向きもしないよう、エロ成分はすべてミュール様が担えるようにとの配慮でございます』
「いらん配慮するなぁニャルも……」
俺は辟易して肩を落とした。
「まぁでも、お前はそっちのほうがいいよ」
軽口を戦うと、エーコが頬を染める。
『それは大胆な愛の告白と捉えていいでしょうか?』
「ちげーよ」
『では大胆なおっぱい星人宣言と捉えてもいいでしょうか?』
「いいわけがないだろ!」
「メガネさん、早くいきませんか?」
ポニテに言われて、俺は気を取り直す。
「おっとそうだったな、悪い悪い」
俺は、ポニテの手を握った。
「じゃ、行こうぜ」
「はい」
俺とポニテは、一緒に黒いドアをくぐった。
そして、しばらく進むと、ファンタジーな力で、ポニテの手の感覚が、まるで雲をつかむようにして消えてしまった。




