新メンバー
あれから、俺達一二人はソファに座ったまま、状況を確認していた。
耳にピアスをした、長身で美系の男子が頷く。
「なるほど、このゲームをやっていたのは私達だけではないと。ならこの先サードステージ、フォースステージと続く可能性もあるわけか」
妙に偉そうというか、上から目線の喋り方だ。
実家がお金持ちとかそういう男子なのかな?
「そそ、そんなぁ……一回生き残れただけでも奇跡なのにぃ……」
ポニーテール頭の女の子が、胸の下で手を組んで震えている。
彼女が震えると、一緒に彼女の豊かな胸が揺れた。
おっと、そんな事を気にしている場合じゃない。
「あのぉ……」
小柄な少年が、おそるおそる手を上げた。
「とりあえず、自己紹介というか、名前……言いません?」
妙におどおどした雰囲気で、さっきのポニーテールの子に似ている。
いや、小柄で童顔の容姿とか、ミツアミの男子バージョンっていう感じだ。
「まぁいいだろう。私は耳ピアス。本名はこのさい、別にいいだろう。それとこの耳のピアスだが勘違いしないでもらおう。私は不良などではない。ピアスはお洒落だ、ファッションだ、自分を美しく見せる為に必要なものだ。ピアス=不良などという単純な考えはやめてもらいたい」
本当に偉そうだな。
でも顔は文句なしの美系だし、こういうのが好きな女子とか多そうだなぁ。
はっ、まさかツインテも!?
彼女の横顔を見ると、ツインテは無表情フェイスで俺に向ける。
「どうかしたのメガネ君?」
「いや、なんでもないよ」
ぐっ、ツインテとピアスが並んだら美男美女だとか思ってしまった。
悔しい……
俺の気持ちをよそに、自己紹介は続く。
「俺は赤髪。染めてるわけじゃないけど、地毛のせいで不良のレッテル貼られて困っているよ」
「俺は青髪な。俺のも地毛、ていうかそんなパット見で分かるほど青くないだろ? 母さん譲りの濡れ羽色って奴? 黒色が濃すぎて、逆に青みがかって見えるんだよ」
中世的な顔立ちの男子二人だった。
でも顔は全然似ていなくて、名前の付け方のせいで兄弟かとも思ったが関係ないらしい。
「えーっと、僕は指輪だよ」
自己紹介をしようと提案した男子だ。
癖っ毛の目立つ、童顔の可愛らしい顔立ちの男の子だ。
「前の議論じゃ役立たずで、ていうか、人狼からも存在を忘れられていたんじゃないかなぁ……なんて、はは、ごめん次どうぞ」
「俺は鼻ピアス。それ以上は言う事ねーよ、次」
「オールバックだ。婆ちゃんとの二人暮らしだから、俺はぜってー生き残る」
「ツインテよ。よろしく」
「俺はメガネだ。よろしく」
「あの、その……ポポ、ポニテですぅ! ファーストステージじゃ全然役に立たなかったけど、今度は頑張るから殺さないで下さい!」
まだ職業も決まっていないのに、もう懇願を始めるポニテ。
さっきの、魅惑的な胸の子だ。
いや、そんな覚え方は女子に失礼だろう。
でもポニテも凄い美少女だ。
ツインテはクールビューティーだけど、ポニテはそうだな、美人だけど、泣きボクロとか、濡れた瞳とか、自身の無さそうな顔とか、守ってあげたい系の女子だな。
「あたしは茶髪よ。さっきは全然目立てなかったから、今度は活躍したいかな」
明るい笑顔でウィンクを一つ。
この状況下で……どれだけポジティブなんだこの子。
あと関係無いけど、健康そうな肌が綺麗で魅力的な子だった。
「ドクロネックレス。あのさ、あらかじめ言っておくけど、大預言者の奴、ちゃんと人狼の正体バラしなさいよ」
ちょっと凄身を含んだ声だ。
名前の通り、首からドクロのネックレスをぶら下げていた。
元から怖い子なのか、それとも前のゲームで大預言者が何かしたのかな?
それにあからさまに俺らを警戒している。
ファーストステージで怖い目にあったんだろう。
茶髪よりも、こっちのほうが自然な反応だろう。
最後は、
「あたしはシャギーよ。今度は一二人ね、人数が多い分、人狼を捕まえるチャンスも多いわ、今度は絶対あたしの手で捕まえてやるわ」
張り切っているな。
あまり目立ち過ぎて、人狼に狙われないといいけど……
『はい♪ ぴんぽんぱんぽーん♪ では皆さん、息をつくまもなく、いや、息をつく間はありましたね。息をつく間ぐらいで、残念ながら次のゲームを始めます♪ もう皆さん慣れていると思うのでファンタジー要素爆発でファンタジーに行きましょう♪』
途端、俺は制服のポケットに違和感を感じた。
ポケットの中を確認すると、ホテルの部屋のカギが入っていた。
部屋番号は一〇七。
『では皆様、会場へどうぞ♪』
二人のシャンタが、ホールから伸びる廊下のうちの一本の前に立っている。
ちなみに一人は、シャンタAだ。
でも、何故かバニーガール衣装なのに、ウサ耳ではなく猫耳だった。
「なんで猫耳なんだよ?」
俺が聞くと、シャンタは頬を染めて照れながら頬をかく。
『あ、実は他の会場からどうして猫耳と犬耳はいないんだって猛クレームがありまして、バリエーションを増やそうと』
「ニャルの野郎はどこに気を使っているんだよ!」
すると、もう一人のシャンタである俺が命名したシャンタAがそっと歩み寄って来る。
『メガネ様はどれがお好みですか?』
耳元の囁きに、俺は脳がトロけそうになる。
「う、ウサ耳でいいよっ。ていうかゲームに関係ないだろっ」
『わかりました♪ では』
シャンタAが指を鳴らすと、頭の猫耳が、一瞬でウサ耳に変わった。
そして……手で左側の耳を折り、左右非対称にしやがった!
『では皆様、頑張ってください♪』
俺は高鳴る鼓動を抑えながら、黒いドアへと向かった。
シャンタAの奴、分かっていらっしゃるな……




