三日目の投票
「って、最強過ぎるでしょうが!」
怒鳴るシャギーに、耳ピアスは溜息をつく。
「落ち着けバカ者。とにかく、このゲームに独裁者が採用されているかは知らないが、そうやって直接プレイヤーを殺せる職業が存在してもおかしくないという話だ。では、今回の議論を始めるぞ……まず、私の見立てだが、青髪が怪しいな」
勝手に議論の主導権を握り、話を進める耳ピアス。
疑惑を持ちかけられた青髪はうろたえる。
「な、なんで俺なんだよ?」
「君は発言量が絶妙だ。まずメガネ、ツインテ、ポニテ、指輪は発言が少なすぎる。こういうゲームの場合、あまり発言が多いと人狼なのを誤魔化す為、発言が無さ過ぎると、ボロが出ないようにする為、と疑いをかけられる。だがお前は、少しだけ発言する。という印象を受ける」
「いやいやそれだけで」
「シャギーは随分と喋るが、シャギーは村人だろう。多分、今夜はシャギーが殺される」
「弁護されているのに嬉しくない!」
シャギーが犬歯を見せて抗議する。
こんな時に不謹慎だけど、なんか可愛いな。
「じゃあ俺は茶髪が怪しいと思う」
「なんであたしなのよっ」
青髪が軽い、飄々とした口調で茶髪を挑発する。
「え~、だって茶髪、ファーストステージじゃ活躍できなかったから、今度は活躍したいとか言っておきながら全然喋らないし。活躍しようと思ったら自分が人狼になっちゃったからフリーズしちゃったんじゃないの?」
「そ、そんなことないもん! あたしはただ馬鹿だから人狼を見つける方法が思いつかないのよ!」
ぶっちゃけたなぁ……
今回の議論は、青髪と茶髪のどっちかが怪しい、という事になった。
そして、
『それでは今回の議論は終わりでーす♪ それでは、投票をどうぞ♪』
俺は誰にも投票しなかった。
ポニテとツインテも、ただボタンを見下ろしているだけだから、きっと同じだろう。
『投票をしめきります。では、あちらの画面をどうぞ♪』
俺らが会場の巨大スクリーンを見ると、そこには、
青髪 三票
「ちょ……ちょっと待てよみんな! 俺は」
パンッ
何かが破裂する小さな音。
同時に、青髪の額に小さな穴が空いて、彼は糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。
なのに、
『ざんねーん♪ 青髪さんは人狼ではありませんでした~。村人は今夜も怯えて暮らしまーす♪』
ポニテと指輪。
気弱女子と男子の代表みたいな二人が、円卓につっぷして目を塞いでいる。
でもその小さな肩は頼りなさ過ぎるほどに震え、怯えている。
これがファーストステージのミツアミ同様、演技なら本当にとてつもない演技力だ。
『では、これで三日目の議論を終わりまーす♪』
ニャルは明るく、ハイテンションに、どこまでも愉快そうにそう言うのだった。




