襲われた
更新のミスで1話ズレて、72話を飛ばしていました。
72話から読み直していただけると助かります。
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次の日の朝。俺は食堂でいつも通り、てきとうにご飯をとって食べる。
俺の前の席には、エーコが座って、一緒にご飯を食べた。
「あれ? お前らのご飯とか食べるのか?」
『食べなくても平気なので、あくまで嗜好品ですね。今日はメガネ様と一緒に食べるという事をしてみようと思いました♪』
「ふーん」
その時、エーコが何かに気付く。
『あ、すいません、シャンナちゃんから連絡です…………はい、はい、わかりました。メガネ様、ツインテ様とポニテ様とシャギー様をここに呼んでもよろしいですか?』
「いいぞ」
どうしたんだろう?
何か新しい作戦かな?
虚空から、突然ツインテ達が姿を現す。
でも様子がおかしい。
ツインテとシャギーは追い詰められたような、険しい顔つきで、
ポニテは目に涙を溜めながら、迷子の子供のように震えていた。
「ど、どうしたんだよ二人とも。何かあったのか?」
「襲われたのよ」
「え?」
ツインテは声を張り上げる。
「昨晩、ポニテが人狼に襲われたのよ!」
「ポニテが!?」
俺は最初、言葉の意味が解らなった。
でも、襲われたと言うことは、つまりそういう事だ。
「襲われたって、だってミュールは」
「貴方との約束なんて守る保証はないでしょ! これは人狼ゲームなのよ! たぶんそうね。これは貴方へのアピールよ」
「アピール?」
「ええ。貴方と殺さないと約束したポニテを夜襲で殺すことで、自分は人狼じゃないって思わせる作戦でしょうね。ミュールは私とポニテを可能な限り殺さないと約束したのでしょう? あくまで投票で殺すのを遅らせるっていうだけだけど、それでも昨晩と今日の投票でシャギーと茶髪を殺したら、明日の議論ですぐ私かポニテを殺さないといけない。それじゃあメガネ君、貴方の不評を買ってしまうわ」
「いや、俺の不評は買っても」
「フォースステージを見越しているのよ。このゲームはまだまだ能力不明の職業が多いもの。勝ち残れるのは四人だけど、猟師とかの力で手駒の男子を殺されるかもしれない。そうなれば補充として貴方が必要になるわ。だから男子である貴方の不評を買わないようにするの。自分は人狼じゃないって言い張っているから、夜襲で私とポニテを殺しても貴方の不評は買わないわ」
「そ、そこまで考えてのるかよ」
「当然でしょ。夜襲で私とポニテを殺して、投票で茶髪とシャギーを殺して、二日で残りの女子を一掃する気だわ」
「あのエロ女。やってくれたわね!」
シャギーが拳を震わせる。
「やばいぞ、今日で決着をつけないと、ポニテが」
「はうぅ……」
ポニテの目から大粒の涙が零れ落ちる。
ツインテとシャギーも悔しそうな顔で俯く。
「そんなの……ありかよ……」
ここまで一緒に戦ってきたポニテが死ぬのを想像して、俺は思わずテーブルを殴りつけてしまう。
「いや、ここは前向きに考えよう。どのみち俺らは今日、決着を付ける予定だったんだ。幸い、これで犠牲者はゼロだ。四対四。そして茶髪を仲間にすれば五対四。俺達に勝ちだ。そうだろみんな!」
俺の叫びに、三人は驚いた顔になって俺を見る。
でも、すぐにみんな表情に光を取り戻した。
「メガネさん……」
「それもそうね、弱気になって悪かったわね」
「あんたもたまにはいいこと言うじゃん。でもそうね、元から今日で決着をつけるつもりだったんだし。むしろ一回のミスも許されなくて気が引き締まったんじゃない?」
シャギーが歯を見せてニカリと笑う。
「ああ、やってやろうぜ。茶髪を説得して、それで俺達に勝ちだ!」
俺は力強く、拳を突き上げた。




