リーダー
みんなは面食らった様子だが、サングラスはリーダーシップを身にまとい続ける。
「既に全員知っているとは思うが、このゲームの参加者は全員、人狼ゲーム未経験者だ。だから今までお前達がどうやってクリアしてきたのか、それが人狼を追い詰める大きなヒントになるはずだ」
みんなに動揺が走る。
互いに周囲を見渡して、互いの顔色をうかがいあい、悩んでいる。
このゲームの特性上、誰が人狼かわからない。
疑心暗鬼になりあって、情報の共有に臆病になっているのかもしれない。
するとサングラスが畳みかける。
「お前達は人狼を見つけたいんじゃないのか! だったら強力するんだ! 誰かが何とかしてくれる! そんな事で人狼を見つけられるか!」
沈黙の後に、小声で賛同するような言葉が次々上がった。
「よし、じゃあまず糸目、ニャルに一番近いお前から時計回りに行くぞ」
サングラスに指名されて、糸目は喋り出す。
「俺のところは一応推理していたな。夜襲された奴が、あいつを疑っていたから、自分を疑う奴を始末したんだろうとか、ファーストステージはそうやって推理して投票したら当たって、人狼を処刑できたんだ。セカンドステージは、サングラスと似ているかな。朝起きたら、何故か人狼は昨晩死にましたとかなってゲームクリアだ」
狐目が喋る。
「俺と糸目と同じだぞ」
「そうそう、俺と狐目はファーストステージとセカンドステージはずっと同じグループだったんだ」
続いてサングラスが、
「俺だが、俺はファーストステージは偶然処刑した奴が人狼だった。セカンドステージは初日の夜に何故か人狼が死んでいてゲームクリアになった。おそらくは、誰かの職業の力と思われる」
それって……
俺はセカンドステージの事を思い出した。
俺達のセカンドステージで一度、一晩で二人死んだ事があった。
あれがもし、人狼とは別に夜、任意のプレイヤーを殺す職業だったなら。
サングラスのセカンドステージでは、そのプレイヤーが初日の夜にいきなり能力を発動させて、見事に人狼を仕留めたのだろう。
「ではコンタクト、次はお前だ、ファーストステージはどうだった?」
「お、おう、俺はそうだな、恥ずかしい話だけど、全然参考にならないぞ。何せ推理できる奴が居なくって、ただ議論で処刑した奴が人狼だったってだけだからな。悪い」
「じゃあ今度は俺か」
俺はファーストステージとセカンドステージについて、当たり障りのない説明をした。
ツインテの推理力や機転で人狼を見つけたと言ったら、人狼は今夜、間違いなくツインテを狙うだろうからだ。
セカンドステージではポニテのハッタリも活躍してくれたけど、俺はツインテにも、ポニテにも触れない。
みんなで疑いあっていたら、明らかに動揺する奴がいて、そいつに投票したら人狼だった、としておいた。
空気を呼んだんだろう。
ファーストステージから一緒のシャギーも俺と同じ事を言ってくれた。
ツインテとポニテも、上手く自分達のことを回避しながら説明する。
最後にアイプチが、
「あー、悪いけどあたしのグループも全然ね。ファーストステージもセカンドステージも偶然人狼を処刑できたって感じ」
結果としては、得に収穫は無い。
そもそも人狼ゲームの素人の集まり。
毎日人狼の夜襲を受けて人数が減って、
毎日投票でプレイヤーを処刑して、
ゲームが進めば進むほどプレイヤーは減る。
だから、処刑で人狼に当たる可能性も上がる。
言い方は悪いけど。
みんなでぐだぐだとゲームを進めていたら、なんだか偶然、勝手に人狼が死んじゃいました。
という展開のほうが自然なのかもしれない。
きっと、俺のように、ツインテが探偵顔負けの推理力でゲームを進めるなんてのは稀なんだろう。
「ふむ、これで全員話し終わったな。それに、ちょうどそろそろ時間だ。これ以上話すことがないなら、俺はもうこれで議論を終わってもいいぞ」
「私はいいけど、それにしてもサングラス、アナタがんばるわねぇ」
ミュールが円卓に身を乗り出す。




