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人狼発覚

『以上が初日の議論映像になりますが、続けて再生致しますか?』

「いえ、結構よ」


 会議が終わった後、いつも通り俺の部屋で会議中だ。

 今はツインテの職業、記者スキルで初日の議論映像を見ていたのだが、


「ミュールが人狼ね」

「えっ、そうなの?」

「気付かない貴方が馬鹿過ぎるのよ」

「ふえっ、じゃあわたしも馬鹿ですか!?」

「ポニテ、貴方はいいのよ」


 頭をなでてあげながら慰めるツインテ。

 なんだこの扱いの差は……


「だってメガネ君。人狼が襲撃をした相手だけど、全部ミュールにとって都合のいい相手じゃない」

「そうか?」


「思い出してみて。まず初日の夜に死んだのはサングラスよ」

「そうだけど、ミュールはあいつの読心術を知らないだろ? ただ積極的ってだけで殺すならミュールじゃなくても」


「貴方は映像の何を見ていたのよ? ほら、最後の方でミュールがちょっとサングラスに言い寄っていたじゃない? でもサングラスはそれを袖にして、ミュールは『アラつれない』って言ったわ。つまりこの時点で、サングラスは仲間にできない男って事になったのよ。色気で籠絡できない、おまけに人狼探しに積極的。読心術の事を知らなくても、殺す理由は十分よ」


「じゃあツケヅメは」

「それこそツケヅメは女子じゃない。推理は犯人の気持ちになることが大事よ」


 ツインテは冷静な口調で、たんたんと説明する。


「ミュールいとって困る事は何か。それは女子が団結することよ。女子の人数はミュールを除いて七人。対してミュールが動かせる票は四票。女子が団結してミュールに投票したら、ミュールは処刑されるわ。だから毎日夜襲と処刑で二人ずつ女子を殺して、自分の絶対王国を作るつもりなのよ。メガネ君との約束で、私とポニテさんは可能な限り殺さないって言ってたみたいだけど、それもどうでしょうね。ミュールからすれば、自分達四人以外を早く殺してゲームを勝ち上がりたいはずよ」


「じゃ、じゃあツケヅメやアイプチが人狼だったらゲーム終了っていうのは」

「嘘よ。色香で貴方を落とせないと解って方向転換。メガネ君を騙して自分に入れさせないようにしたのね」

「ま、また女子に騙されたのか……」


 ミツアミのトラウマが蘇る。

 俺はファーストステージで、小柄で可愛らしい女の子、ミツアミの可愛さにすっかり騙されて、人狼であるミツアミを弁護してしまった。

 うぅ、俺はどうしてこう女の子に弱いんだろう。


「ふわぁ……それにしてもツインテさん。本当に凄い推理力ですね。わたしなんて、全然思いつきませんでしたよ」


 ポニテは目をキラキラと輝かせる。

 ツインテはちょっと照れながら、


「た、大したことじゃないわよ。今言ったように、犯人の気持ちになって冷静に考えれば簡単よ」


 照れたツインテってレアだな。

 可愛い。

 ツインテが俺の視線に気づく。


「ん、何よメガネ君?」


「別に、それよりミュール自身が人狼っていうのは解ったけどさ。どうやってミュールを殺すんだよ? 今残っているプレイヤーは九人。なのにミュールは半分近い四票を自由に動かせるんだぞ。しかもツケヅメもアイプチも死……脱落したから、多分今夜と明日の議論で茶髪とシャギーが狙われるぞ」


「それなら大丈夫よ。いえ、というよりも、今だからこそギリギリなんとかなるわ」

「今だから?」


「ええ、まだミュールの傘下にないプレイヤーが五人もいる。五人全員があたし達側につけば、ミュールを処刑できるわ」


 ポニテが目を丸くする。


「ごご、五人って、茶髪さんとシャギーさんをどうやって仲間にするんですか!? 私達が人狼じゃないっていう証明なんて」

「それに今夜の夜襲を考えると、明日は八人。ミュールが茶髪とシャギーのどっちを狙うか解らないけど、五人がかりは無理だろ」


「ええ、だからメガネ君の兵士スキルでどちらかを守ってもらうわ。確率は二分の一。これは賭けよ。説得は、こうなったら正面から話すしかないでしょうね。幸いかはわからないけれど、シャギーはファーストステージから、茶髪はセカンドステージから一緒に戦ったプレイヤー。その事でなんとか警戒を解いてくれればいいのだけれど……」


 流石のツインテも、苦しい顔をする。


 シャギーは、何とかなる気がする。


 でも、茶髪はどうだろうか……


 このサードステージは、最初勝って当然のゲームだと思った。


 なのに、本当に今は負け戦同然だ……


 俺達は不安を抱えて、シャギーの部屋へと向かった。

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