サングラスの狙いがわからない
「そうか、ならいいんだ。みんな、議論を始めてくれ」
どっかりと席に座ったまま、そう言って終わるサングラス。
こいつは一体何がしたかったんだ?
ただ俺らに質問して、
否定されて、
引きさがって、
何かの確認?
もしかしてとは思うけど、それこそもしかしたら人狼が名乗り出てくれるかも。
とか思っているんじゃないだろうな?
いやいや、いくらなんでもファーストステージとセカンドステージを勝ち残ってきてそれはないだろう。
どんだけ考え甘いんだよ。
一回でもそれ成功したのかよ。
「どうした? 議論を始めろ」
上から目線だし。
お前が空気をおかしくしたんだよ。
案の定。
議論はあまり進まなかった。
流石に二回もやればみんな解っているが、初日の議論は手がかりゼロだ。
話しようがない。
議論を進めるには手がかりが必要だ。
そう、つまり最初の晩に死んだ人を元に議論を交わす。
でも、最初の晩の襲撃を手掛かりにするには、初日で議論を交わす必要がある。
ここで一度、素人である俺なりにまとめよう。
例えば初日。
AさんがBさんを人狼ではないかと疑う。
そしてAさんが人狼に殺されれば、Bさんが、自分の正体を言い当てたAさんを邪魔に思って殺したんじゃないか、という推理が成り立ち、Bさんに投票する。
また、全然喋らないおとなしい奴が夜襲を受ければ、議論の時に喋っていた奴らの証言がどれも人狼にとって不利じゃなかった。殺す必要が無かった。ということになり、それを元にして推理を展開する。
だから、手がかりゼロの初日は議論がしにくいけど、初日に議論をしないと、二日目の議論も進まない。
これがジレンマってやつなのかな。
誰もしゃべらないまま、気まずい沈黙が流れる。
ていうか男子達はミュールの胸を見続けている。
あの、お前らこれがデスゲームだって解ってる?
くそ、どうすればいいいんだ。
俺が悩んでいると、またサングラスが、
「お前らに聞く。お前らはあくまでも全員、自分は村人だと言い張るんだな?」
ミュールが、艶やかな眼差しをサングラスに向ける。
「そんなの当然じゃない。人狼が自白するはずないもの」
「ふむ、ならばいい。で、あるならば我々は仲間だな」
え?
「だってそうだろう? 俺らは全員村人だ。村人同士で一致団結して人狼に当たる必要がある。と、いうわけでだ、全員の部屋番号を教え合いたいと思う」
『は?』
みんな驚いた顔で、あるいは馬鹿にしたような顔でサングラスを見た。
「何を驚く必要がある? 一日でも早く人狼を追い詰め、一人でも多く助かるにはこれしかないだろう? だから議論以外の時間での情報交換をしやすくするために、他プレイヤーの部屋へは自由に尋ねることができるようにしたい。それとも、それで何か問題のある後ろめたいプレイヤーがいるのか?」
みんなは口を閉ざした。
最初に口を開いたのは、サングラスの右隣に座る、コンタクトだった。
「俺はいいぜ」
続けて、糸目や狐目、コンタクトも、
「じゃあ俺も」
「いいよ」
「問題なし」
続けて、
「そうね、私もそれでいいわ」
「え、えっと、じゃあ私も」
ツインテとポニテが賛同すると、女子達が続く。
「私はOKよ」
「じゃ、あたしも」
ミュール、シャギー、他の女子達も了承。
「シャンタ、全員分のメモ用紙とペンを頼む」
サングラスが要求すると、ロリメイドと化した可愛らしいシャンタ達が、全員にそれぞれメモ用紙とペンを渡してくれた。
それから、みんなで部屋番号を言い合い、メモし合う。
「よし、これで全員の部屋番号は解ったな。では続いて、みんなのファーストステージと、セカンドステージのクリア方法を教えてもらいたい」
続けてサングラスがそんな要求をしてきた。
完全に議論を仕切っている。
みんなは面食らった様子だが、サングラスはリーダーシップを身にまとい続ける




