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人狼に選ばれた人はどうすればいい?

「自衛で人を殺すのは……悪なのか?」

俺の声は、自分でも信じられないくらいに重かった。


「それはどういう意味かしら?」


 セカンドステージが終わり、会場からみんなが去る中、ツインテは立ち止って俺と向かい合う。


 俺らの空気を感じ取ったのだろう。


 ポニテは俺達に歩み寄って、成り行きを見守っている。


「だってそうだろ? 俺はさ、ずっと人狼について、ずっと思っていたんだ。自分の為に他人を犠牲にする悪だって。人狼が助かるには、一日でも早く、プレイヤー人数を四人以下にする必要がある。だから人狼は自分が助かる為に毎日一人でも多くのプレイヤーを殺す為に、投票での処刑とは別に、毎晩プレイヤーを襲撃する」


「そうよ。自分が助かりたいが為に、他人を犠牲にしているわ」


「でもさ、人狼だって人間だろ? 助かりたいと思うのが普通なんじゃないかな? いや、そりゃ俺だってわかるぞ。自分が助かる為に他人を犠牲にするのは駄目だ。でも逆に、赤の他人を助ける為に自ら死を選ぶのも変だ」


 ここはマンガやゲームの世界じゃないし、プレイヤーたちはヒーローでもなんでもない。血の通った感情のある人間だ。


「誰だって一番大事なのは自分だし、お金ならともかく、自分の命がかかったら、助かりたくて、自衛の為にウソをついて、議論を誘導したり……夜襲とかも……じゃあ聞くけど、ツインテ、お前はサードステージで、自分が人狼になったら初日に言うのか? 私が人狼だからみんな私を処刑して、そうすればみんな助かるわって……」


 ポニテが一歩、俺に近づく。


「メ、メガネさん、それは……」

「ポニテは黙っててくれ」

「はうぅ……」


 ポニテが肩を落とす。

 ツインテは一度目を閉じてから、凛とした瞳で俺を見据える。


「哲学的ね、メガネ君……なら答えるわ。貴方の考えは半分正解で、半分間違いよ」

「どういう事だ?」

「つまりねメガネ君。自分が一番大事っていうのは正しいけど、だからと言って自らを犠牲にしてまで他人を救うのは間違いなの」


 周囲のシャンタ達や、まだ裁判長席に座っているニャルの注意が、俺らに集まって来るのが解る。


 そんな中で、ツインテは説明を続ける。


「メガネ君の言う通り、誰だって一番大事なのは自分、もしくは命に代えても守りたい誰か、恋人とか家族とかね……」


 ツインテは一瞬だけ視線を落とした。


「そうやって、人間は誰しも優先順位がある。断言するわ。船が沈む中、三人乗りの救命ボートが一つしかなかったら、私はメガネ君とポニテさんだけを連れて、他の乗客は見捨てて逃げるわ。もしも一人乗り用の救命ボートをしか見つからなかったら、悪いけど、私はメガネ君とポニテさんを捨てて、私だけ逃げるわ」


 俺の短時間ながら、俺の胸にショックが走った。


「でも当然でしょ? 逆にメガネ君は、一人しか助からないって時に『俺は船と一緒に沈んで死ぬから、ツインテ、お前が助かってくれ』なんて言えるの?」

「そ、それは……」


 もちろんさ、と即答できない。

 それが俺の限界で正体だ。


「でもそれが自然よ。そうね、私とメガネ君がラブラブのカップルで、私がメガネ君に自分の全てを捧げてもいいと思うくらい貴方のことを愛していたら、私はいいからメガネ君が逃げてと言って、救命ボートを譲るわ。でも、私はメガネ君をそこまで愛していないもの」

「ぐっ……」


 至極当然のことだけと、ちょっと悔しい。

 けど、だんだんツインテの言いたい事が解ってきた。

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