総攻撃
昨晩の夜襲が失敗した以上当然だが、
会場に現れたのは、
俺。
ツインテ。
ポテニ。
シャギー。
茶髪。
ミュール。
糸目。
狐目。
コンタクト。
の合計九人全員だった。
俺はミュールの表情に注目した。
襲ったはずのポニテが生きていて驚いているかと思ったけど、特にそんな事はないようだ。
演技が上手いのか、それとも人狼って失敗したら朝にすぐ解るのか?
議論の前にあらかじめ解っていれば、取り乱すこともない。
『わーお、これは凄い。えーっとですねぇ。昨晩死んだ人はゼロでーす♪ 拍手ー♪ まぁ、なんで死んでないのかは伏せましょうかね、あははははは♪ じゃあ、議論スタートでーす♪』
「茶髪さん! 人狼はミュールよ! ミュールに投票して!」
「え?」
いきなりツインテが畳みかける。
「は? アナタ何を言っているのよ?」
ミュールが、バカにしたような態度で、ツインテに問いかける。
シャギーがツインテを援護する。
「悪いけどミュール。もうネタは上がっているのよ! ツインテ、説明しちゃって!」
「ええ、まずミュール、貴方が体を男子達に売って、糸目、狐目、コンタクトの三人を操り人形にしているのは、メガネ君から聞いたわ!」
「それで?」
「それを踏まえると、死んだ人はみんな、貴方にとって都合の悪い人ばかりなのよ。まず貴方の狙いをまとめるわ」
ツインテは、茶髪を意識しながら解説を始める。
「ミュール。男に体を売って手駒を増やした貴方は、議論の度に女子を殺したわ。最初はツケマ、次はアイプチ。これは、女子は貴方の手駒にならないから。そして夜襲された人も、貴方にとって都合の悪い人だったわ」
「待ちなさい。最初に人狼の夜襲を受けたのは男子のサングラスよ?」
「男子でも同じよ。何故ならサングラスは貴女の体に興味が無いから。初日の議論の時、貴方は優秀なサングラスにいきなり媚びを売ったわ。でも、サングラスは取り合わなかった。だから女子と同じように、自分の手駒にできないサングラスを殺したのよ」
茶髪がハッとする。
いいぞ。
「そして次は女子のツケヅメ。そして昨晩は……」
ツインテはポニテを指差した。
「女子のポニテさんが襲われたわ! もっとも、職業の力で殺せなかったみたいだけど!」
ミュールの目が細められ、ちらりとポニテを見た。
「そしてポニテさんが襲われたのが、ミュール、貴女が人狼であるという何よりの証拠になるわ!」
「どういう事かしら?」
「貴女とメガネ君の間の約束は聞いたわ。私とポニテさんをなるべく投票で殺さない代わりに、メガネ君は貴女に投票しない。つまり、私とポニテさんを殺してしまうと、自分の手駒にできる可能性のあるメガネ君から不評を買ってしまうのよ。だから貴女は、メガネ君から不評を買わないように、女子である私とポニテさんを殺す方法を考えた。それが夜襲で殺す事。貴女はメガネ君に、自分は人狼ではないと自称していたそうね。だから、人狼による夜襲で私とポニテさんが死ねば、メガネ君に言い訳ができる。『私は約束通り投票しなかったけど、まさか夜襲で死ぬなんて私も思わなかった、人狼は許せないわね』ってね!」
「ぺらぺらと良く回る舌ね……」
ミュールが眉間にしわを寄せて、だんだんと不機嫌になっていくのが解る。
「だから貴女はメガネ君との約束を守りつつ、自分に従わない女子を一掃する為に、夜襲で私とポニテさんを、投票でシャギーさんと茶髪さんを殺す事にしたのよ! 茶髪さん、こいつは今日か明日の議論で、貴方を殺す気よ!」
「そ、そんなぁ!」
茶髪はショックを受けて固まってしまう。
「これで分かったかしら? 投票による処刑だけじゃない、人狼による夜襲も、全て貴女にとって都合の悪い人だけが死んでいるのよ! もしも自分じゃなくて、手駒の男子が人狼で、毎回自分が指定したプレイヤーを襲わせているなら白状しなさい。でないと、本当い私達全員でミュール、貴方に投票するわよ!」
「全員?」
ミュールの視線が、ゆっくりと俺に映った。




