三日目の議論
「とりあえず俺らは無事だったけど、昨日見たの議論映像からは何もわからなかったな」
「そうね」
「で、でも、昨晩はみんな生きていて本当によかったですよね」
俺、ツインテ、ポニテは食堂から出ると、一緒に黒いドアをくぐり、会場へと向かった。
一緒にドアをくぐったのに、いつのまにかツインテとポニテはいなくて、会場へ入ると、俺ら三人は別々の出口から出てきた。
今更ファンタジーには驚かない。
俺ら三人は、円卓について、面々を見渡した。
昨日の残りメンバーは一〇人。
そこから一人が人狼の襲撃に遭って、九人。
人狼が襲撃に失敗したり、誰も襲撃していなかったら一〇人全員がいるはずだ。
今、円卓にいるのは全員で八人。
いないのは、大預言者に早く名乗り出るよう騒いでいたドクロネックレス。
そして、ファーストステージで一緒に戦った、オールバックだった。
だが、
『はいはーい♪ それでは三日目もはりきって議論をしましょう! 村人はドクロネックレスとオールバック二人の死体を発見して大混乱なのです♪』
「は!?」
俺が思わず声を上げて、ニャルは首を傾げた。
『どうかしましたかメガネ君?』
「ちょっと待てよ! なんで死人が二人なんだよ!?」
ニャルは両手を口に当てて笑う。
『それはまだ内緒です。言ってしまうと、このゲーム攻略のヒントになってしまうかもしれませんから♪ このオールジョブ人狼ゲーム攻略の為には、このゲームそのものの情報を集めるのも大事なのですよ♪』
「そそ、そんなぁ……一晩に二人も」
ポニテが両目に涙を溜めて狼狽する。
「あわわわっ」
指輪が、ただひたすらに震えていた。
「っ」
俺は舌打ちをする。
オールバックは、特に仲間というわけじゃない。
でも、一緒にファーストステージをクリアした奴だ。
連帯感のようなものが生まれても、おかしくはない。
耳ピアスが鼻で笑う。
「ふん、どうやら今回は、口うるさいのが始末されたらしいな」
シャギーが唇を尖らせる。
「ちょっとあんた酷いんじゃない! 口うるさいって何よ!」
「言い方が悪かったな、では自己主張が激しい者と言おう。そうなるとシャギー、今夜は君が狙われるかもな」
「っっ」
でも、確かにドクロネックレスは大預言者は名乗り出ろと、大預言者探しに必死だった。
オールバックも、それなりに発言が多い奴だった。
今回の人狼は、人狼探しに積極的な奴を殺すタイプなのだろうか?
耳ピアスは続ける。
「二人死んだ理由だが、そうだな。もしかすると、人狼は私達が知らない能力をもっているのかもしれないな」
シャギーがいぶかしむ。
「知らない能力って何よ?」
「私は人狼なったことがないから想像でしかないが、例えば次の日の夜は襲撃ができない代わりに、今夜二人同時に殺す能力などだ。もしくは、職業の中に、人狼同様、プレイヤーを殺せるものがある可能性がある」
一瞬、みんなの間に緊張が走ったのが解る。
「自分はなにかしらの理由でとある人物が怪しいと思っている。でも皆がそう思わず、投票で処刑できない。そんな時、自身の意志で特定のプレイヤーを殺せる。そんな職業がないとはいいきれないだろう」
みんなは黙ってしまう。
確かに、プレイヤーを殺す能力が、人狼だけとは限らない。
俺は固唾を吞んで、下唇を噛んだ。
「それに私は、いや、どうやらこのゲームに巻き込まれた全てのプレイヤーがそうらしいが、人狼ゲーム経験者がいないらしい。私も未経験者だが、独裁者という職業の話を聞いたことがある」
独裁者?
なんだか名前だけでやばそうな職業だ。
「その能力は、ゲーム中一回だけ、投票せず誰を殺すのか自分で決められるというものだ」
「って、最強過ぎるでしょうが!」
怒鳴るシャギーに、耳ピアスは溜息をつく。




