非常な現実
「終わったわね」
三回分の議論映像、合計三時間を見終わって、俺らは一息ついた。
俺も疲労感で体から力が抜けて、まるでマラソンをしたあとのようだ。
疑われていたのは、俺を含めて結構な数がいた。
ていうかツインテとポニテは一回も疑がわれていないな、美人は得ってことか?
「じゃあ、ここから既に死んだ人、そして村人だと明らかになっているメガネ君と指輪君、それにシャギーを除くと……」
ツインテがメモ帳に斜線を引いていって、残ったのは、茶髪と耳ピアスだった。
「って、絞れてないじゃないか! くそ、俺の能力全然役に立たないな」
「そんなことないわ」
俺が歯噛みすると、ツインテが優しい声でフォローしてくれた。
「茶髪が疑がわれたのは三日目の青髪だけ。でも青髪は、初日と二日目で一度も茶髪を疑っていない。あれは、耳ピアスに人狼ではないのかと疑われて、逃げる為に茶髪だって怪しいととっさに言っただけよ。だから人狼は耳ピアス、彼で決まりね。これはメガネ君、貴方の能力がないと解らないことだったわ、ありがとう、メガネ君」
その時、一瞬だけどツインテの頬が緩んだ気がする。
笑顔を見せてくれたわけじゃないけど、俺を気づかってくれているのは解る。
ツインテはクールビューティーだけど、こんな顔もしてくれるんだ……と、なんだか嬉しくなった。
「じゃあみんな、明日は耳ピアスに投票するわよ。四人で投票すれば、確実に人狼を倒せる。そして、五人でゲームクリアよ」
『おー!』
俺が拳を突き上げる。すると、
「あの、みんな」
小柄な指輪が、控え目な声で俺らを見上げる。
「ありがとう」
嬉しそうな声で、指輪はそう言った。
「僕ね、もういなくなっちゃった職業が解ってもどうしようもないって、僕の能力なんて役に立たないって、ずっとそう思っていたんだ。でも、みんなが僕の能力を活かしてくれたおかげで、生き残ることができてすごく嬉しいんだ。だから……」
指輪は言った。
「もし次のステージがあっても、チームになってくれる?」
怯えた声で、でも精一杯の勇気を振り絞った言葉だった。
不安で瞳を震わせる指輪へ、事実上のリーダーであるツインテよりも先に俺は言った。
「そんなの当然だろ? このゲームは仲間が多ければ多いほど強くなれるんだ。指輪だって、俺らの大事な仲間で戦力だぞ」
「メガネくん……」
指輪は、感極まったようにして俺の名前を呼んだ。
「そ、そうですよ、指輪君もわたしたちの仲間ですよ」
「私も異論は無いわ。指輪、サードステージがあったら、次も頼むわよ」
「うん!」
指輪は、力強く頷いた。
◆
次の日の会場で、席についた俺はかつてない希望に溢れていた。
俺らは四人チームで、おまけに人狼も誰かわかっている。
今回の議論に関係無く、俺らは勝つことができる――
『はーい、では今回の犠牲者は指輪君でーす。では、四日目の議論をどうぞ♪』
「………………え?」
俺の視線の先、指輪の席は……空席だった。
床が崩れて、天井が落ちて来る感覚が、俺を支配した。
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ミツアミ
容姿:B
幸運:B
ひらめき:C
頭脳:B
精神力:B
演技:A
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耳ピアス
容姿:A
幸運:B
ひらめき:B
頭脳:B
精神力:A
演技:B
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