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デスゲームに咲く友情の花

 至極当然のことだけと、ちょっと悔しい。

 けど、だんだんツインテの言いたい事が解ってきた。


「だから私は、自分が人狼になっても、自らそれを告白するようなことはしないわ。議論でも、私に疑いが向けられたら、はっきりとウソを言って否定するわ」


 俺は心臓が、少しだけ苦しくなった。

 ツインテも、他の人狼同様、自分の為に……


「でも夜襲はしないわ」


 はっきりと、凛々しい声でそう言った。


「え? でも」


「私は私が一番大切だから、自分が助かる為に議論の誘導はする、でも誰かに疑惑を向けることもしないし、夜襲もしない。自分が助かる為に自衛はするけど、私自身の手で誰かを殺すような真似はしたくないわ。ファーストステージで私が言った事、忘れたのかしら? 夜襲はしないで、投票の処刑だけで人が死ぬようならいいけど、ミツアミ、あいつは自らの意志で殺す人を決めていた、そんな奴は許さないって」


 確かに、ツインテはファーストステージでそういうようなことを言っていた。


 ファーストステージ四日目。


 俺達は五人残っていて、だから処刑で死ぬのが村人でも人狼でも関係無く四人は生き残って、逆に四人しか生き残れなかった。


 だから、人狼を見つけて殺そうじゃなくて、誰が一番死んでも問題ないか、で処刑対象を決めようとした。


 でもツインテはそれをよしとしなかった。


 自分が助かる為に、毎晩せっせと夜襲相手を自らの意思で選んでいるような奴を、社会に戻すわけにはいかない。そう言って、ツインテはあくまで人狼処刑にこだわった。


「良識のある人間は、自分は助かりたい、でも、その為に誰かを殺すなんてしたくない、その板挟みあって苦しんで、夜襲する相手を決められなくて、議論の時は必死に弁明して、でも自分の意志とは関係無く投票処刑は進んで、そうして生き残ってしまった……うん、そうね、それが良識にある人間の結果だと思う」


 ツインテは俺へ向ける眼差しをやわらかく、頬は少し緩めて、右手で自分の胸を差した。


「だから美人で聡明で常識と良識のある清廉潔白な乙女である私は人狼になったら、きっとそういう道を辿るわ」

「おいおい自分で言うなよ」


 俺はおかしくて、くすりと笑いながらツッコんだ。

 そんな俺らの様子に、ポニテは安心したように笑って息をついた。


「じゃあそろそろ行きましょうメガネ君、ポニテさん。サードステージもクリアするわよ」


「ああ!」

「はい♪」


 俺らはあえて三人並んで、ツインテの背後の出口へと向かった。


 でも、出口をくぐる直前、ツインテは振り返り、


「あ、言っておくけど、私は貴方達二人のうちのどちらかが人狼になったら、貴方達を弁護する発言を議論でするわよ」


 なんでもないようにして、ツインテはさらりと言った。


「ふえっ!? ツツ、ツインテさん、それは」

「おいおい、そんなことしたら四人しか生き残れなくなっちまうじゃないか」

「あら、だって私達」


「友達でしょ?」


 俺は自分の心臓が高鳴るのと、両目が大きく開くのを感じた。

 ツインテは冷静な口調で、でも口元だけで笑う。


「私の優先順位はまず自分の命、その次は貴方達の命よ。私はヒーローではないし、確かに目の前で人が死ぬのは嫌だし、一人でも多くの人が助かるならそれに越したことはないわ。でも、縁もゆかりもないどっかの誰かよりは、メガネ君とポニテさんのほうが大事だもの。もしも貴方達が人狼になったら、私は最後の四人になるまで、貴方達を弁護するわよ」


「ツインテ……」


「それとも何? 貴方達、さんざん仲間として利用しておきながら、いざ人狼になったら切り捨てるような女だと思っていたの? だったら失礼しちゃうわねっ」


 感極まるっていうのは、こういう事なんだと思う。

 俺は凄く嬉しくて、ツインテに感謝したい気持で胸がいっぱいになる。


「うえぇええん! ツインテさぁん!」


 ポニテに至っては涙を流しながらツインテに飛び付いた。


「ちょっとポニテさん、急にどうしたのよ?」

「だだ、だって、だって、わたしそんな事いわれたの初めてだったから……」


 あー、俺も女子だったらツインテに抱きついているかもなぁ。


 ツインテさんマジイケメンっす。


 美少女二人が抱き合う姿を眺めてから、俺はちらりと背後を振り返る。


 シャンタ達はドラマの感動シーンを眺めるようにして、ハンカチを片手に涙を流し、ニャルは名作を生み出した作家のような顔で満足げな表情を浮かべていた。


 その時、俺は少しだけ悪い事を考えてしまう。


 こういうドラマチックというか、感動的な場面を作れば、ニャルは俺達を気に入って、今後有利な展開に持っていってくれるんじゃないか?


 なんて、甘い考えはすぐに振りはらう。


 あいつは這い寄る混沌。


 むしろ、俺達を絶望させるために、あえて俺らの中の誰かが死ぬ展開になるよう仕組むかもしれない。


 このオールジョブ人狼ゲームは、ニャルの魔法の力で操作されているのだから……


「?」


 俺がそれに気付いたのはその時だった。


 別の出口。


 たぶん、シャギーの背後の出口だと思うけど、そこに人影があった。


 というよりも、人影が立ち去った。


 もしかしてだけど、シャギーが今のやりとりをこっそり見ていたのかもしれないな。


 シャギーがサードステージで仲間になってくれれば、四人チーム。


 四票を自由に動かせれば、人狼への大きな武器になる。


 これからサードステージ。


 ファーストステージとセカンドステージを勝ち残った猛者揃いなのに、俺は少しも怖くなかった。

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