ゲーム終了
「ぐ~~っっ!」
ミツアミが悔しそうにするばかりで、何も言い返せないでいると、
『それではそろそろ、処刑に移りたいと思います♪』
ミツアミが全身をびくりと震わせ、顔が恐怖に怯えた表情へと作り変わる。
彼女の背後の出入り口。
そこから、ハゲの時のように、巨大な手、だがマジックハンドのように可愛いものではない。
鉄でできた義手のような、不気味なものだった。
それが五本、腕を伸ばして、ミツアミの両足と胴体を掴む。
「いやぁあああああああああああああああ!」
またミツアミの表情が崩れた。
邪悪さが欠片もなくて、壊れたように涙を流しながら円卓にしがみつく。
「いやだ! いやだ! いやだ! 死にたくないぃいい!」
鉄の手は、容赦なくミツアミの体を引き寄せ、ミツアミの手が円卓からズルズルと滑って行く。
円卓に突き立てたミツアミの爪が次々剥がれ、指の関節が外れていく。
「助けて! 助けて! 誰か! 許してぇええええええええええええ!」
ついには肩を脱臼して、ミツアミは奈落の底へと引きずり込まれた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ダダダダダダダダダッ!
廊下の奥から、マシンガンのような音と水音が響いた。
それに合わせて、ミツアミの悲鳴も途絶える。
俺は、全身の血を抜き取られたような錯覚に襲われて、うつむいた。
初めて見た。
あそこまで感情をあらわにする人間を。
初めて見た。
あそこまで死に物狂いに生きようとする人間を。
そして初めて聞いた。
あそこまで残酷な人の悲鳴を、まさに、断末魔の叫び声と呼ぶにふさわしい声を。
でも、これで終わった。
『みなさんおめでとうございまーす♪ ミツアミさんを処刑すると、ミツアミさんの死体は狼に変わりました。人狼の正体はミツアミさんだったのです♪ こうして村人はまた、平和に暮らせるようになりましたとさ、めでたしめでたし♪』
シャンタ達も歓声を上げながら拍手をして、俺らを湛える。
『素晴らしいカオスをありがとうございます♪』
『最高の狂気でしたよ♪』
『わたしなんて昇天しちゃった♪』
シャンタ達は思い思いの言葉を口にする。
そのどれもが自分勝手で、人間を家畜としてしか見ていない発言だ。
でも、それが神の特権なのかもしれない。
人間が牛や犬、鶏を戦わせたり、いや、かつてローマのコロッセオで、人を殺し合わせて楽しんでいた民衆は、きっとニャル達と同じ価値観だったんだろう。
ニャル達が特別なんじゃない。
そういう価値観を持った人格が、この世には実在する。
ただそれだけだ。
「何にせよ、これで家に」
『それでは皆様♪ 続いてセカンドステージへとどうぞ♪』
ニャルの言葉に、全員が凍りついた。
「は?」
今、こいつ、なんて言った?
セカンドステージ?
「おい待てよニャル! それはどういう」
世界が崩れる。
会場の天井が、床が、全てが崩落していく。
浮遊感に全身を支配される中、俺はただ絶望した。
デスゲームは、終わらない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
職業名 占い師
能力
ゲーム開始時、村人の名前をランダムに二人知る。
運用
確実に人狼ではなく村人であるプレイヤーが二人わかるので、その二人の発言に注意する。
二人の言動から、二人の職業を予想し、二人がつかんでいる情報を推測。
それに合わせて議論が人狼に不利になるよう立ち周ろう。
例えば、確実に村人の人が、とある人物への疑いを過剰に否定するならば、実はその人は大預言者で人狼が別の人だと知っているのでは? と予想し、その人の主張を援護する、など。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




