悪の末路
「投票はそこまででーす♪ ではではー、結果発表をどうぞー♪」
みんなが注目する中、大画面に表示されたのは、
ミツアミ 三票
オールバック 一票
ミツアミが、力無く円卓にうなだれた。
『処刑する人は、ミツアミさんにけってーい♪』
「嘘だよ!」
ミツアミがニャルに、そして俺らに叫ぶ。
「嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘うそうそウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソウソウソ嘘うそウソ嘘嘘ウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソうそウソ嘘嘘嘘ウソ嘘ウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソうそウソうそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘うそうそウソウソ嘘嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソ嘘うそウソ嘘嘘嘘うそうそウソ嘘ウソウソだよ! だってあたしが死ぬはずないもん! こんなのウソだもん!」
「現実よ!」
ツインテの一刺しで、ミツアミの首がぎりぎりとツインテに向いた。
「貴方は負けたの。あの画面を見ればわかるでしょう? 貴方は、もう終わりなのよ!」
「ぐっっっ!」
ミツアミは頭をがくんと落として、両手で抱えるとかきむしり、体がガクガクと震えていった。
「ミ、ミツアミ?」
俺が声をかけると、
「こんのクソマ○コ野郎がぁあああああああああああああああああああああああ!」
そこにミツアミの顔は無かった。
何一つとして面影の無い、世界中の邪悪を煮詰めたように顔を歪めている。
「あたしは完璧だったんだ! あたしの作戦は完璧だったんだぁ! そこの童貞クソメガネ野郎をたらしこんでヒーロー気分にさせたらあたしの勝ちだったんだぁ! なのになんで! なんで! なんでてめぇみてぇなクソマン○野郎がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
目を血走らせ、
唾を飛ばし、
血を吐き出さんばかりに叫ぶミツアミ。
俺のあまりの変わりように、座ったまま腰が抜けてしまう。
「最後くらい、おとなしく処刑されたらどうなのゲス野郎さん」
ツインテの言葉だった。
「んだとてめぇ! 何がゲス野郎だ偽善者野郎! そうだ偽善者だ! オールバックの言う通り死ねない理由をアピールし合って、一番死んでもいい社会のゴミを選ぶのではあたしは負けなかったはずだ! それをてめぇが意味のねぇ人狼探しなんかに固執するから! どうせ四人しか生き残れないんだ! オールバックの言う通り、人狼探しに意味なんてねぇのによぉ!」
「意味ならあるわよ」
「はぁ! ざけてんじゃねぇぞ!」
ミツアミはもう、完全にヤクザみたいな口調だった。
「私の部屋には、シャンタがコンタクトを取ってきたわ。探偵スキルを使う時はシャンタに指定した人物を言うから。だから色々と聞いたのよこのゲームの事を。ニャルのルール説明がてきとうだったから、これは可能か、この場合はどうなるのか、このゲームの深いルールを色々とね。そしてシャンタは言ったわ。人狼は、誰も殺さない事が可能だって」
俺は驚く。
「ツインテ、それって」
「そうよメガネ。人狼の夜襲は絶対じゃないわ。今夜は誰も襲わない、襲う人を選ばない、そういう選択肢もあるわ」
「っ、でも人狼になった以上、あたしが生き残るには」
「こんな話を知っているかしら? 戦場に出た新兵の七割以上が引き金を引けない。向こうは敵兵で、こちらを銃で撃ってきていて、殺さないとこっちが殺されるという状況下での話よ。でも新兵の多くは引き金を引けない。自分の手で人を殺す罪への重責に震えて戦えないのよ。だから、本当に人狼に人の心があるなら、毎晩誰を殺そうか悩んだ末に誰も選べず、シャンタに誰を殺すか伝えられず、毎晩誰も死なない。死ぬのは投票による処刑だけ。もしもそれで何日もかけてこの五人になったなら、私はオールバックの言う通り、死ねない理由のアピールタイムに賛同したかもしれない」
ツインテは席から立ち上がり、凛とした表情で告げる。
「でも貴方は、毎晩人を殺した。初日は本当に人が死ぬデスゲームなんて知らなかったとしても、キンパツとロングは? そう、貴方は、自分が助かる為なら平気で他人の命を犠牲にできる。そういう人間なのよ! そんな人間を、私は社会になんて戻させない! どうしても誰かが死なないといけないと言うのならば、私は人狼の正体を暴き、人狼を殺すわ!」
「うぐぐぐぐぐっ」
「策士策におぼれる。メガネに手を出さなければ、私に正体がバレなかったかもしれないのに、残念だったわね」
「ぐ~~っっ!」
ミツアミが悔しそうにするばかりで、何も言い返せないでいると、
『それではそろそろ、処刑に移りたいと思います♪』




